






オリヴィア・ワイルド監督
「ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー」を見る。
よくある米国の高校生の
卒業前の馬鹿騒ぎコメディだと思ったら、
いや、まあそういう映画なんだけど、
イケてないふたりの高校生の女の子が一夜のあいだに、
葛藤し、自分の中のなにかを突破しようとする成長譚。
ジェームズ・マンゴールド監督
「フォードvsフェラーリ」を見る。
おお。これは傑作ではないか。
今年のオスカー作品賞が「パラサイト」でなく、
この映画であっても全然問題ないという気がする。
ロベルト・ロッセリーニ監督「ドイツ零年」を見る。
第二次大戦直後のベルリンで、貧困にあえぐ一家。
食うために、家族を救うために、
戦禍のあとが痛ましい街を彷徨する少年の物語。厳しくも愛おしい。
第二次大戦直後のベルリンの崩壊ぶりが凄まじい。
文字通りリアルなロケーションで描かれる少年とその家族。
12歳の少年エドモンドは、年齢を偽って働こうとするが叶わず。
病弱な父親と、ナチ党員であったことを隠してひきこもる兄。
キャバレーで連合国の軍人たちを相手に日銭を稼ぐ姉。
誰もが戦争に傷つき、お金も希望もない毎日が描かれる。
少年は家族のためにお金を稼ごうと、
小さな悪事を積み重ねるが、
不良少年たちの仲間に入ることもできず、
ちょっと好意を持っていた不良少女にも邪険にされる。
絶望に駆られながら、ベルリンの荒廃した街を歩き、走り、彷徨う。
その姿に目が離せなくなってしまうのは何故だろう。
こんな映画、見たことがあったなと思ったら、
思い出されてきたのが
トリュフォーの「大人は判ってくれない」とか、
成瀬巳喜男の「秋立ちぬ」。
相米慎二の「お引っ越し」や「ションベンライダ−」。
少年少女がわけもわからず、
彷徨い続ける映画は、ただひたすら美しい。
本作は、こうした映画のパイオニアなのかもしれないな、と。
城定秀夫監督「アルプススタンドのはしの方」を見る。
おお。これはいい。
前向きに生きることを
とうの昔にあきらめたおっさん(自分、だ)には、
涙なくしては見られない出色のスクールムービー。
夏の甲子園に出ている野球部の応援で、
熱心に応援しているクラスメートたちを尻目に
スタンドの端っこの方でやさぐれる高校生たち。
演劇部の安田と田宮。元野球部の藤野。
そして成績は優秀だけど友だちのいない宮下。
基本的にこの4人の会話劇であり、
カメラはほぼスタンドだけをとらえ、
決して野球の試合が映されることはない。
舞台的だと思ったら、ほんとに戯曲が元になってるんだな。
全国の高校で上演されている人気作らしい。
それはともかく本作は、
スクールカーストの序列から外れた高校生たちの
冴えない会話の中から浮かび上がってくる、
それぞれの鬱屈した思いにひたる前半。
そして野球なんて興味ねえよ、的な態度だった彼女たちが、
まさにその野球の試合を見ているうちに
次第に前向きな気持ちを取り戻していく
後半のクライマックスに感涙。
彼女たちのセリフからしか、試合の状況はわからないのだけど、
観客は脳内でその試合を鮮やかに映し出すのだ。
もし自分が高校生だったら、
アルプススタンドのどのあたりにすわっていたんだろう、
と想像するのも楽しい。どこにすわっていたかは言いません。