みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

猫を抱いて象と泳ぐ

2010年06月27日 | 
ここに描かれた世界、とても好き。
リトル・アリョーヒン、伝説的に美しいチェスの棋譜を残す少年の物語。
この本の良さをどうやったら伝えられるんだろう?

控えめで慎ましやかな登場人物たち、少年を温かく見守る師のまなざし、誠実さ、勇気、思いやり、思慮深さ・・・、様々な佳きものが調和して育まれた「美」。
博物館に所蔵された伝説の棋譜「ビショップの奇跡」はそれらの結晶なのだと思う。

チェスの棋譜に美や詩が宿るというのは、興味深く、なるほどと思う。
ピアノの演奏に、人柄やその人の心のありようが表れるのと同じように、チェスの指し手にも、人格が現れる。
およそ人間に関わるもので、美に無縁なものは一つもない。

特にお気に入りは、対局の場面。
試合は、勝ち負けを決することが目的ではなく、相手といい試合を創造するためのもの。
チェスで綴られた、息の合った二重奏を聴いているような感じ・・・。

少年の身体に不自由があるからこそ、心はかえって豊かに育まれる?
目の見えないピアニスト、音の聞こえない作曲家・・・、ついつい連想してしまう。

ピアノ好きの方には、強くお勧めできる作品です!
(ついついチェスをピアノに置き換えて読んでしまう。)
(終わりの方は、けっこう泣けたなあ・・・。)
(ショパンの小さなノクターンを弾いてみたくなる。)



「慌てるな、坊や」

少年は詩がどんなものかよく知らなかったが、アリョーヒンの棋譜から立ち上がる朝霧のような静けさ、風に震える花弁の可憐さ、一瞬を貫く稲光、大地を吠えさせる風のうねり、暗闇に浮かぶ月の孤独、などを詩と評するならば、詩というのものは素晴らしい宝石であるに違いないと確信した。

そこには確かに真正面からチェスに立ち向かってゆこうとする若々しい情熱があった。そしてそれを受け止めようとする温もりがあった。白の手は、平原を駆け回る野生動物の子供のように怖いもの知らずで、黒の手は、大地の奥深く掘られた巣穴で黙想する長老のように、どっしりとしていた。世界チャンピオン決定戦の名局に比べれば当然未熟であり、一手一手が結ぶメロディーはたどたどしかったが、決して耳障りではなかった。どんなに未熟でも、駒の奏でる響きに心打たれ、もっと美しい音を聞こうと耳を澄ませる、その息遣いが棋譜に染みこんでいた。

心の底から上手くいってる、と感じるのは、これで勝てると確信した時でも、相手がミスをした時でもない。相手の駒の力が、こっちの陣営でこだまして、僕の駒の音と響き合う時なんだ。そういう時、駒たちは僕が想像もしなかった音色で鳴り出す。その音色に耳を傾けていると、ああ、今、盤の上では正しいことが行われている、という気持ちになれるんだ。上手に説明できないけど・・・。

最強の手が最善とは限らない。

邪心がなく、毅然として、慈愛に満ちている。

スタートからしばらくは、どこか自信のない感じが隠しきれなかったものの、やがて彼女なりの意思が一手一手に現れるようになった。一音一音ひたすら正しい鍵盤に指を載せようとするような、素直で懸命な手だった。響いてくる音は途切れ途切れで、メロディーを紡ぐほどの技巧もなかったが、白い便箋に刻まれた一つの音は間違いなくリトル・アリョーヒンの鼓膜を震わせた。


こんなふうに音楽を奏でたい。味わいたい。

http://book.asahi.com/clip/TKY200901310125.html

猫を抱いて象と泳ぐ
小川 洋子
文藝春秋

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告白

2010年06月25日 | 雑記
と言っても、サッカーについてです。
このところ、世界中のブログで、ワールドカップについては、語り尽くされているはずで、何を今更!の感もあるけれど・・・。

デンマーク戦は、自分も見てました。
ただし、ロスタイムの2分間だけ。

目が覚めたら5時半頃だったかな?
何を思ったのか、これなら後半が全部見られるぞ!と喜ぶ。
前半、後半90分ずつだと思っていたのでした。(笑)

寝ぼけていたにせよ、何という常識のなさ!


あと、試合後の本田選手のインタビュー。
「思っていた以上に喜べない。」と冷静に答えていたのが印象的で、
あの冷静さが、並外れた集中力、チャンスをものにする力を生むんだなあと、納得。
彼なら、ひょっとするかも?と思ったり・・・。

http://www.sanspo.com/worldcup2010/news/100625/wcf1006250831003-n1.htm
(猛烈なるモシュコフスキー、発見!)(←あのね、そらみみ君・・・。(笑)
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●レッスン 嗚呼、憧れのルーマニアン・ダンスへ!

2010年06月21日 | ピアノレッスン
この日は夜、自転車走らせてレッスン。(6/22執筆)

・クラーマー=ビューロー60-2
×。
この曲は、左手小指に、たいへん負担がかかる。小指を無理にのばして支点にする形は、痛みが再発する鬼門の形。(実際は、もう再発してしまっているのだけど・・・。)
いくら曲が良いとはいえ、油断して練習し過ぎないように用心!用心!なのでした。

練習せずに、弾けるようにするのは難しい・・・。

右手の4→5の指使い、強弱をつけて、次回へ。

・バルトーク「ルーマニア民俗舞曲」BB68(RUMANIAN FOLK DANCES)
東欧民族系ピアノ曲の傑作、憧れのルーマニアン・ダンスに挑むことにする。
今回は、棒踊り、帯踊り、足踏み踊り、アルペンホーンの踊り(1~4曲迄)。
まだ体に馴染んでなくて、たどたどしく、つまづきながら。
リズム違い、アーティキュレーション違い、多数。
楽譜をよく見てたつもりだけど、こんなに見逃してたとは・・・。もっとよく見て!
問題は激奏系の5,6曲目。
このリズム! 血が沸き立つぜよ!

・ドビュッシー「月の光(Clair de Lune)」
まずまず。停止してるけれど・・・。
ソフトベダルを外すのは、指示どおり、tre corde ですよね・・・?

このところ蒸し暑く(オフィスもクールビズで暑い!)、ついに長袖を諦め、半袖に・・・。
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ミルクの勇気

2010年06月16日 | 名古屋日記
本日、午前休にて、所用を片付ける。
半ば休日気分で、油断してしまったせいか、時間がなくなってしまう。
やむなく、お昼はベーカリーで済ますことに・・・。

それで、注文したドリンクはミルク。
白くて冷たいミルク。
この暑い時期、ふつうは、アイスコーヒーかアイスティーなんだろうけど、仕事の時は、ついつい栄養面を重視してしまうのでした・・・。
(自販機では、缶コーヒーは買えるけれども、ミルクは買えないと言うこともあるし)

でも、自分以外でミルクを頼んでる人って、今までに、一度も見たことがないなあ・・・。
いったいミルクを頼む人って、1日で何人ぐらいいるのかな???
なぜミルクは人気がないんだろう?
ミルク愛好家としては、ついつい考えてしまうのでした・・・。(止せばいいのに・・・。)

・説1:後口が悪いから
・説2:人目を気にして。大の大人がミルクなんて・・・。子供っぽく見えてしまうから
・説3:ミルクよりもコーヒーや紅茶の方が美味しいから

もし、そうなら、
・説1 → ベーカリーでドリンクバーってできないかな?
・説2 → カップを透明なものから、不透明なものに変更する?
・説3 → 特濃ミルクや、飲むヨーグルトの、もっと美味しい白い飲み物を増やす?

など、ミルクを応援するための方策を、とりとめもなく仮説検証してしまうけど、詮なきことですね・・・。

そうそう、ミルクと言えば、あの銀河鉄道999を忘れるわけにはいかない。
主人公、星野鉄郎が、酒場でミルクを頼む場面があったけど、あれは実に天晴れな行為だった。

http://hp.kutikomi.net/7356/?n=page54

鉄郎の勇気に敬意を表して、これからも、俄然、ミルク派でいくことにする。

あと、ミルクホールが、気になるのは、何故?
いつかは、いざ鎌倉のミルクホールへ!
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前向きになる英語表現その1

2010年06月14日 | 雑記
一応、今年は、気持ちを入れ替え、NHKの英語講座を聴いているのだけど、
英語5分間トレーニング」という番組、
この放送の終わり際に流れる一言が、なんだかいいのだ。

なんというか、アメリカ的前向き志向!
日本語だと、ん~今ひとつだな、と言うメッセージが、英語だと、さまになるなあ。

例えば、今月だとこんな感じ。

You won't improve without daily practice.
毎日練習しなければ上達しないのです。

Your effort will be rewarded soon.
あなたの努力はやがて報われるのです。

Never say,"Too busy to practice."
「忙しすぎて練習できない」と決して言わないでください。

Daily effort always pays off.
日々の努力は必ず報われるのです。

It's important to practice now.
今、練習することが大切なのです。

Improvement comes with daily effort.
日々努力するから上達するのです。


ピアノの練習にも、あてはまる!

(写真)南天は花も好き。
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●レッスン クラーマーは楽しい!

2010年06月07日 | ピアノレッスン
またしても、思い出し綴りです。(6/10執筆)
最近、ノルマのレッスン記録も、遅れがちで、いかんなあ・・・。

・クラーマー=ビューロー60-1
◎。予想外の合格!褒められて、喜ぶ。
前回、持って行ってから1ヶ月ぶり。
なんというか愉快で魅力的な曲なので、ついつい練習してしまうのでした。
クラーマー・マジック?に、すぐ乗せられてしまう、お調子者のそらみみで・・・。

この1番、左手のとてもいい練習になるなあ。
自分は、どうも左手が、指が弱い分、手首でカバーして弾いてしまうのです。
(=右手に比べて、左手の手首が上下にぶれる!)
今回、なるべく、左手が右手と同じフォームで、バシっと弾けるように心がける。

クラーマーは、ツェルニーよりも、音楽性があって、楽しい感じがする。
ピアノ会で弾いてみようかな?


・ドビュッシー「月の光(Clair de Lune)」
クラーマーの好調とは裏腹に、ダメダメ・・・。
 ・オクターブ違いで弾いてる箇所1カ所
 ・テンポの大幅なズレ1カ所
 ・上の音が出てないとこころ
などなど・・・。
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