哲仙の水墨画

デジカメの風景写真、四季の草花、水墨画、書、短歌などを楽しみます。

こがらしや 漱石(書)

2007-11-30 07:54:36 | 
こがらしや夕日を海に吹き落とす       夏目漱石

 木枯らしはこの時期たびたび吹く強い北風のことである。夕日は西に沈むもの、木枯らしは北から東へ吹くものである。夕日が東へ沈んでいく情景なら句の意味も分かる。また、木枯らしの吹く日は冬雲で空が真っ赤に染まることはない。この句はどうも机上で句作したのではないかと思いたくなる。理屈は別として夕日が木枯らしに吹き落とされるとは面白い。

南方熊楠記念館で(写真)

2007-11-29 07:53:57 | 写真
田辺湾の岬に建てる紀伊の国の
巨人にふれり白浜に来て       樋田哲夫

 和歌山が生んだ博物学の巨人南方熊楠記念館は白浜にある。田辺市に生まれ19歳でアメリカ、イギリスなどへ14年間遊学し、10数ヶ国を自由に話せたという。得意分野の植物学粘菌は特に有名。昭和16年74歳で没。
 昭和天皇御製歌碑
 「雨にけふる神島を見て紀伊の生みし南方熊楠を思ふ」

ツワブキの花(墨彩画)

2007-11-28 08:23:49 | 墨彩画
初冬の当麻の寺はをちこちに
黄の照り映えるつわぶきの花        樋田哲夫

 つわぶきの花は11月中旬ごろ咲き始めて楽しめる。寺院、公園、庭園などで見かける。長い花柄に濃い黄色の一重の花を咲かせる。葉は光沢のある濃緑色でフキの葉に似る。腫れ物、湿しんなどの薬用となる。当麻寺塔頭奥の院の広い庭園に沢山咲いていた。にほんブログ村 美術ブログへ 

初冬の 鳴雪(書)

2007-11-27 05:10:19 | 
初冬の竹みどりなり詩仙堂         内藤鳴雪

 鳴雪は松山の人、俳句を子規に学ぶ。松や竹は一年中緑を失わないが、旧葉を落とし色が整う初冬にそれを感じたのか。詩仙堂は京都市左京区の比叡山西麓にある観光名所のひとつ。三河の戦国武将石川丈山の居宅で、客間から見るサツキの刈り込みの美しい庭園を静かに眺めたいが、人が多くて無理。寺院ではなく民家の雰囲気がよい。

山科・毘沙門堂(写真)

2007-11-26 07:31:01 | 写真
訪ねたり秋の深まる山科の
毘沙門堂は紅葉の名所       樋田哲夫

 JR山科駅から北へ1・1キロに毘沙門堂がある。山ろくの境内に取りつくと紅葉の大木が多数あり、名所にふさわしい雰囲気である。急な階段を登り、山門をくぐると本堂がある。毘沙門天は四天王のときは多聞天となる。仏の北を守護し鎧(よろい)をつけ右に宝棒、左に宝塔を持つ。七福神の一人で財宝の神。

2体の地蔵さん(墨彩画)

2007-11-25 07:18:34 | 墨彩画
                (はがき大)
微かにも笑みを浮かぶる町角の
石の地蔵は日々の親しみ        樋田哲夫

 地蔵菩薩は釈尊入滅度、弥勒菩薩が出現するまで無仏の世界に住んで衆生を教化、救済する仏。一般には比丘尼の姿で右に錫丈(しゃくじょう)、左に宝珠を持つ。子安、延命、六地蔵などがある。常に立像で坐像は見たことがない。路地で見かける地蔵さんは質素で親しみがある。にほんブログ村 美術ブログへ 

天目に 菊舎尼(書)

2007-11-24 05:53:18 | 
天目に小春の雲の動きかな      菊舎尼

 天目は中国浙江省で産出された茶碗のことである。現在茶碗といえば飯を盛る器のことを指すが、昔はお茶を飲む器である。天皇、貴人、高僧が使用し、庶民には縁遠い。曜変天目、油滴天目などその外いろいろある。形状は口が広くすり鉢状となっている。小春日の白い雲が天目茶碗に映って動くのが見えるというのである。それとも、茶碗の斑紋を雲と感じたのか。

送り火の大文字山より(写真)

2007-11-23 07:45:32 | 写真
澄む秋の溢るる陽こそ眩しけれ
大文字より見下ろす街は         樋田哲夫

 10月中旬ハイキング仲間9人で京都を訪ねた。山科から北へ緩やかな坂を進んで466㍍の大文字山である。夏の五山の送り火で有名で75個の火床は頂上より100㍍下った急斜面にあった。その場所から見下ろす京都市北部の市街地は快晴の秋でまぶしく光り絶景であった。紅葉と合わせて愛宕山、御所、船岡山が楽しめた。

茅葺きの家(水墨画)

2007-11-22 07:34:29 | 水墨画
田舎にも時は移りて茅葺きの
家のかくまでなくなりにけり       樋田哲夫

 住宅事情もここ数十年で大きく変った。私が子供のころ、まだ、田舎では茅葺(かやぶ)きの家は見かけて珍しくなかった。瓦屋根と違って茅葺きの家は住む人の一代に一度は葺き替えの大仕事が必要である。茅は乏しく、麦わらで葺く家が多かった。麦わらは麦の作付けで簡単に手に入るからで自然とそうなった。 にほんブログ村 美術ブログへ

海の音 暁台(書)

2007-11-21 06:12:53 | 
海の音一日遠き小春かな    加藤暁台

 加藤暁台は江戸中期の名古屋の人。芭蕉に傾倒して名古屋の中心人物として活躍。立冬過ぎて春を思わせるような暖かい日を小春日和という。快晴で空は高く、波の音は拡散されて消えやすい。そんな日は一日中穏やかが続き、遠き小春と表現している。小春日和は半日ということはない。遠く小春と表現すると散文になってしまう。

菊の福助作り(写真)

2007-11-20 07:51:32 | 写真
花も葉も形大きさ替わらねど
丈の低きの福助作り        樋田哲夫

 福助は幸福招来の縁起のよい人形で、背が低く頭が大きく、正座している福の神のことである。足袋の商標として馴染みである。菊作りの一方法として福助作りがあり、B-ナインなる薬をかけることで成長を抑制し、丈を低くする作り方である。その作り方を菊の福助作りと聞き、命名の的確さに得心させられる。

いかだ下り(水墨画)

2007-11-19 07:17:46 | 水墨画
山よりの丸太を運ぶ船頭は
流れを読みて筏操る        樋田哲夫

 昔は山間部で切り出した木材を運搬手段に、筏(いかだ)を組んで川を下る方法があった。ある程度流れのある川辺までは馬、牛で運び、そこで筏を組み、河口の町まで船頭が操るものだ。馬車、牛車が大活躍した時代である。現代では自動車がいとも簡単に輸送していしまう。観光として奈良・上北山での筏下りはシーズンにある。にほんブログ村 美術ブログへ 

近江路や 鬼城(書)

2007-11-18 07:22:36 | 
近江路や桜紅葉に牛車       村上鬼城

 鬼城はこのブログにたびたび登場している。大正・昭和にかけて活躍する。江戸に生まれ、高崎に住み、子規を深く慕い俳句に没頭する。近江路はどこを指すのだろうか。湖西の紅葉の名所の坂本辺りか、桜が色づく時節はもみじと重なる。もみじほど赤く発色しないが、小春日和にはよく似合う。そんな桜並木を牛車がとおっていくのである。

盆栽作りに黄山の世界(写真)

2007-11-17 06:22:25 | 写真
盆栽の菊の鉢には黄山の
無限の宇宙見る思ひする        樋田哲夫

 どこでも、大きな菊花展にはジャンルの一つとして盆栽作りの鉢物が並ぶ。自然界にそびえ立つ断崖にへばりつく松を表現するために岩を這わせた小菊の盆栽は思わず足を止める。限られた枠内に大きな宇宙の中国・黄山の光景をイメージさせる。国外の経験はなく、テレビ映像でしか知らないが、こんな世界をよくぞ表現したものだ。

二人は若い(水墨画)

2007-11-16 07:06:12 | 水墨画
この絵見て浮かぶ作家のある言葉
「仲よき事は美しき哉」        樋田哲夫

 浮かぶ作家とは昭和56年に亡くなった武者小路実篤である。白樺派の代表作家で、従三位、文化勲章、名誉都民などの称号を得ている。作品には「友情」「幸福者」「真理先生」など多数。また、余技として色紙に野菜を描き、毛筆で肉厚の文字を添えている。その中にこの言葉をいくども見た。風潮の子供のいじめはもってのほかである。にほんブログ村 美術ブログへ