旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

心にしみたゲルギエフの「未来への提言」

2008-07-30 17:32:10 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 726日のNHK衛星第一放送の「未来への提言」(夜10時)に、ロシアの大指揮者ゲルギエフが登場した。氏が若くから芸術監督を務めるサンクト・ペテルブルグのマリインスキー劇場で、音楽のみならず、広く芸術、政治、未来についての思いを存分に語った。
 そのいくつかを書き留めておく。

・ロシアは原油と天然ガスに力を持つ国と思われているが、ロ
 シアの力は文化と芸術にこそある。ロシア人は、音楽、文
 学、舞踊などあらゆる分野で豊かな芸術を育ててきた。

・芸術で重要なことは個性だ。たとえば指揮でも、腕を振り指
 を動かして音を引き出す指揮者もいれば、体をほとんど動か
 すことなく素晴らしい音を引き出す人もいる。それぞれの個
 性が重要だ。

・政治、とくに国際間の関係はバランスが重要だ。ロシア、ア
 メリカ、アジア、ヨーロッパなど、それぞれの存在とバラン
 スが必要。この劇場でも、ロシア人が歌い、フランスの音楽
 が演奏され、ドイツのワグナーが演じられ、また、イタリア
 の歌手が歌ってきた。

 最後に、氏の故郷に近いチェチェンでの学校占拠事件に深い悲しみを表し、

 「なぜあのような悲惨なことが出来るのだろうか?
 人は愛することが出来る。親を愛し、子供を愛し、
 音楽を愛することが出来る・・・」

と語り、色紙にその思いを書いて、「未来への提言」とした。

  『愛すること。 憎まないこと』

 その語り口と風貌には、音楽家というより哲学者の風情が漂っていた。

 

 私が、サンクト・ペテルブルグのマリインスキー劇場を訪れたのは、2001年の6月であった。そこで、ゲルギエフが指揮するオペラ『オテロ』を観た。
 改めて、美しいマリインスキー劇場と、ゲルギエフの重厚な『オテロ』を思い出した。
                           


  
マリインスキー劇場の幕間に。サロンでくつろぐワイフ。

 

                                 


振り込め詐欺(つづき)

2008-07-28 17:07:46 | 時局雑感

 

 一昨日のブログに「振り込め詐欺」について書いた。詐欺や脱税などの銀行口座数の多さに、元銀行員として驚いたことによる。そして軽率にも、「あんな単純な手口の詐欺が、毎年増加しているとは驚きだ」とも書いたところ、早速ワイフに指摘された。
 「そんなことを言うあなたのような人が、一番ひっかかりやすいそうよ。なにしろその手口は年々込み入っているそうだから。」
と言うわけだ。これにはどきりとした。確かに、自信満々な人間に大きな落とし穴があるというのは、世の常であるからだ。
 しかし、巧妙な手口とはいえどうせ「振りこめ!振りこめ!』と叫ぶのだろうなどと思っていたら、昨日の日経新聞17面に一面抜きで『振りこめ詐欺 家族で防ごう――高齢者狙い手口一段と巧妙に』という特集が組まれた。
 それによるとその手口は、大きく分けて「オレオレ詐欺」と「還付金詐欺」に分けられ、前者の中にも「身内の不祥事でっちあげ」、「警察官、弁護士、上司、ヤクザなどによる“劇団型”」、それに「アポ電型」から「送って型」に至るまでさまざまあるという。
 後者の還付金詐欺は、社会保険事務所や税務署から「払いすぎた税金等を還付するから」と言いながら、携帯を使わせ巧妙に振り込ませるらしい。
 日経新聞の同欄は、それらの手口についての対策を、丁寧に書いてくれてある。

 一方詐欺師の方は、これら日経新聞の記事などを検討して、「そのウラをかく手」を練っているのかもしれない。それならこちらは「そのウラのウラを検討した対策」を立てねばなるまい、などと思っている。
 なに? そのような理屈っぽい年寄りが一番ひっかかり易いカモだって?
                            


「振り込め」口座、脱税口座の多さに驚く

2008-07-26 10:39:03 | 時局雑感

 

 今朝の毎日新聞トップ記事は、「振り込め」口座に59億円、というものであった。それによれば・・・、


 全銀協の集計によると、振り込め詐欺に使われたと見られる口座で、1000円以上の残高の残っている口座が、3月末現在で53,102件あり、その残高は59億円に上ると言う。まずその口座数と額の大きさに驚いていると、次の記事で発生の多さに驚いた。
 「警視庁のまとめでは、今年1月~5月の振り込め詐欺の被害総額は137億円と前年同期の1.6倍に達し、過去最悪の水準となっている。」
 5ヶ月間152日の間に137億円の被害と言うことは、単純平均で「一日約9千万円の被害」と言うことになる。しかもどんどん増えているのだ。悪質ではあるが、あのような単純な手口は、すぐばれて減少すると思っていたが、増えているとは驚いた。
 その詐欺で失敗して取りそこなった残りが59億円あるというのだろう。それから見てもかなり成功しているのだ。
 その記事の中には、こんな記事もあった。
 「調査結果によると、脱税など違法行為に使われたとみられる口座は3月末時点で18万3789件で、総額87億2300万円。このうち捜査当局からの通報や異常な入出金状況から、「振り込め詐欺に使われた」と判断された口座は12万4472件あった。」

 これから見ると、脱税の口座も相当数に上るようだし、世の中は悪いことだらけだとつくづく思う。私は元銀行員で、営業をやっているときには「一口の預金口座獲得」にも苦労してきたが、いまや、何十万という口座、何十億円という預金が犯罪に絡んでとりくまれていることを悲しく思う。(もちろん当時も、脱税のための口座はあり、時々査察を受けたりしていたたが)
 まあ、防衛庁がらみの汚職、脱税の容疑でこの度逮捕された秋山直紀容疑者の、一人でやった規模(容疑額は2
億円強の所得隠し、7千万強の脱税)からすれば、振り込め詐欺の金額など小さいのかもしれないが。
 それにしても、まじめに働いている人のためにも、巨悪も小悪もない世の中になりたいものだ。
                            


スポーツ花形選手の行き先

2008-07-24 17:01:02 | スポーツ

 

 ゴルフで最もドラマチックなゲームは、マスターズと全英オープンと思っている。私はプレイからは離れて久しいが、毎年この二つには関心が向く。
 今年の全英オープンの主役は何といってもグレッグ・ノーマンであっただろう。久しく名前を聞かなかったので、すでに引退しているのかと思っていたら、どっこい、初日から優勝に絡んできた。53才で優勝すれば、メジャー最年長優勝記録であったが、さすがに最終日息切れしたのか3位に終わった。
 それにしてもたいしたものだ。記録を逃して「当然がっかりしている」と正直に告白していたが、同時に、夢を追い続ける自分をこう語ったと言う。

「夢を追うのに年齢は関係ない。私は結果として失敗したけれど、本当に望むならばできるはずだ」(22日付日経新聞)

 まだやる気でいるようだ。彼は最近テニスの元女王クリス・エバートと結婚し「ゴルフのほかにもやるべき仕事がたくさんある」と意気盛んなようだ。だから「やりたいときに練習し、したいときにプレイする」そうで、ゴルフ以外の生活も充実しているので、たまに出場しても好成績をあげ得るのかもしれない。

 花形と言えば野茂英雄が引退した。それについて今日の日経新聞に、豊田泰光氏が「野茂氏の帰り道」というコラムを書いている。
 日本プロ野球界に決別して米国に行った野茂は、その経緯からして、恐らく日本プロ野球界にコーチなどで復帰することは無いだろう、と豊田氏は嘆いている。これほどの貴重な経験を、日本プロ野球に生かして欲しいと切望し、「プロ野球側としてはこの際、変なメンツを捨て、12球団を巡回するコーチなどを依頼してはどうか」と提案している。
 発想豊かな豊田氏らしい面白い提案だ。
 野茂もノーマンと同じく、引退声明では「まだまだ思い残すことでいっぱいだ」と言っているが、それはメジャー界でのことであろうから、その夢は日本では生かされないのかもしれない。日本側が「帰り道」を用意する度量を持ったとしても、その道を歩くにはスケールが違いすぎる人物かもしれない。
                            


北極圏の原油・天然ガス争奪戦

2008-07-21 12:08:00 | 政治経済

 

 毎日新聞は、今日の一面トップに「北極に眠る3745億バレル 争奪戦、5カ国参入」を掲げ、『覇権潮流』シリーズの第二部「資源をめぐる攻防」を開始した。
 記事によれば、「地球温暖化で氷は薄くなり、資源獲得は容易になっている。原油・天然ガスの高騰で、投資に見合った調査開発となる」(カナダ天然資源省高官の発言)そうで、薄くなって亀裂の入った海氷を突き進むカナダの砕氷船の写真が掲げられている。
 北極の資源が誰のものか? などあまり考えても見なかったが、3745億バレルというのは、世界最大産油国サウジアラビアの埋蔵量の1.4倍に当たる(同記事)そうであるから、原油高が世界経済を揺るがしている現状からすれば、捨て置けない話だろう。
 国連海洋法条約によれば「自国沿岸から200カイリ(役370キロ)までの排他的経済水域内で資源開発ができると限定。これを超える海底では、自国領の大陸棚から地形・地質的につながることを証明し、国連の『大陸棚限界に関する委員会』の認定を受ければ、開発可能となる」(同記事)そうだ。
 そこで、北極に向かって国境を連ねるロシア、アメリカ、カナダ、デンマーク(グリーンランドを所有)、ノルウェイの5カ国が、自国の大陸棚につながることを証明しようと、調査を競い合っているようだ。
 もっとも進んでいるのがロシアとカナダで、もっとも遅れているのがアメリカのようだ。そもそもアメリカは、国連海洋法条約を批准してない。

 面白い(?)のはロシアで、探検家で下院議員のチリンガロフという男が、昨年8月潜水艦で北極点に至り、「水深約4300メートルの海底にチタン製のロシア国旗を打ち立てた」という。その行為をプーチン大統領は「ロシア科学の快挙」と称え、チリンガロフ自身も他国の挑戦に対し、「対抗しようとしても無駄だ。北極は約500年前から我々が目指した地だ。絶対に譲歩しない」と言っているそうだ。(以上引用は同記事)
 何かコロンブスやヴァ
スコダガマ(いや、スコットとアムンゼン?)がまた現れたような話だが、下院議員の中にも探検家が居るところがロシアらしく、第一、チリンガロフという名前がいい。

 ロマンに富んだ話ではあるが、北極の海底に旗を立てて、ここは俺のものだ、などと言えるのかどうかもわからないし、他国も含め膨大な費用をかけて調査を進めるのはいいが、温暖化が進んで調査しやすくなったなんて喜んでいると、調査の終わった時には地球は滅亡しているのではないか?
                             


すっきりしない梅雨明け

2008-07-20 18:46:48 | 時局雑感

 

 昨日で関東、東海も梅雨明け、日本列島はすべて梅雨が明けたようだ。しかし最近の梅雨は、あまり梅雨らしい雨が振らないし、明けたといっても、からりと夏らしい空になるわけでもない。
 子供の頃の九州の梅雨明けは、強烈な太陽が降り注ぎ、真っ青の空に入道雲が浮かぶので、「明けた!」という印象が強かった。
 確かに2~3日前から日が差す時間が多くなり、急激に暑さだけは増した。昨日、今日と、じとじとと暑い。しかしすぐ曇って、梅雨雲のような雲が空をおおう。
 どうも、季節の分かれ目がすっきりしなくなったようだ。
 梅雨の雨も、以前はシトシトと常に降っていたように思うが、最近はあまり降らない。しかし降るときはバケツの底が抜けたような雨が降り、あちこちの商店街が水浸しになったりする。昔から夕立はあったが、夕立で道路に水があふれるようなことはなかったような気がする。

 
以前は、季節ごとのケジメを付けながら、かつ、それを踏み外すこともなかったのであろうが、最近は環境破壊が進んだからか、ケジメもはっきりしないし、たまにケジメをつけると、ハメをはずした天変地異になるようだ。
 神は手を抜いてるのではないか?
 いや、神は怒っているのであろう。
                            
 


酒造界の新しい試みーー大阪純米酒フェスティバルに参加して

2008-07-19 11:51:48 | 

 

 一昨日(17日)大阪純米酒フェスティバルに参画してきた。4月と10月に行う東京の純米酒フェスティバルは、昼夜2回、50蔵出展、参加者1回で600人の規模であるが、大阪は夜1回で20蔵出展、参加者300人と半分の規模であるので、主催する方としても余裕があり、ゆっくりと出展蔵を回れる。
 蔵元を中心に参加者も加わり、いろんな酒つくりの話を交わしていると、それぞれの蔵が様々な工夫をしていることが分かる。

 いくつか気がついたことを挙げると、
 ・20の蔵の内、自家酵母あるいは自然発酵(酵母添加な
    し)で造った酒を出している蔵が7蔵あった。実に3分の1
    である。いよいよ各蔵の個性が出る時代を迎えるだろう。
 ・黒麹を使った蔵が2社あった。日本酒は黄麹と教科書で教
  わってきたが、これも新しい試みか? 独特の酸味があ
    るのでデータを見ると、酸度2.2とあった。日本酒度も
    プラス2などで決して甘口酒でもない。
 ・酸度といえば、今回20社の酒の大半は1.5以上で2以上
   
もざらに有った。
  この傾向が何を示すのか、少し調べてみたい。

 蔵元として酒を売り込む立場からの、面白い試みを一つ紹介しよう。
 三重県鈴鹿市に「作(ざく)」という銘柄を造る清水醸造という蔵がある。その出品酒の中に、「作 穂乃智(ほのとも)」と「作 恵乃智(めぐみのとも)」という2品が並んでいる。いずれも精米歩合60%、日本酒度3.0、酸度1.5と1.6とほとんど変わらないが、使用米が、前者は右近錦、後者は山田錦だ。早速試飲しながら「何が違うのか?」と聞くと、清水社長、
 「ハイ、それぞれ名刺をを持っていますのでお渡しします」
と2枚の名刺を渡してくれた。見ると、ラベルにそれぞれの名前を記した一升瓶があしらわれた立派な名刺で、「作 穂乃智」さんには「純米酒としての味わいの広がりを持ちながら、舌をさっとリフレッシュさせる後味、ライチを思わせるすっとした香りが印象的・・・」と記され、一方の「作 恵乃智」さんの方は、「穏やかで優雅な香りと、酸と甘みのしっかりした味わいのバランスが絶妙です」と自己紹介している。言われて飲むとそれぞれに個性の有るいい酒であった。
  人がそれぞれ名前と個性を持ち、それをあらわす名刺を持っているように、酒もそれぞれに違い、自己をあらわす名刺を持つ・・・
 実に面白い試みであると思った。
 こうして、各蔵が個性を争う時代になったのであろう。これも純米酒が中心の酒造りが生み出した現象と思う。
                            


自分の酒(つづき)

2008-07-16 22:55:12 | 

 

 昨日、共に飲んだ同僚M君にそそのかされた話「自分の酒を造る」を書いた。いい酒を飲んだ心地よい酔いでウッかり書いたところ、二人の方からコメントを頂いた。
 一つは、「お前が造るのなら年間契約で買う」と言うもので、もう一つは「先輩の造る酒なら高価(たか)くても買います」という、いずれも扇情的なコメントである。
 私はこのようなことにならないように、前回ブログの結びを「アブナイ アブナイ」と書いたのであった。そもそもこのお二人も、「酒造りの困難性」を知ってはいないだろうと思う。それは、人に煽てられてやれるよう代物ではないのである。少なくとも私は、それを知っている、という自負を持っている。

 ところで今夜は、銀行時代の同僚M君(どうもMが多くてややこしいが)が送ってくれた「岐阜の某蔵の純米大吟醸」を晩酌で飲んだ。そのおいしさに酔って、「このような良い酒を毎晩飲んではいけないな・・・」と自省しているところだ。
 晩酌に、つまり食事に合った一番いい酒は何か?
 そんな酒を造りたいものだなあ・・・
なんて思う。
 明日は関西に出向き「大阪純米酒フェスティバル」に参画する。そこに出展する蔵と、そこに集まる日本酒愛好家と、

 一年365日、晩酌で飲みたい酒

とはどんな酒だ! ということを話し合いたいものだ。
 断っておくが、それを自分で造るなどとは全く思ってないので念のため。
                           
 


自分の酒

2008-07-15 21:56:59 | 

 

 昨夜、関連会社の同僚M君と、打合せ会のあと酒を飲んだ。酒好きのM君に一度紹介しようと思っていた新宿御苑前の銘酒店「うま久」に行った。
 この店には、相当数の銘酒が揃えられており、しかも最先端を行く日本酒が常に補給されている。加えて料理もいい。料理と酒が相応にそろっている店は、そう多くないので、酒の話をゆっくりしようと思う時は、このような店に行く。
 ちょうど、今月1日に開かれたフルネット社主催の「日本酒新時代シンポジウム」の話が出て、その際の高木酒造オーナー杜氏高木氏の噂をしたので、まず「十四代」に始まり、かなり飲んだ。

 それはさておき、M君から突如として、思いもよらぬ提案を受けた。
 「首藤さんは、どうして自分の酒を造らないんですか? 首藤さんの本を読んで、何か終わっていない、という感じを受けるんですが、それは『これが俺の酒だ』と首藤さんの造った酒を示されて終わるような気がしてるんです。ぜひ造ってください」
という提案だ。
 言われてみれば、きわめて空想的に「酒を造ってみたい」と思ったことがあったような気もするが、具体的に考えたことはなかった。
 第一、酒つくりなんて相当に大変なことであることを知っている。当面の時間や金のことはもちろん、体力や根気の面からみても
自分にできることではない、と決めているようだ。まさに「思いもよらぬ」提案であった。
 よしんば金と時間が与えられたとしても、「俺の酒」のコンセプトをどうするか、だけ考えても気が遠くなる。米は何を使うか、水はどこがいいのか、酵母はどうする、即醸か山廃か、吟醸か普通純米か・・・?
 それらが決まったとしても、どうせ自分一人では出来ないのであるから、どこかの蔵に頼まねばならない。どこの蔵にするか、などとこちらで決めても、簡単に引き受けてくれる蔵があろうはずがない。まさに気が遠くなる話だ。
 しかし、気が遠くなるような話だからこそ、酒つくりにはロマンがあるのかもしれない。
 「これが俺の酒だ」という『お品書き』を作るだけでも楽しい話だ。いやいや、うっかりお品書きをつくると本当に造りたくなるかもしれない。
 アブナイ、アブナイ。
                             

 


私情と物欲に魂を売った教師たちーー大分県教員採用汚職

2008-07-12 14:46:21 | 時局雑感

 

 大分県の教員採用汚職事件をめぐるニュースが、連日テレビや新聞で報道されている。冒頭に断っておくが、私は大分県臼杵市の出身で、郷里にまつわる文化や旧跡について、このブログにも「誇りを持って」何度も書いてきた。それが今回ばかりは、ニュースを見る度に身の細る思いがする。

 それにしても悪質の度が過ぎる。口利き依頼された受験者の点数を、合格点まで水増ししただけでなく、合格者の点数を不合格点まで改ざんして引き下げるとは、どんな神経の持ち主なのであろうか?(もちろん、定員制のもとでは、一人引き上げれば一人落とさねばならないが)
 戦後の希望に満ちた時代にあっても、政財界の汚職事件は後を絶たなかった。しかし、ここ十数年来、その汚職や不正の対象が、「人間生存の根源」に関わることに及んできて、不安の度を強めてきていた。
 耐震強度偽装事件が起きたとき、「住む場所が信用できなくなって、人間は生きていけるのか?」と思ったものだが、その後、うち続く食品偽装問題が起きて、「日日生きていく最低条件である食が信じられないとすれば、それこそ未来はあるのか」と思った。そしてそのときのブログに、「人類が分業による共同生活を営む以上、食や住の提供に当たって、少なくとも『ウソをつかない』ということは、最低限の掟ではないか」と書いた。
 教育は、高度な知識の習得に至るまで様々な分野を司るが、教育の根源は、社会生活を行ううえで最低限必要な資質--「ウソをつかない」「約束は守る」「決めたことはみんなで実行する」などを、子供に身につけさせることであろう。
 その教育の現場が、ウソやごまかしの汚辱に犯されている。
 そのような国家に未来はあるのか、と言わざるを得ない。

 断っておくが、私はたくさんの素晴らしい教師に恵まれて育った。また私の周囲には、実に熱心に、教育に生涯をささげている人たちが数多くいる。一時の心情や、金に目がくらんで魂を売った教師は、ごく一部であろう。
 ただ、その一部の悪が様々に影響し、ほころびを広げていくことを恐れるのである。
                           


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