旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

古豪の引退(45歳イチロー)、新鋭の昇進(22歳貴景勝大関へ)

2019-03-29 10:22:33 | スポーツ


 イチローの引退、貴景勝の大関昇進が世を賑わしている。
 米大リーグの日本開幕戦を引退の舞台としたイチローの引き際は爽やかであった。あえて「鮮やか」と言わないのは、ついにヒットの一本も出なかったことによる。しかしそれは、28年間に及ぶイチローの選手生活と数々の記録を、いささかも傷つけるものではなかった。むしろ、最後まで努力し続けるイチローの生きざまを示して爽やかであった。
 後悔はないか、と言う質問に対し、「今日の球場の出来事を見せられたら、後悔などあるはずがない」と言い切った。彼は、記録や結果より、その結果を求めて頑張ったこと、その努力により絶えず自己の限界を超えていったこと、これを評価すると言い続けた。
 生きざまについて聞かれると、「少しずつの積み重ねしか自分を超えていけない。遠回りすることでしか本当の自分に出会えない気がする」と答えている。とても常人の理解するところではない。

 相撲界では、貴景勝が期待通り大関昇進を果たした。伝達式の口上にあった「武士道」には驚いたが、これも、「勝っておごらず、負けて腐らず、受けた恩は必ず返す。小さい時から、この言葉で自分を築き上げてきた」と説明されて参った。
 思えば、今の日本には武士増精神ぐらいしかいいものは残っていないのではないか? 一流と言われていた経済は、不正経理や相次ぐ基準違反でメッキが剥げてきたし、長期停滞でGDPの世界順位も下げ続けている。政治はそもそも三流であったし、憲法9条を持つ平和主義も怪しくなってきた。
 この若者は、これに気が付いていたのか、3歳の時から武士道精神で生きてきたようだ。ただ、中学生の時に掲げた「20歳で横綱」には及んでいない。しかしイチローが、「50歳まで現役、を掲げながら有言不実行に終わったが、その目標があったから今日までこれた」と言っているので、貴景勝も「20歳で横綱」という目標があったからこそ、22歳の大関が実現したのかもしれない。
 この齢になっても、学ぶことばかりである。


パーティの評価は何が決めるか … ミャゴラトーリ支援者の会を終えて

2019-03-22 15:23:10 | 文化(音楽、絵画、映画)


 世には、様々な集会とかパーティがある。参加して楽しいものや、何とも物足りなく、不満の残るものもある。 娘が主宰するオペラ普及団体ミャゴラトーリは、年に一回、支援者に活動報告を兼ねた感謝の気持ちを贈る会を催している。約一時間のミニコンサートと、それに続く12時間の交歓パーティである。そこには当然、お酒と軽い食事が不可欠であるが。

 去る17日、西新宿のガルバホールで、約40名のご参加を得て支援者の集いを催した。結果は、ご参加いただいた方々に大変喜んでいただき、高い評価を頂いた(と思っている)。
 まず、歌手の力量が高く評価された。歌唱力、演技力とも年々高まって、日々の努力、精進の跡が見えるという声もあった。コンサートに続くパーティも楽しく、質の高い内容だったと評価してくれる人もいた。ドニゼッティ、プッチーニ、モーツアルトなどのオペラから、歴史に残るアリアや重唱を聞いた後は、それに負けない、少なくともその雰囲気を維持する会話が続くことが求められる。
 その役割を担うものの一つに、私は酒食の力もあると信じている。お酒担当の私は、現在日本の最高級の質を誇る酒を選び抜いた。曰く、昨年の純米酒大賞グランプリの「陸奥八仙」(青森)、特別金賞を続けている「作(ざく)」(三重県)、弟の協力を得て秋田県横手市の名酒「夏田冬蔵」と「まんさくのはな愛山酒」などである。これに、参加者の一人が差し入れてくれた千葉の「梅一輪」なども加わり、これらの酒は好評を呼んだ。
 良い音楽を、良い酒を酌み交わしながら語り合うとき、そこに最高の会話が生まれる。パーティを構成するすべての要素の、どれ一つにも手を抜いてはいけないのである。

  
  シュトラウスの「春の声」を歌う  ソプラノ森真奈美さん
     
     「ある晴れた日に」を歌う ソプラノ平野雅世さん
        
        「愛の妙薬」のドゥルカマーラを演じるバスバリトン大澤恒夫さん

   
     ピアノ巨瀬励起さん


田沼武能写真展「東京わが残像1948-1964」を観て

2019-03-16 11:23:37 | 文化(音楽、絵画、映画)


 砧の世田谷美術館で開催中の田沼武能写真展を観てきた。田沼はすでに90歳でありながら現役活動を続けている写真家であるが、そこには、若き田沼の目(6,70年前)がとらえた東京下町の姿が、生き生きと並んでいた。昭和20年代から30年代前半は、高度成長時代に入る前の時代で、まだ戦後の匂いが漂い、貧しさが残っていた。
 展示は3章に分かれ、第1章「子供は時代の鏡」、第2章「下町百景」、第3章「忘れえぬ街の貌」と題されて、それぞれ60点、合計180点が展示されていた。いずれも見ごたえがあり、観終わって時計を見ると二時間を要していた。
 中でも第1章の「子供…」は圧巻で、そこには、何もないがひたすら何かを求めて生きていく子供たちの姿が活写されていた。貧しそうな路地裏で将棋に夢中になる子供たち(「路地裏の縁台将棋)、遊びの延長に必ず起こるケンカ(「ままごとあそびからケンカへ」や「ケンカは遊びにつきもの」など)、また、数少ない楽しみの一つだった紙芝居に惹きつけられる全員の真剣な瞳(「紙芝居に夢中になる子供たち」)など、すべて懐かしい。
 思えば、ここに映し出されている子度たちは、後に言う団塊の世代の子供時代の姿だ。彼らが大きくなって、日本の高度成長を支え、良くも悪くも団塊の世代として一世代を築くのだ。その世代は、戦後の焼け野が原に生れ落ちて、何もないところから何かを求め、将来を夢見て、日本を高度成長に導く一翼を担ったのだ。
 その子供たちの活動力の源を、何かを求める夢見るような瞳の中に感じた。

  
   世田谷美術館

     
     美術館の庭に立つ大クヌギ


福島の酒と料理を求めて『福島』へ … 山桜桃の会番外編

2019-03-11 15:22:26 | 


 神田錦町に、福島のアンテナショップ「そば酒房『福島』」と言う店がある。山桜桃の会のメンバーY氏は福島の出身で、当然のことながら郷土愛に燃えてこの店の常連だ。「一度紹介せよ」と言うことになって、山桜桃の会の5人で出かけた。主力メンバーの二人のご婦人が来れなかったので、この会は番外編と言うことにしたが。
 ところが、番外にしては中味があった。「地酒と十割そばのアンtゲナショップ」と銘打つだけに、料理は地元料理にこだわる。。まずあてに三品が並んだが、これが、「そば屋の卵焼き」、「ニシンの山椒漬け」、「イカ人参」(松前漬けのようなもの)。続いて出てきたのが「輪島ふぐ」のポン酢、もみじおろし付き。いずれも酒の肴にぴったり。なお、「菜の花のお浸し」や「厚切り切り干し大根とさつま揚げの煮つけ」など、福島の土地の匂いが続き、最後はご自慢の「十割そば」……。

 これを、全て福島の酒を飲みながら食した。曰く、会津若松の「『会津娘』春泥」、同じく同地の「『末廣』山廃」、郡山市の仁井田本家の『自然酒』がこれである。最後に、女性群が「山廃などはちょっと重い」と言うので、禁を破ってお隣り群馬県の『水芭蕉』純米大吟醸を差し上げたが。
 いやあ~、その地の酒をその地の料理で飲むのはいいものだ。

 
   あて三品と輪島ふぐ
     
     切り干し大根などの煮つけ
         
         会津娘の「春泥」

  


不安の多い国際情勢 … 沖縄辺野古や米朝問題

2019-03-04 21:17:52 | 政治経済

 沖縄の「辺野古埋め立ての可否」を巡る住民投票の結果は、近来にない快挙であった。投票率52%強、反対70%以上は、沖縄県民の圧倒的意思を示した。戦後70年、基地行政に苦しんできた沖縄県民の、「もういいではないか}という悲痛な叫びが聞こえるような気がした。
 沖縄県民の意思はもちろん、そもそも不可能に近い埋め立て計画をごり押ししようとする政府に、痛烈な反省を求める意思表示でもあろう。事態の進展は、当初2~3千億円の費用であったものが何兆円単位に膨れ上がり、そもそも脆弱地盤のうえ90メートルに及ぶ工事が必要となれば、日本にその工事をやる船舶もなく、事実上完成のめどの立たない事業となった。つまり、完成は不可能な工事である。
 そのような事実を見極め、政府に県外移設を訴える強烈な沖縄県民の意思が示されたといえよう。問題はこれを無視し続ける安倍政権の態度である。この安倍の態度は、決して沖縄県民だけの問題ではない。これほど明瞭な意思が示されてもそれが無視されるということは、このような事態が本土内で起きても無視されるということだ。民主主義の根幹を揺るがす安倍の姿勢を、沖縄の問題としてではなく国全体の問題としてとらえる必要があろう。
 米朝会談の行方も心配だ。決して決裂ではないと理解するが、平和への大きな一歩が躓くのではないかと気になる。そもそも国際交渉の解決というのは、双方が譲り合うことにより進むものだと思うが、米側の、「核の全面放棄までは一切の制裁解除はない」と言う態度が気になる。その根底に、「俺は核を持ってもいいが、お前は一切持ってはいけない」という大国思想があるようで、そもそも不平等交渉が前提となっている。それにしては北朝鮮は、よく耐えて交渉に臨んでいると思うのだが、どこかで堪忍袋の緒が切れることが恐ろしい。


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