みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

対岸の彼女

2008年06月28日 | 
いい話だった。
別々に語られる女子高生2人と物語と、30代女性2人の友情の物語。
2つの物語が謎解きが明かされるように、少しずつ近づいて、最後に1つに繋がる。川の向こうの対岸の彼女として繋がる。心憎い展開。いろんな事件や思いが共鳴しあっておりました。

本作、心からの友を持つことの難しさと、素晴らしさがテーマだろうか。難しいが故により輝きを増す・・・。
登場人物のほとんどは女性。完全に男はおまけ。
とはいえ、性別を超えて、友情はよきものかな。

はじめの何十ページは、話に乗っていけず、これは、途中で投げ出すかも?と思ったけど、ある台詞がぐっときて、惹き込まれてしまう。

ひとりぼっち恐怖症?、子供に友達ができないことを気に病む小夜子へ、葵が発する言葉
「私はさ、まわりに子どもがいないから、成長過程に及ぼす影響とかそういうのはわかんない、けどさ、ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね」

作者の角田光代さん、自身、バックパッカーで世界を巡り歩かれているだけあって、時折、現れる旅について語られる思いには唸らされる。海や川などの自然描写が素敵で、旅の経験の賜物なんだろうな・・・。

登場人物たち、皆、いろいろな問題を抱えているけど、問題にまっすぐ向き合っている姿勢はよいなあと思う。特に小夜子。
いじめ、不登校、公園デビュー、ママさん同士の付き合い、職場での人間関係・・・。嗚呼、ほんとうに、実はどうでもいい付き合いに、人(特に女性たち)はなんで、こうもエネルギーを使わないといけないんだろう・・・。



自分がやりたかったのはこういうことだった。(中略)
へとへとになるまで働き続け、その日の終わりに疲れたねと笑顔でだれかと言い合うこと

小夜子はようやくわかった気がした。なぜ私たちは年齢を重ねるのか。
生活に逃げ込んでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。
出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。

けっこうもらい泣き、してしまったな・・・。
このところ、どうも涙脆くて困る・・・。

対岸の彼女 (文春文庫 か 32-5)
角田 光代
文藝春秋

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