哲仙の水墨画

デジカメの風景写真、四季の草花、水墨画、書、短歌などを楽しみます。

五月雨や 支考(支考)

2008-05-31 07:24:38 | 
五月雨や雲雀鳴くほど晴れてまた       各務支考

 28日午後、高松気象台は四国地方が梅雨入りしたとみられると発表した。平年より7日、昨年より17日早い。まだ、近畿地方は発表はないが四国が梅雨入りすると時間の問題であり、高温多湿の日々が続いて暮らしにくい。句は梅雨の最中にヒバリが空へ舞い上がるほど好天気となった。またとあるからここしばらく続いているのである。

龍潭寺・補陀洛の庭(写真)

2008-05-30 06:27:39 | 写真
方丈の縁に坐りて補陀洛の
庭に無心の龍潭寺かな      樋田哲夫

 彦根にある萬松山龍潭寺(りょうたんじ)は井伊家元祖から菩提寺として歴代の藩主より深く帰依された。方丈南庭は「補陀洛(ふだらく)の庭」とよばれ、白砂に48個の石を配した石庭となっている。また、本堂に面して小堀遠州作の南庭や北庭があり、見るだけでなく、考える庭、思う庭、拝む庭といわれている。

五郎助ホッホッと鳴くフクロウ(水墨画)

2008-05-29 06:15:20 | 水墨画
里山の楠にきこゆる梟の
夜を震はす愛の歌声        樋田哲夫

 フクロウの鳴き声は「五郎助ホッホッ」と表現されている。が、実際の鳴声は少し異なる。低い声でウォウォと鳴き、間を置いてからゴッ・ホッホッホッとピッチが早く、空気が漏れるように震わせて鳴く。夜行性で昼間は見ることはない。鳥のさえずりを似た言葉で置き換えることを「聞きなし」と呼んでいる。  にほんブログ村 美術ブログへ

卯花も 言水(書)

2008-05-28 07:16:53 | 
卯花も白し夜半の天河      池西言水

 言水(ごんすい)は昨年12月このブログに登場。奈良の人だが江戸へ出て芭蕉と交友を持っている。この句は言水が友人宅から夜半の帰り道、垣根の卯の花が白く際立っていたもの。梅雨時であったが、珍しく空が晴れていて西に低く傾いた天の川が見られた。月も出ていたのであろう。

奸婦にあらず(写真)

2008-05-27 06:35:57 | 写真
 死してなほ幸せのあり直弼と
主膳の墓に添へるたか女は        樋田哲夫

 直弼の寵臣長野主膳は「影の大老」と尊攘派から恐れられた人物。安政の大獄後も彦根藩の藩政に関わったが、藩内で尊攘派が実験を握ると失脚して斬首された。腰元たか女は井伊直弼と天寧寺奥座敷でたびたび密会した熱い仲。二人のこの恋路は諸田玲子著「奸婦にあらず」(日本経済新聞社)に詳しい。三人の墓は一箇所にある。
     

田舎の風景(水墨画)

2008-05-26 07:04:24 | 水墨画
老いていま時折浮かぶ幼きの
蜻蛉を追ひし田舎の景色         樋田哲夫

 男なら子供のころに虫や蝶を追いかけた記憶は誰にもあろう。夏休みの宿題にてっとり早いのが虫捕りとなる。林の中の蝉捕りも定番である。中でもヤンマは難しかった。すいすいと高く、低く飛ぶのだが動きが早い。なかなか木や草にも止まらない。ヤンマとの戦いは時間がかかって収穫は乏しかった。 にほんブログ村 美術ブログへ

遠足の 誓子(書)

2008-05-25 05:32:40 | 
遠足の女教師の手に触れたがる         山口誓子

 この句は面白い句である。幼稚園、小学低学年の遠足と思われる。普段の教室を離れた開放感から子供たちの喜びが爆発するかのように戯れ、清楚な女先生の手に触れるのである。いや繋ごうとしている。が、手に触れたがるとしたことで作者の色眼鏡の意図が表出している。淡い恋心の句とする人もいるが、どう考えてもそうは取れない。

大きな地蔵尊(写真)

2008-05-24 07:06:34 | 写真
錫杖を持ちて輝く石像の
地蔵にほのか威厳ひそめり         樋田哲夫

 天寧寺の地蔵菩薩は巨大な石像で近くから見上げると圧倒される。屋外の台座に立つ地蔵は新しささえ感じる。弥勒(みろく)菩薩の出現するまでの無仏の世界を救済する仏で、左手に宝珠を、右手に錫杖(しゃくじょう)を持つ像形が一般的である。子安地蔵、六地蔵、延命地蔵などの名を耳によくする。

ナスビ(水墨画)

2008-05-23 06:35:28 | 水墨画
苗にしてひとつ咲きたる茄子なれば
あだ花なきに楽しみてをり        樋田哲夫

 種苗店でナスビの苗を求めた。少し丈が伸びて一つの花をつけていた。格言に「親の意見と茄子の花は千に一つの仇もない」がある。経験豊富な人生をおくる親の意見やナスビの花には確実に実を結んで無駄がないらしい。開花後22~23日で収穫することになるが、植えてまだ活着していないので少しずれるだろう。 にほんブログ村 美術ブログへ

悲しみの 汀子(書)

2008-05-22 06:58:16 | 
悲しみの友に卯の花腐しかな       稲畑汀子

 この句の季語は「卯の花腐(くた)し」である。季語としては長すぎる。俳句は17音の世界であり、7音を占めることは他の言葉を入れる自由さが狭められて、作句は大変なことになる。何の悲しみかは分からないが、何かを悲しむ友に気のふさぐ気候の梅雨では一層悲しみは増幅させられる。健全な精神の人にも長雨はうっとしいものである。

幕末の大老井伊直弼の供養等(写真)

2008-05-21 07:32:25 | 写真
不意に死し彦根の城を見晴るかす
天寧寺には大老眠る         樋田哲夫

 彦根第13代藩主井伊直弼は安政7年(1860)3月3日江戸城でのひな祭りのため登城する途次桜田門外で水戸浪士の襲撃を受けて無念の死を遂げた。諸外国に翻弄された幕末の激動期である。高台にある天寧寺は彦根城が遠方に見え、徒歩で30分ほどの位置になる。直助の遺品は四斗樽に入れて境内の供養塔の真下に納められている。

アジサイの寺・観音寺(墨彩画)

2008-05-20 06:05:12 | 墨彩画
こぞ訪ひて想ひのめぐる観音寺
丹波きっての紫陽花の咲く        樋田哲夫

 関西花の寺25ヶ寺の中の福知山・観音寺は昨年のアジサイの咲くころ訪ねた。総門、仁王門辺りから見ごろの花が埋め尽くし、庫裏の縁から山の斜面をワイドに眺めた。1年たって梅雨が近づくと壮観であったアジサイが浮かんでくる。植えられたのは戦後のことで万を越えて、丹波きってのアジサイの寺となっている。 にほんブログ村 美術ブログへ

夜は身の 狩行(書)

2008-05-19 06:31:43 | 
夜は身のうちにも卯の花腐しかな      鷹羽狩行

 卯の花は空木、卯木の花のこと。落葉低木で各地の山野に自生している。梅雨時に咲く白い花。幹が中空のためこの名を持つとか。歌に「卯の花のにおう垣根に」があるから、匂いを確かめてみることにしよう。生垣はまだ見たことがない。かって、大阪・住吉大社を訪ねたときに種類のあることを知った。卯の花腐(くた)しは梅雨のこと。

天寧寺の五百羅漢(写真)

2008-05-18 07:07:26 | 写真
こもごもの喜悲に怒りに悟りにぞ
五百羅漢の強き眼差し         樋田哲夫

 彦根市にある曹洞宗天寧寺は五百羅漢で名高い。仏殿の中へ入ると三方の雛檀(ひなだん)にぎっしり仏が並ぶ。一体一体精巧に刻まれ、表情が豊かである。喜悲と怒り、苦しみ、悶え、悟りの形相に圧倒される。寺の説明では釈迦、その十大弟子、五百羅漢の合計は511体という。だが重文の指定は受けていない。

アジサイの花(墨彩画)

2008-05-17 07:02:18 | 墨彩画
口の端に遂に乗りたる紫陽花は
あと半月に咲き始むらん        樋田哲夫

 ある趣味のクラブの仲間との会話にアジサイが話題となった。まだ、つぼみは固く、咲くまでに半月ほどは必要である。我が家にも変り種のいま一つさえないアジサイが1株ある。あまり薦められないが、他所へ出かけて気に入れば1枝失敬して持ち帰り、挿し木で簡単に活着する。バラもそうだが、不思議な力がある。 にほんブログ村 美術ブログへ