泡 盛 日 記

演劇人(役者・演出家)丹下一の日記です。

プロジェクト・ムー「プラスチック・ローズ」

2024-06-22 12:51:01 | 丹下一の泡盛日記
金曜日、小雨の中を朝一番で野暮用へ。気圧が低いと頭も重い。血圧も上がっている。
戻ってひたすら事務仕事。机の上が片付いてきたのでお昼寝。目覚めてすっきり。お昼寝、正解。

神楽坂の箪笥ホールへ。ボートシアターメンバーと合流して東京公演の下見。
大抵の公共のホールと同じで、ここも音楽や合唱を前提とした音響設計と思われるお風呂場のような響き。舞台上には巨大な反響版が折りたたまれている。
仕方ない。ほとんどの場合、日本の「多目的」の設計者は「演劇」を知らない。
遊行寺の使用では通用しないので、発声の方法を変えつつ、場所も移動して演出の吉岡さんにチェックしてもらう。
その後神楽坂の様変わりに驚きつつ、素敵なお蕎麦屋さんでたぬきそばをかっ込んで小滝橋のプロトシアターへ。
この道を40年くらい歩いているのだけど、ほとんど変わっていない。。。
プロジェクト・ムー公演「プラスチック・ローズ」。言わずと知れた太田省吾の作品。初演は「裸足のフーガ」と言うタイトルだった。
素敵な舞台だった。
転形劇場の舞台では見逃していたのだけど、実は太田省吾もベケットを強く意識していたことを再認識。
削られて選ばれた「ことば」たち。そして、即興を想像させつつも外枠の演出の視座の揺るぎなさが成立させている美しい場面が続く。
プロト・シアターという場で、こういう作業を高い水準で成立させている人々がいること、そしてその中心に宗方駿さんがいることが本当に嬉しい。
満員の客席にはこの瞬間に立ち会おうと様々な重鎮も。そしてもっと若い人たちにも見てもらいたいと切に思う。
「わかりやすい」のがいい、などと言っているうちに観客として「わかりやすい」のではなく、自分たちの思考回路が浅く短絡的にされてきたのではないか。
「商品」ではない「難しい」回路を読み込み、ときほぐす作業を重ねた「作品」を作り続けてきた(続けている)人たちがいるからこそ、ある時代には、それをスライドさせて「商品化」できたので。
終演後、本当にお久しぶりの女優のM屋さん、この初演に出演されていた、と話す。彼女とは30年ほど前の「古事記」のシリーズの初演でご一緒して、その後彼女の演出作品の舞台監督も。もう30年経ってしまったのだった。
旧知の演出家で俳優の岡本章さんと一緒に帰る。歩きながら、池袋までの電車の中、ただただ演劇の話に集中できるのが嬉しい。
そんなクールダウンが必要な舞台だった。
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