Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

旅の終わりと始まり

2020年06月07日 | 映画など

HIKARI監督「37 Seconds」を見る。

タイトルの「37秒」とは、生まれたときに37秒間

呼吸ができなかったせいで、脳性麻痺となり、

障害者として生きることになった主人公のことを指している。

ただ、障害というテーマは重要ではあるけれど、

誰にでも降りかかる自分探しの旅が、

文字通りロードムービーになっていくところに、

大きく心が揺り動かされ、

ああ映画を見たなあという感慨に耽るのでした。

 

 

障害者で女性。しかも性にまつわる問題が出てくる。

だからといって赤裸々にタブーに挑戦、という作りではない。

過保護で共依存な母親による呪縛。漫画家としての力はあるのに

不当に搾取されてどん詰まりになってしまう。

でも、声高に差別を告発するわけでもない。

主人公は悲しそうな表情はするけれど、涙を流して泣くことはなく、

涙を流すのは、主人公ではない周りの人たちだ。

 

主人公が自分を縛っていたものから抜け出すまでは、

見ていてそれはそれは辛いのだけど、

別れた父親を探すために、介護士の青年と一緒に

クルマで海沿いの街に向かうところから、

俄然、映画が動き出す。

閉塞感からの解放だろうか。それとも移動の快感か。

そして生き別れになった双子の姉に会いに

タイに飛ぶ主人公たちの姿を見ていたら、思わず号泣していたという。

 

主人公を演じた佳山明はもちろん好演だけど、

クライマックスで彼女に同行する介護士の青年を演じた

大東駿介が実にいい役だし、主人公を受け入れる風俗嬢の渡辺真紀子、

姉を演じた芋生悠、過保護な母親役の神野三鈴、

ワンポイント出演の渋川清彦や石橋静河、

尾美としのりなど、俳優陣が揃って素晴らしい。

ぜひ多くの人に見てもらいたい。きっと愛される映画になる。

コメント (7)
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