昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(169)第21回読書ミーティング(4)

2016-11-23 03:24:11 | 三鷹通信
 参加者Aさんの推薦図書はスタジオワーク「建築デザインの解剖図鑑」
 建築をデザインという観点で、その形を読み解くというユニークで、町歩きが楽しくなる本。何気なく見ている建物、橋、道、看板などの歴史的、建築的、民俗学的な読み解きを教えてくれる。
 建築からはじまり、洞窟、坂道、水路、屋台、看板、鉄道、窪地、雁木、富士塚、湧水、橋など幅広く解説している。
 日本の伝統的なデザイン・意匠はおびただしい意味や伝統の宝庫。
 江戸時代、明治、大正、昭和とよくもまあ、日本人はこれほどの意味や嗜好をふまえて、町を作ってきたのか?
 日本人が物作りを考えるときのベーシック図鑑といってもいい本。
 建築専門書を手がける「エクスナレッジ」の素人向けの本。

 *広く、浅く・・・ない、的確にまとめられた「町歩きマニュアル」
 *大変多くの資料を当たり、足で取材していると思われる。それをほんの短い説明と注釈の少ないイラストにまとめる潔さがよい。
 *一般の人が楽しむ本だが、建築のプロが読んでも、関連した異分野のさわりが分かって役立つ。もしかして、建築とはその建物だけではなく、地域や周辺との繋がりも考えなさいよ、という啓示か。
 橋詰広場で推理するまちの歴史。
 <隅田川に架かる永代橋を巡る物語>
 橋のたもとに火除地が転じた「小公園」のほか「交番」「公衆便所」を発見。「お稲荷さん」を探してみるが、橋のたもとには見当たらない。エリアを広げてみると、北方に高尾稲荷神社を発見。「もしや橋は以前、北方にあったのではないか?」という疑問がわく。なぜなら、稲荷は土地につくもので、その場を動かせないからだ。
 そこで「江戸切絵図」で確認。江戸時代、橋がほっぽうにあったことが分かった。
 「江戸切絵図」を見ると、高尾稲荷神社は橋詰にあった。都市計画で移動したのであろう。      
 <にぎわいをつくる縁日の屋台の配置>
 縁日とは、神仏と縁がある特別な日。社寺では祭礼や法要が営まれ、多くの参拝者が訪れる。それを目当てに屋台や露店が立ち、境内は大にぎわいだ。
 一見、何の法則性もなく立ち並ぶ屋台だが、実は巧妙に配置されている。これは、露天商の「親方」の采配により決まる。これによってにぎわいの演出も屋台の売り上げも大きく変わるのだ。

 これは、看板業のプロでもあるAさんの視点による写真。
 もうひとつ、伝統的な建築物には屋根と庇による特色的な顔(ファサード)がある。ところが昭和初期、関東大震災後に生まれた看板建築といわれる店舗兼住宅には庇がなく、前面が板状。
 さらに、こんなものも。職人が正確なこてさばきで描く絵を見つけた。
 千住大橋・橋戸稲荷神社壁より。
 町歩きで日本のことがもっと分かる。幸せになる。