昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

運が悪いことから全てが始まった(36)大学時代(19)

2013-11-07 02:44:55 | 小説、運が悪いことから全てが始まった
「渡辺商会の社長の息子さんの家庭教師をやってくれないかと言ってきたんだが・・・」
 そんなある日、オヤジから電話があった。
 ・・・渡辺商会?・・・
 取り次いでくれた大家さんの不機嫌な顔を気にしながら思い起こしていた。
 ・・・オヤジの会社の取引先だ。新米なんかくれた・・・
 
 オヤジの会社は繊維機械の製造会社だが、工作機械用の附属機器なんかも作っている。
 その販売代理店だ。
 そこを訪問する度に、オヤジは何かもらってくるので記憶に残っていた。

 汲々とした生活をしていたから、ボクにとってまさに渡りに舟の話だった。
 
 人を教えることなど初めてだったが、中学三年生だという。
 中学生ならと多寡をくくって出かけた。
 
 相手は真っ白な開襟シャツに、高そうな麻のカーディガンを羽織っていた。
 利発な目をしている。
 先生の良しあしを値踏みするようにジロジロと見つめられ、ボクはいささかどぎまぎしていたようだ。
「先生! その説明はウチの中学の先生から教わったことと矛盾しています」
 
 人の足元を見たように突っ込んでくる。

 ・・・いやなヤツだ。こんなのとこれからずーっと付き合わなければならないのか・・・
 第一日目は、意気込んでいたモチベーションが落ち込んだまま終了した。
「あら、お帰りですか? 何もありませんがお食事をしていって下さいな」
 
 社長夫人が現れて言った。
 ・・・ウチの母親がいつも使う単なるお愛想にすぎないかもしれない・・・
 オヤジが連れてくる客の接待に対する不満をしょっちゅうオフクロから聞かされていたので、ボクには辞する気持ちが働いた。
 
 ─続く─ 
 
 <The New Korea> 
 イギリスの植民地研究の第一人者が日韓併合時代の朝鮮を、「朝鮮が劇的に豊かになった時代」として実証的に著している。
 当時の李王朝時代の悲惨な生活が劇的に改善されたという点で、他の植民地とは違っていたというのだ。
 あちこちで<日本の歴史認識を問う>として恨み節を振りまいている<恨み姫>朴大統領に自国の歴史を振り返って欲しい。