Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

息を吸って吐いて

2024年03月13日 | 映画など
三宅唱監督「夜明けのすべて」を見る。
シネフィルは息を吸うように映画を見るので、
ときには咳き込んだり、呼吸困難になったりする映画が
少なくないなか、本作はその良さが
じわじわと染みこんでくるような。
つまりは心と身体にやさしい映画だったという。


上白石萌音演じる藤沢さんは、
PMS(生理前症候群)を抱えていて、
自分を抑えきれず、感情を爆発させ、
勤務先でまともに働けなくなってしまう。
松村北斗演じる山添くんは、パニック障害を患い、
大手企業の正社員を辞めざるを得なくなる。

そんなふたりが転職した先が
子供用の天体望遠鏡を作ったり
学校でプラネタリウム公開を運営する小さな会社。

映画自体がやさしさに包まれている。

生きづらさを抱えているふたりが
お互いの距離を少しだけ詰めて、
それでいて適度な距離感を保つ関係性。
ふたりを見守る会社の人たちのさりげない温かさ。

お菓子を持ち回りで買って、
社員のみんなに配るエピソードが繰り返されるが、
小さめの会社によくありそうというか、
たい焼きとかケーキとか、ちょっとした甘いものを
交換しあう、ほどほどのやさしさが滲みる。
光石研演じる社長も、渋川清彦演じる山添くんの元上司も、
自身に起きた悲劇への悔恨をぐっと堪え、
若い藤沢さんと山添くんの幸せを願い、未来を託す。
大人というものは、こうでなくちゃ、と思う。

上白石萌音と松村北斗といえば、
朝ドラ「カムカムエブリバディ」のコンビであり、
見る人はおそらく、ふたりの仲が
進展するのを期待すると思うのだけど、
残念ながらそういう映画ではないのです。
そこが、たまらなく、いい。

16ミリフィルムで撮られたという
画面の質感が、あたたかみを増し、
忘れがたい映画になっていると思う。
三宅監督、前作「ケイコ 目を澄ませて」に続き、
ゆっくり深呼吸ができる映画を見せてくれました。

コメント
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