安易にオケやブラスバンドに阿ることをよしとしないインディペンデントなチューバ娘の話。
音楽のもつ力、凄まじさ、素晴らしさが、余すことなく語られていたと思う。ポエジーに富んだ音の表現もよかったなあ。
この本の中で出てくる、東欧はバルカン半島のスーパー音楽集団「Muzicanti aurii」(←もちろん仮想)のライブの様子は鳥肌が立つな。このMuzuicanti aruriiは東欧音楽、ジプシーの音楽を受け継ぐ、超音楽集団という設定で、ツボでした。
願わくは、どこかのライブで、根こそぎ、持って行かれるような体験をしてみたい・・・。ただただ「凄い」としか表現できなようなライブを・・・。
と思って、ネットをブラブラしたら、なんと、この小説に出てくるムズイカンティ・アウリのモデルになった「
シカラムータ」なるユニットを発見。
ザバダックで懐かしい太田惠資氏の名前もあるではないか・・・。こんなところで活動されてたんですね・・・。
ライブなら間違いなく、面白いのだろうけど、CDだと、ん~、どうかな???
作者の
瀬川氏のブログも、発見。本当に凄い時代だと思う。(情報を手に入れるだけなら)
ここに描かれた音楽に比べると、自分のピアノなどは、まるでままごと遊びではあるけれども、
せめては、ジャンルに囚われない、いろんなピアノを弾いてみたい。
ならば、私が吹いてやる。私の肺は空気を満たし、私の内腔はまっすぐにチューバへと連なって天へと向いたベルまで一本の管となり、大気は音に変わって世界へ放たれるのだ。
チューバはうたう mit Tuba は新鮮な驚きに充ちている。作者はチューバの音の魅力を描きながら、しかし音の魅力に淫してはいない。ここでの音楽は感覚の愛撫ではなく、生への秘密の通路を開く何かなのだ
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クラシックやら、ジャズやらのジャンルや、様式にとらわれた音楽に物足りなさを感じられている方には、たいへんお勧めの音楽小説です。
最近読んだ、音楽小説の中では、自分としては、ど真ん中のストライクでした。
瀬川さんの太宰治賞受賞のインタビュー記事
(写真の花)巴草 (トモエソウ)