昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(33)大学時代(16)

2013-11-02 04:34:03 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
 また、嫌な夢を見た。迷子になる夢だ。
 家へ帰る道がわからない。
 駅の路線図を見るが、どの経路で帰ったらいいかがわからない。
 
 自分が何か壁にぶち当たると必ず見る夢だ。
 寝起きのぼーっとした頭で時計を見ると、まだ6時を過ぎたばかりだ。
 頭をすっきりさせるために散歩でもしようと階段を下りると、藤原が玄関で靴を履いている。
 また、奥さんのことを蒸し返えされそうで一瞬ひるむ。

「おっ、司か・・・」
 気配に振り向いた藤原が声をかけてきた。
「早朝ゴルフに行くんだ。付きあわないか?」
 奥さんのことでなくてホッとしたが、ゴルフ? 
 足が悪いボクが何で?
「ゴルフ?」
「あしたアイスホッケー同好会の連中とゴルフに行くんで、ちょっと練習しておきたいんで」
 ・・・勝手に自分でいけばいいじゃないか・・・
「練習場が近くにあるんだ。早朝だと安いんだよ。ともかくつきあえよ」
 ・・・何だって身勝手なんだから。こうと思ったら関係ない者でも引きづりこむ・・・
「行こう、行こう!」
 ・・・どうせ散歩するつもりだったんだ。彼の実力を見てやるか・・・

「こんな所に練習場があったんだ・・・」
 すでに2人ばかり先客がボールを打っていた。
 自分ではやらないが、ゴルフ観戦には関心がある。
 高校生の時だったか、霞が関カンツリー倶楽部の国際試合で中村寅吉選手が優勝し、それ以来テレビでもゴルフは人気だった。
 藤原が打ちだした。からだに見合った豪快なショットを連発する。

「キミも打ってみるか?」
 とつぜん彼が言った。
「ボクが?」
 思わず曲がらない右足を見た。
「やってみろよ! ぜったいキミだって打てるから。スイングに右足なんて必要ないんだ。左足を軸にして打てばいいんだから」
  

 ─続く─

 上原浩治のレッドソックスがワールドシリーズを制して優勝した。
 アメリカに挑戦したがパッとしなかった彼が、今年になって突然変異して、ついに最高の優勝貢献者になった。
 MVPを取ったオルティーズは勝利の雄叫びを上げる上原を抱え上げて彼を祝福した。
 
 「なんといっても、勝因は上原を筆頭に<熱い思い>がはんぱじゃなかったことだ!」
 オルティーズは言った。