Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

Beyond myself

2008年05月02日 | 読んでいろいろ思うところが
城戸久枝『あの戦争から遠く離れて』(情報センター出版局)を読む。
今年の大宅賞受賞作である。
中国残留孤児、という人たちがいるということは
新聞やテレビのニュースで見て知っていた
中国から帰還した子供と対面する両親がテレビのニュースに
よく映し出されていたのを思い出す。
対面した親子は手を握り、涙を流していた。
あの握られた手と手の力。そして、流された涙の意味が、
このノンフィクションを読むとおぼろげながらわかってくる。



このノンフィクションは二部構成だ。

第1部は、終戦直後、満州から引き揚げる際に
両親とはぐれてしまった5歳の男の子が、
中国人の女性に引き取られ、成長していく過程を追いかけたもの。

第2部は、その男の子がほぼ30年ぶりに帰国を果たし、結婚。
その娘である著者の目から見た父と、
第二の故国である中国という国を描写する。

この二部構成が効いている。客観的な描写に徹する第1部。
思い切り著者の主観が混ざった第2部。
ごくごく個人的なセルフドキュメントでありながら、
その視点は日本と中国の関係といった
社会的な視点にまで到達する。
そこには戦争があり、家族の繋がりがあり、国家間の問題がある。
このスケールの大きさは、ただごとではない。

著者は10年以上かけてこのノンフィクションをものにしたという。
日本に帰還した父親のまっすぐな生き方と、
その姿に情愛を持って見つめる娘。
大変な労作だと思う。


※と、ここまで書いてきてアレなのだが、
実はこの本、大学時代の先輩T氏が編集したものだ。
大宅賞だし、本当にすごいなあと。
今夜、大学の仲間と先輩を囲んで大宅賞のお祝いをするので、
この本の面白さを整理しておこうと思った次第。
というわけで、これは備忘録です。すみません。

コメント
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