鈴木則文監督が亡くなったという。
享年80。そうなのか。いつ亡くなってもおかしくない
年齢だったのかと。
則文監督と言えば、
なんといっても「トラック野郎」だろう。
エネルギッシュで下品で、すこぶる面白いシリーズなのは
周知の通りだけど、近年とみに評価が高く、
関連書籍もたくさん出ているほどで、則文監督のステータスもうなぎ登りだった。
「徳川セックス禁止令 色情大名」「エロ将軍と二十一人の愛妾」といった、
東映ポルノ路線の代表的存在だったことも、今ではリスペクトの対象となっている。
ただ、それは本当にここ10年ぐらいの評価であり、
もっと早く評価すべき監督だったと思う。
ヒット作をたくさん手がけた監督だったけど、現役当時、評論家筋には
まったく無視されていたと思う。リアルタイムで評価していたのは蓮實重彦ぐらいだったような。
ともあれ、面白い映画をたくさん撮ってくれた監督で、
個人的には、藤純子の任侠シリーズ「緋牡丹博徒」の産みの親(脚本)として、
則文監督の名前は決して忘れることは、ない。
加藤泰監督の「お竜参上」「花札勝負」も名作だけど、
本人が監督した「一宿一飯」も、お竜さんが背中の緋牡丹の刺青を露わにして、
女の幸せを犠牲にして渡世に賭けようとする、
そのシーンの美しさ、そして哀しさ。絶品でした。
皮肉だけど、亡くなったことで、
今後さらに評価が高まることだろう。
生前、監督と呼ばれることすら嫌がって、
俺は裏方だからと言ってはばからなかったと聞く。
そんな則文監督、今ごろ、天国で苦笑しているかもしれないな。
映画は楽しければいい。馬鹿だなあと笑ってそれでいいんだけどなあ、と。
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