キカクブ日誌

熊本県八代市坂本町にある JR肥薩線「さかもと駅」2015年5月の写真です。

「サル化する世界」内田樹著

2021年03月24日 | ☆読書
数年前から私が時々イベントセミナーでお世話になっている喫茶店(最近はコロナで全く出かけてませんが)『隣町珈琲』さん。そこでお目にかかったオーナーの平川克美さんは、かなり有名な言論者らしくご本もたくさん(でも難しそう)。それでもこの方は私が以前住んでいた大田区の隣まちのご出身だということで、かなり親近感をもちまして、難しそうなご本を買って読みました

そしてその平川さんの幼馴染でよく対談などされているのが内田樹さん。名前はもちろん知っていたのですが、「思想家」とか「哲学者」とかいう肩書きの方の著作はきっと難しくて読めないだろうと思って敬遠していました。
でもそうかぁ下丸子出身なんだ~と、身近に感じてからちゃんと書かれたものを読むようになってみると、面白い!難しいけど面白い!



さて、この本『サル化する世界』
内田さんはいろんなところに頼まれて文章を書いていらっしゃるようで、この本もそういう色んな所で書いたり話したりしたことを再録したもののようです。なので話題はあっち行ったりこっち行ったり、本としての一貫性はないのですが、それでも現代の私たちの問題を語っているという点は共通しています。

非常に興味を惹かれたのが「比較敗戦論」。第二次世界対戦の敗戦国各国の「敗戦の受容」について比較考察した文章です。もちろん日本は敗戦国ですが私から見ても敗戦の受容は健全な形ではないと思います。「敗戦」より「終戦」という言葉を使いたがるとかもその一例かな。
他の敗戦国はどのようにして敗戦を受容したのかという視点で語られています。戦勝国と敗戦国という規定も厳密には難しいもので、第二次大戦のような複雑な戦争、また一つの国でもその戦争の途中で政府が転覆して内戦になってしまったりすると、そもそも勝ったのか負けたのかということがはっきりしない場合があるようですね。

フランスは戦勝国だと思っていましたが(常任理事国にも入ってますしね)でも実はフランスは第二次世界大戦中はドイツに占領され協力した親独政府が政権を握っており本当の意味では敗戦国らしい。
逆にイタリアについては「日独伊三国同盟」の印象が大きいので、何の疑いもなく敗戦国だと思っていましたけれども、実はイタリアは第二次世界大戦中に内戦が起こりムッソリーニを失脚させレジスタンス側の政府になっており、(1945年7月にはイタリアは日本に宣戦布告したらしい)実は戦勝国なのだということも知りました。

敗戦をどのように受容したかによってその後の国民の心の問題にかなり影響を与えるということが、こういう比較研究をすることによってわかる部分があります。私の中の問題意識にも通じるので、ここ少し掘り下げたいな。


そのほかにも「結婚は生活防衛~リスクヘッジ」だという話。
教育が消費されるようになっている。一番教育効果を上げるのは実は「成績をつけないこと」なのではないか?という提言など、考えるヒントがたくさん詰まっていました。





2 コメント

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Unknown (シタテルヒコ)
2021-03-24 15:28:29
ムッソリーニのイタリアが戦勝国だったとは目からウロコものですi
戦後間もなく公開された伊映画「無防備都市」とかすごく悲劇的に描かれていたのが、幻想に思えて来ました。
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シタテルヒコさま (YOKO)
2021-03-24 15:43:13
びっくりしますよね。「無防備都市」という映画のことは確かこの本にも出てきたように思います。
戦勝国ではあっても、国内が戦場になり(内戦もやっていたので)ボロボロになたというのは確かなので、戦争終結時に連合国側にあったとはいっても敗戦国のような様相だったことも事実なのだと書いてありました。
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