是枝裕和監督「三度目の殺人」を見る。
映画を見ているあいだ、
人間、他人のことって
理解できるんだろうか、と思っていた。
理解できそうなときもあれば、まったく理解不能なときもあり、
それは振り子のように、行ったり来たり。
まさにそんな映画だなあ、と。
映画に出てくる登場人物って、
たいてい、性格が一定している。
たとえば、この人は悪人だとか、善人だとか。
あるいは、お人好しだけど噂好きとか、威勢はいいけど小心者、とか、
せいぜい二面性を持たせるのが精一杯というか、
そうしないと物語を進められないと思うし、
何よりも観客が不安に駆られてしまう。
だけど、たまに登場人物が
何を考えているかわからない映画があったりして、
役所広司演じる殺人犯の三隅もまさにそんなタイプ。
殺したのは間違いないけれど、その動機が二転三転して、
弁護を受け持った重盛（福山雅治）は翻弄される。
つまりは映画を見ている観客も、思い切り振り回されるのだ。
三隅の本当の気持ちは何なのか。
観客は重盛と一緒になって、三隅の表情を読み取ろうとする。
三隅の、役所広司の顔を、目を、穴のあくほど見る。
しかし、わからない。何を考えているんだ、あんた。
そういう意味では、役所広司は本当に上手い。
離婚した重盛には別居している娘がいて、
三隅にも絶縁した娘がいる。
そして二人のあいだに浮かび上がってくる、
被害者の娘・咲江（広瀬すず）。
三人の娘が、三隅と重盛の心のなかに影を落としたまま、
やりきれない思いのまま映画は進んでいく。
家族をテーマに映画を撮り続けている是枝監督の
意欲作というか。結局、本作も家族を描いているんだなと。
主役の二人はもちろん上手いのだけど、
斉藤由貴と広瀬すずの母娘もすごい。
特に斉藤さん、場面をさらう存在感に圧倒されました。
