ここに描かれた世界、とても好き。
リトル・アリョーヒン、伝説的に美しいチェスの棋譜を残す少年の物語。
この本の良さをどうやったら伝えられるんだろう?
控えめで慎ましやかな登場人物たち、少年を温かく見守る師のまなざし、誠実さ、勇気、思いやり、思慮深さ・・・、様々な佳きものが調和して育まれた「美」。
博物館に所蔵された伝説の棋譜「ビショップの奇跡」はそれらの結晶なのだと思う。
チェスの棋譜に美や詩が宿るというのは、興味深く、なるほどと思う。
ピアノの演奏に、人柄やその人の心のありようが表れるのと同じように、チェスの指し手にも、人格が現れる。
およそ人間に関わるもので、美に無縁なものは一つもない。
特にお気に入りは、対局の場面。
試合は、勝ち負けを決することが目的ではなく、相手といい試合を創造するためのもの。
チェスで綴られた、息の合った二重奏を聴いているような感じ・・・。
少年の身体に不自由があるからこそ、心はかえって豊かに育まれる?
目の見えないピアニスト、音の聞こえない作曲家・・・、ついつい連想してしまう。
ピアノ好きの方には、強くお勧めできる作品です!
(ついついチェスをピアノに置き換えて読んでしまう。)
(終わりの方は、けっこう泣けたなあ・・・。)
(ショパンの小さなノクターンを弾いてみたくなる。)
こんなふうに音楽を奏でたい。味わいたい。
http://book.asahi.com/clip/TKY200901310125.html
リトル・アリョーヒン、伝説的に美しいチェスの棋譜を残す少年の物語。
この本の良さをどうやったら伝えられるんだろう?
控えめで慎ましやかな登場人物たち、少年を温かく見守る師のまなざし、誠実さ、勇気、思いやり、思慮深さ・・・、様々な佳きものが調和して育まれた「美」。
博物館に所蔵された伝説の棋譜「ビショップの奇跡」はそれらの結晶なのだと思う。
チェスの棋譜に美や詩が宿るというのは、興味深く、なるほどと思う。
ピアノの演奏に、人柄やその人の心のありようが表れるのと同じように、チェスの指し手にも、人格が現れる。
およそ人間に関わるもので、美に無縁なものは一つもない。
特にお気に入りは、対局の場面。
試合は、勝ち負けを決することが目的ではなく、相手といい試合を創造するためのもの。
チェスで綴られた、息の合った二重奏を聴いているような感じ・・・。
少年の身体に不自由があるからこそ、心はかえって豊かに育まれる?
目の見えないピアニスト、音の聞こえない作曲家・・・、ついつい連想してしまう。
ピアノ好きの方には、強くお勧めできる作品です!
(ついついチェスをピアノに置き換えて読んでしまう。)
(終わりの方は、けっこう泣けたなあ・・・。)
(ショパンの小さなノクターンを弾いてみたくなる。)
「慌てるな、坊や」 少年は詩がどんなものかよく知らなかったが、アリョーヒンの棋譜から立ち上がる朝霧のような静けさ、風に震える花弁の可憐さ、一瞬を貫く稲光、大地を吠えさせる風のうねり、暗闇に浮かぶ月の孤独、などを詩と評するならば、詩というのものは素晴らしい宝石であるに違いないと確信した。 そこには確かに真正面からチェスに立ち向かってゆこうとする若々しい情熱があった。そしてそれを受け止めようとする温もりがあった。白の手は、平原を駆け回る野生動物の子供のように怖いもの知らずで、黒の手は、大地の奥深く掘られた巣穴で黙想する長老のように、どっしりとしていた。世界チャンピオン決定戦の名局に比べれば当然未熟であり、一手一手が結ぶメロディーはたどたどしかったが、決して耳障りではなかった。どんなに未熟でも、駒の奏でる響きに心打たれ、もっと美しい音を聞こうと耳を澄ませる、その息遣いが棋譜に染みこんでいた。 心の底から上手くいってる、と感じるのは、これで勝てると確信した時でも、相手がミスをした時でもない。相手の駒の力が、こっちの陣営でこだまして、僕の駒の音と響き合う時なんだ。そういう時、駒たちは僕が想像もしなかった音色で鳴り出す。その音色に耳を傾けていると、ああ、今、盤の上では正しいことが行われている、という気持ちになれるんだ。上手に説明できないけど・・・。 最強の手が最善とは限らない。 邪心がなく、毅然として、慈愛に満ちている。 スタートからしばらくは、どこか自信のない感じが隠しきれなかったものの、やがて彼女なりの意思が一手一手に現れるようになった。一音一音ひたすら正しい鍵盤に指を載せようとするような、素直で懸命な手だった。響いてくる音は途切れ途切れで、メロディーを紡ぐほどの技巧もなかったが、白い便箋に刻まれた一つの音は間違いなくリトル・アリョーヒンの鼓膜を震わせた。 |
こんなふうに音楽を奏でたい。味わいたい。
http://book.asahi.com/clip/TKY200901310125.html
猫を抱いて象と泳ぐ小川 洋子文藝春秋このアイテムの詳細を見る |