Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

風格と鉄壁

2015年07月05日 | 映画など

是枝裕和監督「海街diary」を見る。

吉田秋生の同名漫画の映画化。

驚いた。おそらくこれ以上ない、と思わせるほどの完成度。

ある意味、日本映画の最良の部分が見られるというか、

名作の風格すら漂う。是枝監督は今後、名匠とか言われそう。

 

鎌倉の古い家屋に住む3姉妹が、

別に家族を作って離れて暮らしていた父親の葬儀に参加。

そこで初めて会った腹違いの妹を引き取り、

以後、四姉妹として生きていく姿を追いかける。

 

生きていくということは、食べることであり、

しらす丼やアジフライ、梅酒など、主人公たちはよく食べて、飲む。

そのたびに「これ美味しい!」と感動したりはしゃいだり。

そんなちょっとした日常を撮ることに腐心する映画というか。

 

さらに生きていくということは、

その真逆の概念である「死」を意識することであり、

父親や祖母といった死者の存在が、

主人公たちに大きな影響を与えている。

法事や葬儀の場面が何度も出てくるし、

死者は生者と共に存在し、生者を見守っているという描き方。

鎌倉というロケーションが最大限に生きていると思う。

 

お寺や古い家屋。山と坂道。ローカルな電車。そして海岸。

主人公たちは歩いたり登ったり、海岸に佇んだり、

人気のない駅のベンチにすわったり、自転車で桜の咲く道を駆け抜けたりする。

ただそれだけのことなのに、見て飽きることがない。

 

綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの四姉妹は、

ほぼパーフェクトなキャスティングだと思う。

綾瀬はるかの少し無理をしながら生きている長女も、

長澤まさみの少し自堕落で、それでいて心根は優しい次女も、

夏帆の少し三枚目だけど、明るく前向きな三女も、適材適所。

 

風格という意味で言えば、綾瀬はるかの堂々とした存在感に驚く。

こんなにきっちりとした演技をする人だったのかと。

山本富士子とか司葉子とか、かつての大女優に似た雰囲気すら漂う。

 

末の妹を演じた広瀬すず。芸能界を代表するような女優さんたちに囲まれて、

さぞかしハードルの高い演技を求められたと想像するけれど、

緊張した面持ちと硬質な演技がまた、頑なな心を持つ役に合っているというか、

おそらく一生に一回しかできない演技かもと思ったりする。

映画はこの新人を、とにかく可愛く撮ることだけに

専念しているようなところもあって、世界中のシネフィルは喜んでおります。

 

脇を固める樹木希林、加瀬亮、風吹ジュン、

リリー・フランキーなども鉄壁の布陣でしょう。

特に、別れて暮らす母親を演じた大竹しのぶ。

いい加減で依存的だけど、娘たちへの愛情も

しっかり持っている母親を演じて、さすがだなと。

あと、すずのサッカー仲間・風太を演じた前田旺志郎くん。

まだ声変わりもしていないような少年なのだけど、

江ノ電の駅のベンチで、すずを励ますシーンが素晴らしい。

 

 

 

 

 

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