Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

見えないものを見ようとして

2023年11月16日 | 映画など
今泉力哉監督「アンダーカレント」を見る。
心の奥底に流れるものを、いかに映画として見せるか。
銭湯、川、湖、池、そして海。
水のイメージが映画を支配していき、
いつのまにか、水中で息を潜め、
スクリーンを見つめているような感覚になっていたという。


銭湯を営むかなえ(真木よう子)は、
夫の悟(永山瑛太)が突然失踪したあとも、
淡々と仕事を続けていたある日、
組合の紹介で堀という男(井浦新)が従業員となる。
お互い黙して語らずというか、
必要最低限の会話にとどめながら、
浴槽のタイルにブラシをかけ、薪を焚く。

何事も起こらなそうな日常のなかに、
ときおり湯船に浮遊するかなえのショットが
インサートされる。そのたゆたう姿は何を意味するのか。

主人公たちと同じく、
映画自体も黙して語らずで、
かなえや悟の足元を流れる川のショットが
頻繁に写し出されるのを見て、
そうかこの川の中に全てが埋まっているのか、
と思ったら、水の奥底に引き込まれそうな気分に。

そんなかなえの前に、俗っぽくも
リアルな立ち位置の探偵が現れ、
失踪した夫の行方を追いつつ、
彼女の閉じた心をノックしていく。
探偵を演じるリリー・フランキーはまさに適役というか。
こういう人物を演じさせると、実にいい味を出す。

心を水の奥底に沈めていたら、
ときおり水面に上がらないと
息継ぎができないだろうに。
そんな人間たちの静かなもがきを
なんとか映画に捉えようとする作り手たちの
美意識のようなものにどっぷり浸かった143分。

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