大島新監督「なぜ君は総理大臣になれないのか」を見る。
「なぜ」と問われているのは誰か。
それはもちろん主人公である
小川淳也議員に向けられた問いなのだろうけど、
見ている観客にも問いかけられているような気がしてならない。
主役の小川議員は元総務省の官僚で、
「社会を良くしたい」という大きな志を持って2005年に初当選。
民主党から民進党、希望の党を経て現在は無所属。
当選5期を誇るが、比例当選が多く、発言権は決して強くない。
所属する政党がめまぐるしく変わるなか、
まっすぐで気高い政治思想があっても
党利党益に与しないと、ちいとも出世できず、
総理大臣になるというでかい夢からだんだん遠ざっていく。
まさにドブ板と言える、泥臭さ満点の選挙戦で頑張れば頑張るほど
小川議員の知らないところで物事が動き、
いつの間にか翻弄されてしまっていく姿がなんとも悲痛。
その一生懸命な姿は、映画の主役として非常に栄えるし、
先の衆院選で、苦渋の決断で希望の党公認を受け、
ドロドロの選挙戦を戦う様子はかなりスリリングで、
ああ映画を見てるなあ、という醍醐味と共に、
観客の多くは小川議員を応援したくなるだろう。
誠実だとダメなのか。清濁併せ呑まないとダメなのか。
そんな声が映画の中でも聞こえてきて、
するってえとなにかい?
政治家は悪人じゃなきゃ務まらないっていうのかい?
という突っ込みをスクリーンに向かってしたくなり、
感情を大いに揺さぶられるのでした。
監督の大島新は、あの大島渚監督の息子なんだな。
だからといって、父親の作品と比べるのは無粋でしょう。
本作は出色の面白さだし、それでいいのではないか、と。