みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

川上弘美さん「其処彼処(ここかしこ)」

2006年01月31日 | 
はっきり言って、自分は川上弘美さんが好きだ。並々ならず、好きだなぁ。

其処彼処(ここかしこ)」は数年前に日経新聞で連載されたエッセイをまとめたもの。当時も毎週の連載がとても楽しみだったのだ。改めて読んでみて、ほとんど全てが記憶にある話。心から面白い、好きだと感じたことは、たとえ数分間の読書でも、ずっと心に残るものなんですね。

川上弘美さんの文章、やっぱり日本語の美しさをとても感じる。ややとぼけた雰囲気で、どんどん話に引き込むところ、たいへん上手いと思う。古びた大和言葉を今の感覚でうまく蘇らせるところも、見事である。その手腕に、いたく感心。
素敵な音楽を聴くのと、ほとんど同じ感覚です。本当に舌なめずりしたくなる。心から日本語が母国語でよかったなぁと思えてくる。いつか、こんなふうに言葉を操れたらよいのに。川上さんの文章は、自分の文章表現の一番のテキストでもある。

そういった言葉の魅力もさることながら、川上さんとは波長の一致を感じる。一編、一編、読むごとに、ふむふむと頷いて、共感できる点が、わんさかなのだ。

昨年末の日経新聞では、世界的に人気の高い日本人作家の一人として紹介されていた川上弘美さんピアノで例えれば、ショパンやモーツァルトと同じくらいに、一押しの作家ですね。(嘘、百押しぐらい)(ちなみに、海外で群を抜いて人気がある日本人作家は村上春樹氏とのことでした。)
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川瀬巴水の風景画、そして「花星賛歌」

2006年01月29日 | 絵・写真・美術館
土曜の夜、テレビ東京系列で放送されてる「美の巨人たち」がいい。
まず、音楽。番組中、背景で流れる音楽も、けっこう気になるのだけど、特にエンディングの普天間かおりが歌う「花星賛歌」が特にお気に入り。アジア、沖縄的な香りで郷愁を誘うメロディー。胸倉ググッと掴まれ系。一青窈の「もらい泣き」にもちょっと似てますね。ここで試聴できます。シングル買おうかな。

昨晩、取り上げられていたのは川瀬巴水(かわせ・はすい)の新版画。
まさに浮世絵ルネサンス。静かなぬくもりのある懐かしい風景。番組の最後、巴水の絶筆「平泉金色堂」と共に紹介されていたのが、リンボウ先生の「夕暮巴水」から取られていた詩「ゆきみち」。この詩の朗読と「花星賛歌」が流れる中、「平泉金色堂」のアップが静かに動いてアニメーションのよう!なのには、けっこう感動。


 ゆきみち

 ふみしめてあるけば
 あなうらがつめたい
 でも、じっとしたをみて
 きしきし
 ゆきふみしめてあるく

 かぎりのあるみちは
 いつかはきっとおわる
 そう、こころにねんじて
 きしきし
 ゆきをふみしめてあるく

 注)あなうら・・・足の裏

川瀬巴水の版画は、渡邊木版美術画舗のホームページで、いろいろ見られますね。大変充実してる。まるで日本的な美しさの見本帳。つい見入ってしまう。旅に出たくなる。風景写真の構図のテキストとも言える。
あと、なんとなく宮崎アニメの暖かい雰囲気と通じるところがあると思いません?もちろん、巴水の方が元祖だけど。遠く浮世絵の絵師の時代から、絵心、美意識は連綿と受け継がれている、繋がっているんだなぁ・・・。

巴水の展覧会は各地を巡回するようなので、是非、足を運びたいと思う。
(「平泉金色堂」の絵は、こちらから借用させて頂きました。)
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春の雪

2006年01月28日 | 
三島由紀夫の「春の雪」、たいへん良かった。ため息が出るような美しい言葉の世界です。
本作、大正時代初頭の貴族が主人公の悲恋の物語ですね。昨年の映画は見ていないのだけど、原作はずっと読んでみたいと思ってた。映画で人気が出ていたのか、行きつけの図書館は、ずっと貸し出し中で、ようやく借りられたのでした。

冒頭の陰鬱な絵のシーン(これは音楽で例えればソナタの第1主題なのだろう)から、しばらくは、正直、読み続けられるか自信がなかった。主人公の主人公の清顕なる侯爵家の御曹司は、はなはだ軟弱で、自分の好みではなかったから。(なよなよとした男は生理的に受けつけられない。)
が、ヒロインの聡子が出てくると、急に面白くなる。三島由紀夫の言葉の世界に魅了されたんですね・・・。全編、至る所に、微に入り細をうがつ精緻を極めた美しい描写が散りばめられている。日本の四季折々の美しい情景の数々、そして、まばゆいばかりに美しいのだろうヒロインの聡子、中でも逢瀬の場面の完璧な美しさ、降参!

折りしも、昨年末、本作の後半の舞台となる奈良は帯解(おびとけ)を歩いたばかりでもあり、不思議な縁も感じる。

本作、輪廻転生がテーマの長大な四部作「豊穣の海」の初巻だけど、難しいことは考えず、素直に美しい言葉の世界に浸るのもよいのでは?と思う。「春の雪」に始まり「春の雪」に終わる悲しくも壮麗で優美な美の世界、お勧めです。

ただ、難しい言葉がいっぱいで、語彙の貧弱さを思い知りました。先を読みたい気持ちが強く、読み飛ばしてしまったところもあるので、いつか、ゆっくり辞書を引きながら、じっくり味わって再読したいですね。あと、聡明で気高い聡子のような女性が、なぜ清顕のような男を好きになるんでしょうね??つくづく女心は分からんです・・・。

一つだけ、本編で気に入った言葉をメモっておこう。

 燃えているものは悪ではない、歌になるものは悪ではない・・・ 
 

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60進法の起源

2006年01月26日 | 雑記
数の話、もう少し続きがあるのです。
次なるは60進法。どうして1時間は60分なんだろう?1分は60秒なんだろう?疑問でした。(我ながら、なんだか一休さんの「どちて坊や」みたい・・・)昨日の本に、これもまだ推測の域だけど、興味深い説が紹介されてました。

「5進数を使う民と12進数を使う種族が、混じりあって生まれた」のではないかと。

なるほどと思った。60は5と12の最小公倍数。二つの単位系が交差するポイント。ひょっとしたら、60進法の成立には、こんな物語があるかも?

今を遡ること5000年前、ユーフラテス川のほとりで、5の民(指の本数で数える人たち)と12の民(指の関節の数で数える人たち)は、長らく争っていた。ある時、賢者が現れて、60を基準にしようと皆を説得した。60なら、両者に折り合いがつくだろうと。そして、双方の民の平和と友愛の印に、60進法が採用され、平和が訪れる。シュメール人の王国、古代メソポタミア文明は大いに栄えた・・・。

公倍数は2つの数の橋渡しをするための数。もっと言えば2つの文化が調和するポイントとも言える。中学で公倍数を習った時は、それが一体何の役に立つんだ?と思っていたのだけど、20年の時を隔てて、ようやく公倍数の意味を、一歩踏み込んで理解できたような気がする。(60進法なのか60進数なのか、迷いました。)
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12進数の起源

2006年01月25日 | 雑記
数の話。ピアノを弾いていると12という数が気になる。
なぜなら、ピアノの鍵盤を思い浮かべると分かるのだけど、ドレミファソラシの7つの白鍵+5つの黒鍵 =12。その次の音は一回りして1オクターブ上のド。つまり音の世界は12進数。
同じく、暦(1年=12ヶ月)も12進数ですね。

普段、慣れ親しんでいる10進数は、明らかに両手の指の本数に由来するけれど、ならば12は?
なぜ12進数などが使われるようになったのか?暦と音楽が共に12進数なのには、何か理由があるのだろうか?ずっと関心を持っていたのだけど、本(黄金比はすべてを美しくするか?)を読んでいて、ようやくそれらしき説に出会う。(とりあえず音楽は除いてですが・・・)

ヒント。答えは、君の手のひらに。



気付かれました?

答えは、4本の指にある関節の数(4×3=12)。親指は数えるために使うので除きます。ちょうど現代人が携帯でメールを打つ時に親指を使うように、大昔の人は、親指で、指の関節を指差して、数を数えていた。携帯を使う現代人だからこそ、しっくり来るんじゃないかな?
一応念のため断っておきますが、本書の著者によると、まだ説の段階で、まだ確実な話とは言えないようです。でも、感覚的にピッタリ来るなぁ。

もしも、人間の指の関節が2つだったら、1年は8ヶ月だったかもしれない・・・。
普段は、気にもとめない当たり前のことに、いろんな人類の歴史が詰まっている。感慨深い。こういうのを歴史ロマンというのかな?
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ドレミの起源

2006年01月24日 | 音楽
音楽史の話。
数学と音楽を紐付けたピタゴラス(古代ギリシャの大数学者、ピタゴラス音律を発見)の話を知って以来、音楽と数学の関係については、ずっと関心事なんです。それで、ある本を読んでいたら「天球のハーモニー」の話が出てきた。

音楽と数学の関係に気を良くしたピタゴラス自身、音楽と天文学を結びつけようとして「天球のハーモニー」なる考え方を主張してたようだけど、17世紀の天文学者ケプラー(太陽の周りを惑星が楕円軌道で回ることを説明した「ケプラーの法則」は有名ですね)によれば、太陽系の惑星は音を奏でていることになり、地球は「ミファミファ」のトリルのような音楽になるんだそうです。そして理由は不明だけど、ケプラーによれば「ミ」がmisery(苦難)「ファ」はfamine(飢え)なんだそうです。

ここまで読んで、ん?であれば、他の音「ド」や「ソ」は何に由来するのだろう?と思って、グーグル先生に質問してみる。

それで、そのものズバリのページ「ドレミの起源」が見つかる。(すみません、本題までが長くて・・・)

「ドレミファソラシド」はラテン語の聖歌(グレゴリオ聖歌)の「歌詞」から取られているのですね。
サウンド・オブ・ミュージックの「ドレミの歌」も、なんだか似たようなアプローチだな。ドレミの起源は、音大の授業では、真っ先に教えられるのかな?

でも、それならば、ケプラーの「ミ」がmisery(苦難)「ファ」はfamine(飢え)は一体、何だったんだろう?という疑問は残るぞ。ちょっと気持ち悪い・・・。
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小山硬(おやまかたし)画伯の天草(慈光)

2006年01月22日 | 絵・写真・美術館
少し前、リニモに乗って美術館に行った。名都(めいと)美術館

日本現近代美人画のコレクションが充実しているとの話を聞きつけたので。
特別な企画展ではなかったので、休日なのに、訪れる人はまばら。新春らしい装いの美人画は期待どおりで、静かに絵を楽しめました。

そして思わぬ名画との出会いがあった。小山硬(おやま・かたし)画伯の「天草(慈光)」。
一目見て、これは、いい絵だと思った。
否応なく凝視してしまい、身動きできない感じ。
ただ、ただ、いい絵だと思った。

絵の舞台は、キリシタン弾圧の地、天草。
恐らくは、貧しいがために老神父に託された赤ちゃんなのだろう。
照らし出される初々しい幼子の命と年月を重ねた老人の命。
どちらの命も尊く、受け継がれてゆく命の尊さが素直に伝わってくる。
あと、年月を重ねた老神父の肩の線の力強いこと。
幼子を抱き上げる老神父の武骨な手が美しいこと。
(映画「風の谷のナウシカ」で、ナウシカが、老兵の瘤だらけの手、腐海の毒に犯された手が好きだ、と言うお気に入りのシーンがあるのだけど、それと同じだろうか)

老いてこそ得られる美なり天草の
(そらみみ)(こりゃ駄目だ。季語がない!)

思いがけず良い絵に出会うことは、美術館に足を運ぶ醍醐味ですね。
今年も、なるべく美術館に行こうっと。
この小さな画像では、大きな実物の良さが何百分の1になってしまうのは残念。

この辺を見ていると、小山硬画伯の天草を題材にした絵は、他にも幾つかあるんですね。
「プラチナムグレイ」、言葉だけで、なんだか降参。
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●レッスン シチリアーノへ

2006年01月21日 | ピアノレッスン
一応、ノルマの報告。今日は今年最初のレッスンでした。
昨年末に痛めた左手がまだ治らないため、ハノン、スケルツォは練習休止中。

・ハノン
休み。

・チェルニー40-26(右手の不規則な連譜の練習)
×。左手に負担がない曲なので、この曲は練習した。左手6拍に右は19拍やら20拍やら、きれいに割り切れない音を入れる練習。
最初はどうなることかと思ったけど、とりあえず3・3・4・3・3・3とか、インチキで練習して、少しずつきれいに入るようになってきた。譜読段階としては、今までのチェルニーの中で、一番、苦労しているなぁ。

・ショパン「スケルツォ2番」
休み。

・バッハ(ケンプ編)「シチリアーノ」
左手が治るまでは、この曲をやろう。右手でしばしば重音が登場するのだけど、もっと旋律を浮き立たせないと。副旋律は、うるさくならないように、ちゃんとコントロールせねば。というか、早く立ち止まらずに弾けるようにしたいなぁ。

今日は、手が悪くてあまり弾けないこともあり、なんだか雑談の多いレッスンでした。先生もこの正月、噂の「のだめカンタービレ」を読破されたらしく、熱烈に勧められたのでした。
「のだめを読むとますます、ピアノが弾きたくなるわよ~」
「でも先生、もう十分、ピアノは弾きたいので、これ以上弾きたくなると、手が壊れてしまいそうで、まずいです・・・。」
(それに、部屋を散らかした女の子を好きになれるかな・・・。)
帰り、ブックオフを覗いてみたけど、まだ出てないですね・・・。もう少し出るのを待つか、アマゾンに行くか?ん??でも、アマゾンのマーケットプレースってまとめ買いできるんだっけ???読みたい本、山盛りだからなぁ・・・。
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苺屋さん、レディグレイ

2006年01月21日 | 食べる
ローカルネタですみません。
月に1回は地元の「苺屋」さんでランチを楽しむのだけど、今日頂いた料理は格別に美味だった。

メインの料理は、柚子味噌ソースのカキと白身魚のフライ。更に、とろろが和えてあり、ごぼうと白菜などの野菜も一緒にソースに絡めて頂く。更に更に、お好みでマヨネーズとからしもトッピング。
サクッとしたフライの食感の後に、玄妙なカキと、いろんな素材の味が複雑にハモリ合って口の中に広がってゆく。ん~、上手い。実に美味しい。今までに食べた「かき」の中で一番だなぁ。本当に、料理の世界もオーケストラだなぁと思う。(写真がなくてすみません。)

これに、一皿目パスタのサラダとごはん、お味噌汁、ケーキとババロアのデザート、飲み物(自分はいつもホット)で980円也。常連だと割引券もあり、880円で大満足のランチなのでした。苺屋さんは、ここの「やきにくもりもり」の向かい。愛知県北部、江南市の方には、お薦めです。

あと、ローカルじゃない食べ物ネタも。
最近、発見した美味な紅茶がレディグレイ。爽やかで気品のある風味。アールグレイにオレンジ、レモンがブレンドされているんですね。アールグレイの独特の風味はちょっと敬遠してたのだけど、こちらは癖になる美味しさ。トワイニングの紅茶は、普通のスーパーで手に入るし、アールグレイはちょっと・・・という方にはお薦めかと。
(2001年に出てたなんて・・・。5年間も知らなかったとは・・・。)

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ピアノ好きの株の風景

2006年01月19日 | 雑記
ん~。株式市場、今日は落ち着いていたけれど、ホリエモン、本当に人騒がせだなぁ。(自分はホリエモンは好きじゃない。人間的に薄くて、真心が感じられんというか・・・。)
最近、感じるのが、けっこう周りの人も株をやり始めてるということ。ネット証券の口座数は順調に伸びているし、年末年始の休みに、古くからの友人と集まった時、株なんか、やりそうにないタイプの友人、Aさんが株を始めていて、ちょっとびっくりしたのも記憶に新しい。職場でもちらほら。昔ながらの「株=金の亡者、腹黒い人がやるもの」という図式は崩れて、裾野が広がってるのを感じる。

自分も銀行預金のあまりの低金利に嫌気が差して、ぼちぼちやってるのだけど、最近のデイトレードだの、マネーゲーム的なやり方は、ついてゆけない。なんだかなぁ・・・と思う。そういう方面の才覚がない者の僻みかもしれないけれど・・・。
それと、株に関わっている時間が、好きじゃないのだ。銘柄の発掘やチャートをチェックする時間は、ピアノを弾いてるのに比べたらやっぱり不毛。値動きに一喜一憂するのも、悲しく、自己嫌悪。基本的に、株に費やす時間があれば、ピアノや本を楽しんでいたい。

なので、今は極力、時間を掛けない(というか手抜き?の)売買スタイル。株時間は1ヶ月に2~3時間だろうか・・・。これからは年金も自分で運用する時代だし、なんとか昔の預金金利ぐらいにはコンスタントに運用できるノウハウは身につけたいと思っているのだけど・・・。

あと、ピアノ的には、やっぱり楽器メーカーは応援したいですね。たとえば多分買えないけれど、ショパンが愛したピアノ、フランスのプレイエル社。株主優待で、ピアノはもらえないですよね(笑)。個人的に、これからはますます感性の時代だと思っているので、音楽やら、香りやら、環境やら、そういう会社に投資するのもよいだろうか・・・。
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