ステージおきたま

無農薬百姓33年
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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

感動スペクタクル:CIRQUE DU SOLEIL "ZED"

2009-12-28 18:06:26 | 演劇

 まさかね、まさかこんな感動のステージに出会えるなんて!!たまたまだったんだ。偶然だったんだ。何の因果かディズニーランドなんかに付き合わなくちゃなんなくて、それも丸1日!勘弁だぁぁぁ!助けてくれぇぇ!ってあちこち探ってみたら、、あれっ、CIRQUE DU SOLEILってディズニーランドの隣でやってんだぁ、よし、それじゃこっちに決まり!ってことで見ることになった。

 前から一度は見てみたいとは思っていたけど、すでにCSテレビなんかで何度か覗いていたんで、まっ、念のため、ディズニーランドのちゃちな作り物よりはマシでしょ。なんたって生身の身体だから。ってくらいの軽い気持ちで特設シアターに入った。

 おおーっと、これはちょっと行けるかも?!中央の円形舞台もその上に高々と広がる球形のドームも巨大な布で覆われている。なになにこれが一気に飛んで始まりってわけね。いいよ、良い雰囲気だし、スケールがどでかい。

 クラウンのお客いじりなんかあっていよいよ開幕!おっと、本の中に道化たちがのめり込んだぞ、と思ったら、なんと、全面を覆っていた布が一気に円形舞台の奈落へ吸い込まれていくじゃないか。その滑らかな動き。布が一匹の生き物のよう。圧巻!見る側も地の底に、異次元世界に引きづり込まれるような感じだ。そして、地底からわき上がってきたかのような裸身の男たちが激しく叩き付けるロープと棒を使った演技。うわっ、もうここまでで降参!涙がぐいっとこみ上げてきた。

 もちろん、鍛えに鍛えた肉体と、ぎりぎり研ぎ澄まされた練達の技と、寸秒も違わぬチームワーク、どれ一つ取ったって、感動しないものはない。肉体の可能性の極限にただただ感嘆の連続、拍手のし続けだった。

 でも、それ以上に感動したのは、まず各シーンの美しさ、スペクタクルの壮大さだった。ドームの鉄骨の骨組みを巧みに使い、ちょうどビルの組み立て現場の足場すべてを背景の舞台にしてしまっていた。中央のステージはあちらが落ち込み、こちらがくぼみ、そして中央は浮き上がり沈み込み、飲み込み吐き出し、まるで舞台そのものが地底の生き物であるかのようだった。天空からは時に優雅に、時に躍動的に演者たちが舞い降り、客席の上を縦横に空翔る。さらには、爆裂、さらに、松明の火が駆けめぐる。まさしく、巨大な祝祭と呼ぶにふさわしい空間が随所に現出した。

 常設劇場の持ち味を生かして、マニアックな仕掛けがたくさんあったのも、おお、よいよい!やるではないか!!まさに、僕好み!どうだ、これでもか!とばかりに外連の連続。もう嬉しくてゾクゾクしてくる。さらに照明の見事さ。ああ、こんなに変幻自在に空間を、物語を操れる光の手練手管!照明の動きだけ追うためにもう一度見てみたいって思ったほどだった。

 そして、それらすべてを見事に盛り上げたのが、音楽!これが一番素晴らしい!!重く激しいパーカッションに乗って異国情緒たっぷりの旋律が演者たちのアクトを妖しく彩っていた。そう、このブログのお奨めの一枚『こんな音楽を聴いてきた』で紹介したLoreena Mckennittの世界そのもの。いや、その美しさに原初的な躍動感がさらに加わって、身体の周囲全体から激しくけしかけられているような感じだった。どんだけ感動したかって、見終わってすぐにCD買ってしまったくらいだもの。しかも、音楽だけ聴いても、まったく飽きない。今朝からずっと聞き続けている。これって凄いことなんだ。映画のサウンドトラックなんかで、映画見て感動してつい買ったCDが、後で聴くと物足りないって経験、何度もあった。もちろん、生演奏だ。(と言ってもかぶせている部分も大きいけどね。)そして、ミュージシャンも役者の一人として様々な場面で、いろん空間に出現してシーンの大切な要素を担っていた。

 要するに演出なんだよ。演者の技は素晴らしい。でも、それはもうすでに何度も見たことのあるものだ。申し訳ないけど、見慣れてしまっているんだ。空中高く張られたロープの上での宙返りなんかも、凄い、確かに凄い、だけど、うん、それ見たことあるって感じ逃れられないんだ。ごめんなさい。神業に近い熟達の演技だって言うのに。

 最後のクライマックス空中ブランコも同じ。ブランコを左右2台ずつにして6人もの乗り手が次ぎ次に飛び越し、飛び違う。躍動感も高くスリリングな味わいもより深く作れていた。でも、あのシーンがあそこまで盛り上がったのは、奥の鉄骨に乗って演奏していた音楽家たちの激しく煽るような音楽と、手拍子の催促、こんな演出があったからだと思う。

 その他のシーンも同じことだ。演出家の見事なシーン作りがあって、初めて演者たちの見事な肉体と極限の技が浮き立った。筋肉ショーでも、アクロバット見せ物でもない、見事な芸術として彼らの肉体と技があの夢幻空間を形作った。見事な演出だったと思う。

 

コメント (2)
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