誰だって課題はあるさ。舞台に上がるってことが目標の人もいれば、わずか数行のセリフを間違えず言うなんてことが課題の人もいる。いいんだよ、それだって、とっても大切なことだ。役者としてワンランクアップを目指して欲しい、スターとして揺るぎない位置をつかんで欲しい、リードする僕としても望みは尽きない。
なんで演劇やるか、そりゃ限られた実人生から飛翔して、多彩な人生を生きたいってことじゃないの。舞台の上とはいえ、それまでの自分を離れ、縁もゆかりもない生き様に没頭する、その快感、充実感、これだよ。
だから、歩んで来た道大きくはみ出して、ホステスだよ、キャバレーのママだよ、バンマスだよ、エロ親父だよ。役者としての力を上げて欲しかったんだ、今回の作品で。楽しんで欲しかったんだ、別人生を。
大方の人は、大いに役と遊んでくれたようだ。打ち上げの時の感想にも、やったね!感があふれていた。まだまだ、僕から見ればきれいごと、水商売の女たちの疲れや澱みや汚れ、そういったものは演じきれていなかった。とは言っても、とことんシリアスに裏人生を追及するって話しじゃないから、これくらいの手触りでよかったとも思う。お客さんもそこまでは求めていないと思うしね。
中には、ミスキャストだと思った、と役への違和感を語った人もいた。母親と慕う若い娘を過酷に裏切る詐欺師の役だった。優しさから鬼の形相へ、難しい役だった。一瞬にして酷薄な詐欺師に豹変する場面、まさに役者としての力量の見せ所になるはずだったが、どうしてもそのギャップを飛び越えることができなかった。もともと力のある人だったから、さらに大きく一歩を踏み出して欲しかったのだが、結局自分の持ち味で演じ通してしまった。それはそれで訴えるものはあったのだけど、せっかくの役者としての飛躍の機会をつかめなかったのは、残念だったなぁ。
逆に、夢破れた若手ダンサー
と詐欺師を演じた人は、根っからの生真面目さを、そう元教師だから、必死で越えようと頑張って、稽古初めとはまったく別人になりおおせていた。60数年の真っすぐ人生から抜け出すのは容易なことじゃなくて、まだまだぎこちなさが透けて見えるけど、新しい役への意欲はひしひしと伝わってきた。
主役の茉莉役を演じたヒロコさんも、台本をもらった時、これは僕からの挑戦なんだ!負けるもんか!って思ったと語ってくれた。殺してやりたいとも口走ったが、それは多分酔いが言わせた愛情表現なんだろう。
乗り越えていく意欲なんだよ。自分を超える決意なんだ。今の自分に甘んじない。もっとできる、もっと、上手くなる、もっと若くなる!この心意気が大切なんだと思う。いや、それはシニアだけのことじゃないな。誰だってそうだ。自分はまだ開発途上、どこまでだって成長できる、そう信じてぶつかる、そんな生き方、せめて菜の花座のメンバーには持ち続けて欲しいもんだなぁ。もちろん、僕だって、これからだ!
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