HIKARI監督「37 Seconds」を見る。
タイトルの「37秒」とは、生まれたときに37秒間
呼吸ができなかったせいで、脳性麻痺となり、
障害者として生きることになった主人公のことを指している。
ただ、障害というテーマは重要ではあるけれど、
誰にでも降りかかる自分探しの旅が、
文字通りロードムービーになっていくところに、
大きく心が揺り動かされ、
ああ映画を見たなあという感慨に耽るのでした。
障害者で女性。しかも性にまつわる問題が出てくる。
だからといって赤裸々にタブーに挑戦、という作りではない。
過保護で共依存な母親による呪縛。漫画家としての力はあるのに
不当に搾取されてどん詰まりになってしまう。
でも、声高に差別を告発するわけでもない。
主人公は悲しそうな表情はするけれど、涙を流して泣くことはなく、
涙を流すのは、主人公ではない周りの人たちだ。
主人公が自分を縛っていたものから抜け出すまでは、
見ていてそれはそれは辛いのだけど、
別れた父親を探すために、介護士の青年と一緒に
クルマで海沿いの街に向かうところから、
俄然、映画が動き出す。
閉塞感からの解放だろうか。それとも移動の快感か。
そして生き別れになった双子の姉に会いに
タイに飛ぶ主人公たちの姿を見ていたら、思わず号泣していたという。
主人公を演じた佳山明はもちろん好演だけど、
クライマックスで彼女に同行する介護士の青年を演じた
大東駿介が実にいい役だし、主人公を受け入れる風俗嬢の渡辺真紀子、
姉を演じた芋生悠、過保護な母親役の神野三鈴、
ワンポイント出演の渋川清彦や石橋静河、
尾美としのりなど、俳優陣が揃って素晴らしい。
ぜひ多くの人に見てもらいたい。きっと愛される映画になる。