ウィリアム・ディターレ監督「旅愁」を見る。
異国の地で美男美女が繰り広げるラブロマンス。
と言ってしまえばそれまでだけれど、
だからこそ、いい。こういう観光映画は
たとえ悲恋モノでも心が温まり、
爽やかな涙を流すことができるのは、
エキゾチックで開放的なロケーションの良さがあるからかもしれない。

ニューヨークの設計技師にジョセフ・コットン。
そしてイタリアの若いピアニストにジョーン・フォンティン。
ふたりは旅客機で偶然隣り合わせになるが、
エンジントラブルでナポリに不時着。
そのままナポリを観光して、空港に戻ったら、
旅客機はふたりを残して飛び立ってしまっていた。
しかもその旅客機がその後墜落し、ふたりは死んだことになってしまう。
こうなったらもう、恋に落ちるしかないでしょう。
イタリアの陽気な空気が充満するなか、
劇中で歌われる「セプテンバーソング」が情感を掻き立てる。
それでいいのかな、いいんだろうな。
でもやっぱり報いが来るんだろうな。
いろんな思いがぐるぐるしながらも、
最後まで見てしまうのは、映画の力なのだろう。
ふたりが行きつけのバーで、
ひとりの米兵と知り合い、
酔っ払いながら身の上話を聞く場面が、いい。
最近は、緻密で伏線張りまくりのドラマが
持て囃される風潮があるけれど、
映画の本筋とはさほど関係のない、
のんびりした場面を楽しむのも悪くない。
この手の観光映画は、50、60年代の
ハリウッド映画にけっこうあったような。
「ローマの休日」はもとより「慕情」とか「旅情」とか。
あとどんな映画があったっけ。
誰かシネフィルの皆さん、教えてくださいな。