今泉力哉監督「アンダーカレント」を見る。
心の奥底に流れるものを、いかに映画として見せるか。
銭湯、川、湖、池、そして海。
水のイメージが映画を支配していき、
いつのまにか、水中で息を潜め、
スクリーンを見つめているような感覚になっていたという。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/c2/739f79965a641cd281da23f403d45069.jpg)
銭湯を営むかなえ(真木よう子)は、
夫の悟(永山瑛太)が突然失踪したあとも、
淡々と仕事を続けていたある日、
組合の紹介で堀という男(井浦新)が従業員となる。
お互い黙して語らずというか、
必要最低限の会話にとどめながら、
浴槽のタイルにブラシをかけ、薪を焚く。
何事も起こらなそうな日常のなかに、
ときおり湯船に浮遊するかなえのショットが
インサートされる。そのたゆたう姿は何を意味するのか。
主人公たちと同じく、
映画自体も黙して語らずで、
かなえや悟の足元を流れる川のショットが
頻繁に写し出されるのを見て、
そうかこの川の中に全てが埋まっているのか、
と思ったら、水の奥底に引き込まれそうな気分に。
そんなかなえの前に、俗っぽくも
リアルな立ち位置の探偵が現れ、
失踪した夫の行方を追いつつ、
彼女の閉じた心をノックしていく。
探偵を演じるリリー・フランキーはまさに適役というか。
こういう人物を演じさせると、実にいい味を出す。
心を水の奥底に沈めていたら、
ときおり水面に上がらないと
息継ぎができないだろうに。
そんな人間たちの静かなもがきを
なんとか映画に捉えようとする作り手たちの
美意識のようなものにどっぷり浸かった143分。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます