旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

手づくりとは何か?

2014-12-12 10:50:45 | 時局雑感


 数年ぶりに開かれた「八の会」の忘年会に出かけた。この会は技術系の人の集まりで、私は門外漢であるが、飲み会でもあるので酒のつながりから参加させてもらっている。
 メンバーの一人にKさんという才人がいて、今回は氏がこの度完成させた船の事が話題になった。Kさんは、全長8m、幅2.5m、8人乗りの船を「すべて手づくり」で作り上げたという。要した歳月は4年、年約百万円を投じたので総費用4百万円。
 こうして完成した船で、全国各地を旅するルンペン生活を送っているという。ルンペン生活というのは、船に金を投じたのでその分節約して、着く港ごとにラーメンをすすって食いつないでいるというのだ。港ごとに何を食っているかは別にして、ロマンに富んだ話である。

 問題は「手づくり」の中身だ。Kさんは船体や各部屋などを作る大工仕事や木工仕事をすべて自分でやることはもちろん、作業上必要な船の移動やひっくり返しなども自分一人でやったというのだ。移動とかひっくり返しとか、そのような物理的対応ぐらい手伝ってもらってもいいではないか、と質問すると、「それを人にやらせてはいけない。自分でやらなければ船の感触や完成度がわからない」ときた。
 これには驚いた。酒造りでも「手づくり」が言われるが、蒸米をエアシューターで送ったり、絞った酒をポンプで運んだりする。Kさんに言わせれば、「それでは完成度や、出来具合は把握できない」というかもしれない。
 Kさんの船の「手づくり度」は、想像を絶する水準のようだ。最後に海に浮かべるとき、浮くかどうか不安があったが、正常に浮いた時の喜びはたとえようがなかったと述懐していた。


投票ボタン

blogram投票ボタン