Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

まやかしの人生

2020年06月12日 | 日々、徒然に

「風と共に去りぬ」が人種問題について無自覚なのは

致し方ないとは思うけれど、かつての手塚マンガみたいに

制作されたのは●年でうんぬん、とお断りを入れて、

普通に上映や配信がされるべきだと思う。

 

 

で、思い出したのが

ダグラス・サーク監督が1959年に撮った

「悲しみは空の彼方に」という映画。

主演はラナ・ターナーで、シングルマザーの彼女が

女優としてのし上がっていく波瀾万丈の物語なのだけど、

脇役として、彼女に仕える黒人女性のメイドが登場する。

そのメイドはたいへん奥ゆかしい性格で従順。そっと主人公を支える役どころ。

「風と共に去りぬ」のメイドとは正反対の性格だけれど、

これも白人から見たステロタイプなのだろう。

 

この映画がすごいのは、このメイドがあくまで主人公に

地味に寄り添っている存在だと思ったら、

いつのまにか映画をジャックして、主役に踊り出るところだ。

差別や偏見を一身に背負っているにもかかわらず、

その怒りと悲しみをどこにも出さずに人生を全うしようとする。

なんともいえない負のパワーが見る者を圧倒する。

そして、本来主人公であるはずのラナ・ターナーを脇に追いやり、

原題「Imitation Of Life」が示すとおり、

女優として成り上がっていく主人公こそ、

まやかしの人生であることを告発するのだ。

 

本作でメイドを演じたファニタ・ムーアも

アカデミー助演女優賞にノミネートされたが受賞は逃している。

 

その20年前、「風と共に去りぬ」でオスカーを得た

ハティ・マグダニエルは、アカデミーの授賞式で

ヴィヴィアン・リーやクラーク・ゲーブルと

同じテーブルにつくことは許されず、オスカーを授与される直前まで

壁際で待たされたというエピソードがある。

オスカーを得たことは確かに快挙だけれど、

必ずしも彼女のキャリアアップに貢献したとは言えず、

以後、同じようなメイドの役ばかり演じさせられたという。

亡くなったのは52年。オスカー受賞から12年後のことだった。

 

ファニタ・ムーアは2014年まで長生きして、

99歳の人生を全うしている。彼女はどう生き、どう戦ったのか。

ハティの人生と共に興味が惹かれるところだ。

 

 

コメント
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