クリストファー・ノーラン監督
「オッペンハイマー」を見る。
原爆の父と呼ばれた物理学者、
ロバート・オッパンハイマーを描いた3時間の大作。
オスカー総ナメという話題も相まって、
いろんな感想や分析が飛び交っているようで。
オッペンハイマーの経歴や功績、
人間関係はもとより性癖とか、
頭の中味にいたるまで微に入り細にわたって
描くのはこういう手法しかないのかもしれない。
とにかく映画の語り口は破天荒きわまりなく、
時制や時空を錯綜させながら、
矢継ぎ早に物語を走らせていく。それでも3時間ある。
観客はどんどん置いていかれ、
もちろん自分もそのひとりというか。
でも、そこに不快感はない。
ざっくりとでも、オッペンハイマーという人のことがわかり、
彼の人間性も、科学者としての能力も時代背景も。
なんというものを作ってしまったんだという
悔恨の思いも伝わってくる。
さらにもう一人、主役がいるのも驚く。
ロバート・ダウニー・Jr演じる
原子力委員会の委員長ストローズだ。
オッペンハイマーに嫉妬し、
彼をおとしめようとするくだりが
やたらに長い。というか、しつこい。
一体誰が主役なの? と観客は戸惑うにちがいない。
靴売りから成り上がったこの人物の偏狭な性格が、
錯綜しまくりの映画に暗い影を落とす。
共産主義者を追及する赤狩りが
大きく扱われるところからも、本作はやっぱり
アメリカの戦後を描いた映画なんだなと確信する。
なぜ、ちゃんと広島と長崎の被爆の状況を写さないんだ。
オッペンハイマーの苦悩ばかり強調して
原爆を落としたことを
あんまり反省してないんじゃないの。
という指摘はさほど的を射ていないが、
唯一の被爆国に生まれた身としては、
そうした意見というか批判はあってもいいと思う。
キャストはものすごく豪華だなあと。
エミリー・ワトソンにマット・デイモン
ラミ・マレック、ケネス・ブラナー、ジョシュ・ハートネット、
マシュー・モディーン、ゲイリー・オールドマン。すげえ。
フローレンス・ピュー、こんな役でいいの? とか。
トム・コンティがアインシュタインだったのも驚く。
みなさん、役と映画の中にいい意味で埋没していて、
役者っぽくないところが素晴らしい。
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