Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

物議のひと

2015年10月22日 | 映画など

ルイス・ブニュエル監督といえば、

四方田先生の本でも1章を割いて論じられていたけれど、

どうもこの監督、根っからの不届き者らしく、

前衛的なスタンスで映画を撮ったと思ったら、

公序良俗に反する映画で物議を醸し、

晩年はフェティシズムやテロリズムといったけしからんものを

主題にして撮り続けた人である。

 

そんな人が1945年から60年ぐらいの間に、

メキシコで量産した商業映画が、すこぶる面白い。

それぞれミュージカルであったり、冒険映画であったり

恋愛映画であったりするのだけど、どこか異様というか、ヘンなのである。

日本の監督でいうと、

鈴木清順と若松孝二と石井輝男を足して3で割ったような感じ、

と言ったら伝わるだろうか。

 

ということで、つい最近見たのが、

そのメキシコ時代に撮られた「この庭に死す」だ。

のっぴきならない状態に追い込まれた人たちが、

追っ手の軍隊から逃れるために、ジャングルに迷い込む。

飢えと渇きに苦しみ、絶望の淵に追いやられ、

もう駄目かと思ったところに遭遇したのが、墜落した飛行機の残骸。

乗客は全員死亡していたが、食料や衣服などが残っており、

それまで瀕死状態だった登場人物たちが、

いきなり豪華なドレスを着たり、シャンパンを空けたりする。

なんだろう、この躁で鬱な映画は? と思いつつ、

結局は悲劇的な展開に至るのだけど、やっぱり、すげえなブニュエル。

 

登場人物は、山師に牧師、娼婦に盲目の娘、そして老人なのだけど、

映画の作り手は、登場人物の誰にもまったく同情せず、

ひたすら冷ややかというか、嘲笑しているというか。

娼婦を演じているのはシモーヌ・シニョレ。

あのクールビューティな女優さんが、

なんとも無残な感じになっていくのは、忍びないなあと。

コメント
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