前回公演『異聞・巷説「安寿と厨子王」』は中世もの。衣装、道具にはとんでもなく苦労したが、今回の『流れ旅 真っ赤な夕日も』も負けちゃいないぜ。戦中の満州だからな。
戦地慰問の旅一座、って設定、どうしたって、軍人・兵隊は出て来るさ。でも、できるだけその人数は絞りたかった。だってなぁ、生きのいい男たち少ないもの、ってのが、本心だったが、いざ、制作にかかってみて、その決断大正解だったってことがわかった。
まず、軍服が手に入らない!小銃、拳銃、雑嚢なんかの小道具類も作らにゃならんってことがわかったんだ。中でも軍服、将校と兵士で違うものだし、夏物、冬物の違いもある。足元にも悩む。兵士のものは、舞台監督さんが、ネットオークションに張り付いてなんとか人数分手に入れてくれた。同じもの揃えるなんて無理、似たようなもので代替えすることになった。将校さんの方は、それっぽい古着を手直しいするってことで、解決。ただ、あの高いスタンドカラーと襟章てのがなかなかねぇ、難問だぜ。
一座の役者たちの衣装だって、一筋縄じゃいかない。慰問団って言ったって、そこは芸人さんたちだ。時局反映の地味な着物にもんぺ姿ってわけにはいかない。それなりに戦地を思わせつつ、華やかな匂いもそこはかとなく漂わせないとね。舞台衣装として使うチャイナドレスは仮装用のものが安く手に入った。最近の仮装ブームは、この点、大いに助かるね。
小道具じゃ、各自が背負うリュックとか、乾杯に使うアルマイト製のカップとか、いずれも今時のものとは似ていて非なるもの、これも集め方に苦労している。担当の衣装さん、道具さんの悩みは、稽古のたんびに漏れ聞こえて来る。ダメ出しを続けるこっちが、まるで鬼のような存在になってるかもな。
台本が渡ったころにゃ、こんなもんできるのか?と、半信半疑どころか、無理無理無理!の不可能に思われたものたちが、しだいしだいに揃っていく。そして、実力をはるか背伸びした歴史ものも上演可能になっていく。これ、もう、すべてスタッフさんの頑張りだな。こうやって、一つ一つ課題、難問を解決しなかせら、劇団の力ってものも付いて行くわけなんだ。
で、作者は好きなものを身勝手に書き散らせるってことになる。ありがたや!スタッフ様。