哲仙の水墨画

デジカメの風景写真、四季の草花、水墨画、書、短歌などを楽しみます。

奈良国立博物館の庭(写真)

2008-09-30 07:28:02 | 写真
疲れれば館内出でて時折を
池面に跳ねる音を聞きをり       樋田哲夫

 敬老の日に奈良国立博物館を初めて訪ねた。「西国三十三所観音の祈り」が目的である。本館、西館、東館と館内は広い。今回は東館西館を使う展示で、多数の観音像の観賞ができ、2時間30分をめぐると疲れが出て外へ出ると、わびさびの漂う庭には、まだ、スイレンの花の残る池に時折何かが跳ねる音が水面にして、また静けさが戻った。

ブドウ一房(水墨画)

2008-09-29 06:41:59 | 水墨画
一面に秋陽に眩し羽曳野の
山肌覆ふ葡萄ハウスは        樋田哲夫

 大阪府は結構ブドウを産する。丘陵地の多い羽曳野市を高速道路で通過すと一面に山肌を覆う波状型ハウスが目につく。デラウエア、甲州などの品種は路地栽培だが、巨峰、ピオーネとなるとハウス栽培となる。雨に弱い品種や収穫時期の調整の関係でもハウスとなる。この時期の午後の秋陽がハウスに当たって白く眩しい。 にほんブログ村 美術ブログへ

鼠ゐて 鬼城(書)

2008-09-28 06:35:49 | 
鼠ゐて棗を落とす月夜かな       村上鬼城

 ナツメはクロウメモドキ科の落葉高木で関西では10上旬ごろ熟して自然落花する。赤黒く2㌢ほどの卵形で人差し指の第1間接ぐらいである。びっしり落ちて地面を赤く染める。生薬で強壮、鎮静作用として漢方になる。ネズミが月夜に木へ上り落とすとは想像しにくい、リスの方が妥当ではないか。月夜で動物の正体は掴めなかったのではないか。

奈良公園の鹿たち(写真)

2008-09-27 05:03:04 | 写真
おねだりを観光客に求めゐて
奈良公園は鹿に安らぐ       樋田哲夫

 名勝奈良公園の大部分は国有地で奈良県が無償で借用し管理運営している。総面積660㌶、東西4㌔、南北2㌔の日本屈指の都市公園である。塀も柵も門もない24時間オープンの稀な公園である。1200頭の鹿が放し飼いにされて頻繁に見かける。鹿愛護会の販売する鹿せんべいを観光客になついて近寄る姿が可愛らしい。

ヤマメ(水墨画)

2008-09-26 06:22:01 | 水墨画
どれ見ても分からぬほどに魚の名は
無知なるゆゑに難しきかな      樋田哲夫

 ヤマメの魚の名は聞いていて知ってはいるが、その本物を見せられても、とんんと分からぬほどお粗末さである。川魚も海魚も同様で縁が薄い。大阪奈良県境にそびえる金剛山麓を自動車で通行したとき、渓流に派手なヤマメの看板を見かけたことがある。森の中の清流で養殖して、ヤマメの料理を提供しているのであろう。 にほんブログ村 美術ブログへ

秋草と 桜桃子(書)

2008-09-25 06:11:57 | 
秋草とわれとのみなり風の中     成瀬桜桃子

 桜桃子はこのブログ初登場。俳誌「春燈」を主宰し、2004年12月、78歳で死去。俳句協会副会長歴任。句の秋風だけでは草は特定できないが、背の低い草とは思いにくい。風によく揺れる草のイメージには高さが必要である。秋の野の丈草の中にただ一人いて空もすっきりと晴れ渡っているのだろう。秋風に野原の草の揺れは句作に最適といった感じだ。

西国長命寺の境内

2008-09-24 04:17:24 | 写真
桧皮葺く堂の並びのしっとりと
息整へて心は美(は)しき         樋田哲夫

 寺の縁起によると武内宿禰は景行天皇に仕えているとき、姨綺耶山(いきやさん)に登り1本の柳の巨木に「長寿長遠、諸願成就」の文字をしるして記念すると霊験があって300歳の長命となり、6代の天皇に仕えたという。景行、成務、仲哀、応神、仁徳、履中となる。写真は鐘楼、護法権現社拝殿、三仏堂。

秋の山里(水墨画)

2008-09-23 05:58:45 | 水墨画
さわさわと葉擦れの耳に心地よく
親しき山は秋溢れをり         樋田哲夫

 この時期は山野への外出が楽しい。風のそよぎも爽やかで木々の葉もゆれ、仰ぐ空は青く澄んで心の憂さも消えてしまう。野鳥観察をするバーダーには特によい。雲までもが高層に薄く延びて秋を歌っている。行き慣れた小高い山も秋の到来を喜ぶかに見える。ただし、マツタケ山は入山禁止の札があってマナーが必要である。  にほんブログ村 美術ブログへ

とうがらし 蕪村(書)

2008-09-22 06:29:36 | 
美しや野分の後のとうがらし         与謝蕪村

 野分(のわき)は秋に強く吹く風で台風、暴風を意味する。9月は南の海上で発生する台風が日本を襲うシーズンであり、大きな被害をもたらす大型台風は下旬に多い。きょう現在発生はない。発生から7~10日かけて日本に到着するので今年はないようだ。10月の台風は弱い。句は台風の雨で洗われたトウガラシが一段と赤く美しいというのである。

長命寺本堂と三重塔(写真)

2008-09-21 06:15:04 | 写真
名のよきに上りつめたる寺なれば
常より深く祈りの長し       樋田哲夫

 琵琶湖東岸にある西国三十三札所長命寺は文字通り長命祈願の寺である。参道の石段は808段と長く自然石を並べた急坂では老齢には幾度も休憩を入れなければ体にこたえる。汗も吹き出て頂上にたどり着くと堂宇が桧皮葺でしっとりとして美しい。寺の名が長命とあって、観音への祈りは思わず常より長くなる。

鷹渡る里山(水墨画)

2008-09-20 07:10:06 | 水墨画
里山に鷹の渡りの待つ間合ひ
虫はすだきて秋を聞きけり        樋田哲夫

 9月下旬に入ると「日本野鳥の会」のメンバーは鷹の渡りの観察に余念がなくなる。日本各地で繁殖した鷹の仲間のサシバ、ハチクマが東南アジアへ帰り始める。鳥だからどこでも飛べそうだが、習性があって決まったコースがある。そこへ出かけないと見られない。連続飛ぶ訳ではなく、その間虫の声を聞くのである。  にほんブログ村 美術ブログへ

子の摘める 立子(書)

2008-09-19 06:06:53 | 
子の摘める秋の七草茎短か       星野立子

 秋の七草はハギ、オバナ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、アサガオ(今のキキョウのこと)をいう。片言しか言えない幼児が花瓶挿すこともできない、後先の知恵も回らない行為である。親の見よう見まねで摘むのはよいがまりにも茎を短く摘んでしまう。摘み取る喜びを精一杯表現して、母親に手を差し出している様が浮かんでくる。

竹生島弁財天本堂(写真)

2008-09-18 06:32:39 | 写真
信仰の厚き竹生の弁財の
巨き堂宇は一寄進にて      樋田哲夫

 竹生島の船着場から切り立つ急な階段が続き最奥の頂に弁財天の本堂は建ってる。日本三大弁財天の一つに数えられ堂は偉容を誇る。比較的新しく昭和17年に建立。信者による一寄進と知る。弁才天の「才」が「財」に通じ、今は「財」が一般に使用されている。言語、才能、財宝のインドの神で日本では七福神の一神となっている。

秋の谷川(水墨画)

2008-09-17 06:39:51 | 水墨画
夏もよし風澄むむ秋はさらによし
岩に砕ける谷のひびきて        樋田哲夫

 渓谷の水の流れは夏の暑さに涼しさをもたたしてくれてよいものだが、秋は秋で風がさわやかになり、空が高く抜けて青さを増し、これまだよいものである。辟易した暑さもいつしか消えて高齢者には特によい。芸術、スポーツ、味覚、読書にと万能の秋はすべての人に躍動感を与えてくれて最高によい。 にほんブログ村 美術ブログへ 

桔梗や 蛇笏(書)

2008-09-16 07:49:23 | 
桔梗やまた雨かへすとうげみち        飯田蛇笏

 秋の七草に出てくる朝顔は現在でいう朝顔ではなく、桔梗の古称。この時期キキョウはよく見かけるが、人の育てている庭や公園のものばかり。野生のものは見たことがない。句は「また雨」とあるから前回も峠を越えようとした用事が雨だったが、今回も雨で、引き返えしたのであろう。大きく長い峠に違いない。