妻を手伝って雛人形を飾った。娘が開いているピアノ教室に、小学生など10数人の子供がレッスンに来る。3月3日を前に「情操教育の一環…」というのが妻の思いだ。
人形飾りといっても、5段や7段飾りなど大袈裟なものではない。一対の男雛と女雛をピアノの上に飾るだけだ。しかし、赤い絨毯を敷いて、後ろには屏風を立て前は柵で囲い、両側にはぼんぼりをたてる。男雛には太刀を佩かせ烏帽子をかぶせるなど小道具も多い。妻は、「この男雛きれいな顔している。長谷川一夫よりきれいだヮ」と言いながら烏帽子のひもを結んでいた。
たった一対の雛人形だがグランドピアノの上いっぱいに広がった。子供たちはこれを見て、春の到来を感じ、また自分の成長を実感することだろう。
こうして、わが家にも春が来るのだ。
日本の季節の変化は大きい。それを彩る行事も様々だ。暮れの餅つきから正月の雑煮や七草粥、2月の豆まき、3月の雛祭り、4月の花祭りから5月は端午の節句……と数えればきりがない。お風呂にしても、初夏には菖蒲湯に入り冬至には柚子湯に浸かる。夏の土用はウナギを食べて暑さを乗り切る。すべて子供の成長、家族の健康を祈ってのことだ。
妻が、毎年これらを忘れることなく行ってくれることをありがたく思う。このような良き風習は、これからも末永く伝えられていくのだろうか?