旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

今年も終わる

2009-12-31 16:13:23 | 時局雑感

 昨日窓のガラス拭きを終え、今日各部屋に掃除機をかけて、数箇所のカレンダーを張り替えた。これが年末恒例の私の仕事である。と言えば立派なようだが、一年を通じて唯一の「私の行なう家事」である。

 この唯一の家事も、齢の重なりにつれてつらくなる。昔は2階から1階にかけて一気に終えたものだが、一枚の窓ガラスを拭いて一息いれる。腕が疲れる上に以前のようにガラスが綺麗にならない。以前は一点の曇りも残さずピッカピカになって気分もすっきりしたが、気のせいかいくら拭いても“拭き跡”が残っているような気がする。腕の力が弱ってきたのだ。
 加えて少しずつ“手を抜く”ことを考える。「こちらの窓は網戸に重なっている方だから、少しぐらい汚れが残っていても見えやしない」なんて考えて手加減する。「こちらはいつも障子が閉まっているので、あえて拭くこともないのではないか」とか勝手に決める。結局すべて拭くには拭いたが。
 掃除機も、隅の荷物の置いてある場所など、荷物を動かすことなく空いているところだけかけて済まそうとする。本当は、その荷物の下こそゴミがたまっており掃除の必要があるのだが。
 甲斐甲斐しく正月の料理を作っている台所のワイフを横目で見ながら、「年一回の大掃除だ。少しは気合を入れてやれ!」とか言い聞かせながらやるのであるが、なかなか気合どおりには行かない。

 まあしかし、とにかく終わった。ワイフに指摘された居間のガラス窓の拭き残しを、画竜に点睛を入れるがごとく最後にふきとり、清清しい気分ですべてを終えた。
 これでわが家にも正月が来るだろう。少々の手抜きは、神も齢相応と許してくれるに違いない。

 来年は私も75歳、ワイフは70歳の古希を迎える。いい年でありたいものだ。
                          

      


デンマークに学ぶ「貧困・格差の克服」

2009-12-30 16:57:45 | 政治経済

 今年も沢山の本を読んで学ぶところが多かった。その中で心に残る一冊として、千葉忠夫著『世界一幸福な国デンマークの暮らし方』を挙げておく。

 この本によると、二つの調査でデンマークは「世界一幸福な国」になっている。一つはアメリカのワールド・バリューズ・サーベイの調査で、「あなたは幸せですか? 今の生活に満足していますか?」の質問に「幸せです」と答えた人数が一番多かったこと。もう一つはイギリスのレスター大学の心理学者が、世界178カ国の経済状況、医療制度、教育などのデータ分析ではじき出した幸福度ランキング。これでもデンマークが一位だ。因みに二位はスイス、三位はオーストリアで、アメリカは23位、日本はなんと90位と言うことだ。
 著者は、現在のデンマークが築き上げられた原点を160年前のアンデルセン(同国が生んだ偉大な童話作家)の思想に求め、『アンデルセン童話集』の中の話を解説しながらこの書を以下の通り展開している。

1.『マッチ売りの少女』が幸せになるために貧困を考える
2.『裸の王様』のようにだまされない政治を考える
3.『みにくいアヒルの子』をいじめない教育を考える
4.『赤い靴』は無責任の教え、社会のあるべき姿を考える
5.『ナイチンゲール』の歌声と介護の心から福祉を考える
6.『人魚姫』の選択を通じて自律することを考える

 一言で言えば、デンマークは160年かけて現在の福祉国家を作り上げたと言うのだ。アンデルセンが生まれた200年前はまだ貧しい国であったが、アンデルセンが書いた童話集(160年前出版)の夢を実現しつつ現在に至ったと言うのだ。
 ここ数年、急激に顕現化してきた貧困、格差問題を前に、どのような国を目指すべきかを考え続けているが、その一つを北欧諸国の国々に求める。中でもデンマークはその先端を行っているのであろう。
 叙述のしかたを含め素晴らしい本だと思う。
                           


24節気の酒 ・・・ 冬至

2009-12-29 13:42:26 | 

 既に5日を過ぎたが、22日が冬至であった。一年で昼の時間が一番短い日である。正に冬に至り、寒さも一段と極まってくる。
 湯船に浸かると、妻の計らいで柚子(ゆず)が二つ浮いていた。黄色い大きな柚子が、甘酸っぱい香りを乗せてゆらゆらと揺れながら、首まで浸かった私の頬に近づいてきた。
 「今年も終わろうとしている・・・、いろいろな事があり、それなりに充実した年を健康で過ごせた・・・。」
 寒さをしのぐ柚子湯に肢体を伸ばす、幸せなひと時であった。

 この22日から年を越して1月5日の小寒までを、24節気では冬至とする。この時節、と言うより一年の締めくくりに最もふさわしい酒を飲む機会を得た。一昨日(27日)に開かれた「純米酒大賞2009 グランプリ酒を楽しむ会」がそれであった。

 純米酒大賞と言うのは、純米酒普及推進委員会委員長の高瀬斉氏や、フルネット社の中野繁氏などで構成する『純米酒大賞制定委員会』が、初めての試みとして、全国84蔵、137点の純米酒を鑑評し選んだ酒である。137銘柄を精米歩合別に、39%以下、40%台、50%台、60%台、70%以上の5部門に分け、5人の審査員が数時間賭けて選びぬいた(もちろん目隠しテスト)。

 
 各部門の1位(グランプリ)酒を掲げると、第一部門から順に「団」(純米大吟醸、福井県加藤吉平焦点)、「梵」(特撰純米大吟醸、福井県同社)、「出羽桜」(純米吟醸雄町、山形県出羽桜酒造)、「奥の松」(特別純米、福島県奥の松酒造)、「亀齢」(辛口純米、八拾、生、広島県亀齢酒造)の5銘柄。その中から再度選びぬかれて“純米酒大賞”を受賞したのが『「出羽桜」(純米吟醸雄町)』であった。

 これらグランプリ酒と準グランプリ酒の11銘柄を、蔵元ともども楽しんだのである。精米歩合だけから見ても「梵」は21%、対する「亀齢」は80%。これほど幅のある酒がそれぞれ特有の個性をもって実に美味しく、甲乙つけ難い。さすがに大賞の「出羽桜」は、雄町という米のせいか、柔らかく幅のある味で、どんな食材にも合う素晴らしい酒であった。同社の仲野社長も「雄町は難しい米ですが、苦労して造った甲斐がありました」と語っていた。

    
      純米酒大賞「出羽桜雄町」    


 この選出基準が、従来の鑑定会などのような「減点法(欠点を指摘し切り捨てていく)」でなく「加点法(いい点を拾い上げていく)」であることも、日本人の食材や日常生活に合う酒を選び出してきたのであろう。

 本年の最高の酒をたっぷり飲んで、一年間書き続けた『24節気の酒』も終わりとする。
                           


鳩山首相のブレ

2009-12-26 09:24:26 | 政治経済

 政権交代後の最初の予算案と、鳩山、小沢両氏の政治資金問題が連日紙上を賑わしている。普天間移設をめぐる日米問題を含め、新政権の方向性、特に鳩山首相の優柔不断、リーダーシップが問われ、中でもブレの問題が論じられている。

 しかし私は、普天間問題などで首相がそんなにブレているとは思わない。もともと「常駐なき日米安保」論者であり政権獲得したこの機に将来を展望してじっくり話し合おうとするのは当然であろうし、移転先についても「決めきれない」のではなくて「簡単には決めない」のではないかと思っている。従来の自民政権が決めた線上で処理するのではなく日米関係を見直す。その根底には、その程度で悪化するような日米関係ではないという確信があるように見える。
 ガソリン税暫定是率問題にしても、廃止の方針は変わらないが現下の経済情勢から税収維持は已む無し、ともっとはっきり言えばいいと思う。税収が一挙に10兆円も減ることなど予想も出来ず、時に及んでは「先延ばし」も「前倒し」も「暫定」も必要になるのは世の常だろう。「暫定の暫定」だって起こりうる。それが政治というものだろう。はっきりそういえばいいと思うが言い方が悪く優柔不断に見られているのではないか

 ただ、政治資金偽装問題はダメだ。これは文字通りブレている。旧来からの発言と全く違う。土井問題、加藤問題を追及した延長線上で自らを処理すべきであろう。司法の手に委ねたのなら、司法の判断が下った現在、「会計担当者の罪は私の罪」と認め辞めるべきであろう。
 同時に小沢幹事長の会計責任者も起訴されたし、代表と幹事長双方がこのざまでは民主党は持たないし、折角の新政権もだめになる。二人とも連れ立って身を引くべきだろう。
 首相の金銭感覚、幹事長の汚れた資金関係、いずれも「国民の目線で進める政治」には向かない。首相は辞めることになる場合、何としても幹事長も辞めさせるように「ブレない」で欲しい。
                          

 


トルコ紀行30 ・・・ 「トルコ思い出会」で打ち上げ

2009-12-24 17:39:43 | 

 昨夜、トルコツアーに参加した五人で「思い出会」を開いた。丁度3ヶ月前の923日、トルコ最初の訪問地エフェソスの遺跡を訪ねた。写真を広げてみると炎天下の遺跡を半袖シャツで回っている。昨夜はマフラーを巻きオーバーをまとって集まったが。

 爾来3ヶ月、よくも執念深く紀行文を書きつづけたものだと思っている。一つはブログという連載には格好の手段があったからかもしれない。しかし、何といっても30回も書き続けるにふさわしい内容があったからであろう。ブログは出来れば1000字以内、長くても1200字をメドにしているので(1000字でも長すぎるのだが)、時には書き足りないことがあった。旅のメモや集めた資料をめくるほど、書きたいことが山ほどあったが端折ることも多かった。それでも30回に及んだことは、この旅の素晴らしさを示しているのであろう。写真をたくさんちりばめたこの『トルコ紀行』を、自家用とK家族用の2部作り、昨夜の思い出会に持ち込んだ。
 併せて持ち込んだものが「カッパドキア・ワイン」(写真)・・・、飲み屋に遠慮して小さい瓶1本であったので、5人でほんの一口ずつ舐めるだけであったが。

 それにしてもいい旅であった、というのが一致した意見であった。旅が良かったということは、それを与えてくれたトルコという国が素晴らしいということだろう。とにかく日本などの比でない長い歴史を持つ国・・・、その気になれば汲めども尽きせぬ内容を持っているのであろう。そのことと、実に内容のある解説を続けてくれたガイドフラットさんの評価も高い。

 偉大なトルコ、快男児フラットさん、素敵なメンバーの方々、そしてそれを企画遂行してくれた大三輪さんはじめJTBの方々に感謝をささげ、この旅行記を終えることにする。
 しかし、トルコの思い出が消えることはなく、東京での再会を約したフラットさんとの約束もあり、トルコトのかかわりはまだまだ続く・・・
 だからまだ、トルコに対してサヨナラは言わない。

 
 ラクとカッパドキアワイン

                    


年の瀬の一休止符 ・・・ 映画「コシ・ファン・トゥッテ」に酔う

2009-12-22 16:47:23 | 文化(音楽、絵画、映画)

      

 「モーツァルトは美しい」などと言うと、「今ごろ何を言っているのだ」と子馬鹿にされるのがオチだろう。しかし、「それにしても美しい、何でこんな調べが生まれるのか?」と改めて思った。

 1220日の日曜日などというのは、年末の最終戦になだれ込む最繁忙日で、やり残した会社の仕事の“持ち帰り残業日”であり、且つ、待ったなしの年賀状書きなど溜め込んだ私事を処理するために設定されたような日曜日だ。
 
私も朝からタップリ仕事をするつもりでいたところ、ワイフと娘が映画を見に行こうと言う。聞けば、オペラ「コシ・ファン・トゥッテ」の映画を恵比寿でやっていると言う。このくそ忙しい時に、あんな馬鹿げた話など見てられるか・・・、それより、あんな単純な話が映画などになるものか・・・などと思い、とても行く気は無かった。
 ところが、夥しい仕事は手のつけようもなく、頭は混乱して収拾がつかない。どうせ出来ないものは出来ないのだ! ここは混乱した頭を整理するためにオペラでも聞くか・・・モーツァルトでも聞きながら昼寝をするには映画館はうってつけだ・・・。こう割り切って急遽ついて行くことにしたのだ。

 ところがドッコイ・・・、休むつもりで行ったのであるが休止符どころか流れるような美しい調べ――ソロ、デュエット、合唱、ウィーンフィルの流麗な演奏が絶え間なく続き、その美しさにすっかり酔った。モーツァルトの四大オペラの中でも最も美しい曲だと言われているが、三時間半に及ぶ全編の全ての曲が美しいというのは驚嘆ものだ。グルベローヴァをはじめ主役の男女四人もさることながら、女中役のテレサ・ストラータス、話を進める老博士役のパオロ・モンタルソロ(バス)がよく、すべて文句なし。
 「それにしても、あんな中身の乏しいつまらない話に、どうしてこんな美しい曲を作ることが出来るのか? やはり天才かなあ・・・?」などとつぶやいていると、娘が
 「天才であることは間違いないが、モーツァルトはこのオペラで貴族に挑戦しているのだ。二人のバカ貴族娘に最高の美しい曲を歌わせて、貴族の低劣さを際立たせているのだ」
と言う。そういえば、モーツァルトの後半生は貴族との戦いであったと言われている。フランス革命後の民衆の高揚期に、モーツァルトは民衆の音楽を書こうとし、その対極で貴族の低劣さを題材にしつづけたのである。

 とんだ休止符であった。いや? これこそ価値ある休止符であったのかな。
                    


騒々しい政情 ・・・ 普天間、子供手当てなど

2009-12-20 10:54:13 | 政治経済

 鳩山新政権について、世はこぞって文句を言っている。今まで民主党を支持するような発言をしてきた連中も、重箱の隅をつつくような言い草までして非難しまくっている。
 しかし、まだ発足して3ヶ月しかたっていない。半世紀に及ぶ自民党政治の垢を洗いながらの新政権だ。少々のもたもたなど当たり前ではないか。
 私はそれよりも何よりも新政権に仕事をしてもらいたい。従来の自民政権に比べて大いに頑張っていると思う。もたもたもしているが、もっと見守って成果を出すように応援したい。断っておくが、私は必ずしも民主党支持ではない。田中金権政治の流れを汲む小沢や岡田などが中枢にいる政党を、根底からは信用してない。しかし、今は自民の悪性の垢を流す仕事をしてもらいたいのだ。

 普天間問題など、政権が変わったのだから交渉に時間を要するのは当たり前ではないか。政治学者連中が日米関係の危機みたいなことをいっているが、鳩山にしても日米安保を大前提にした政治家だ。その上に立って、この機に半世紀たった日米関係を話し合おうと言うことが何で危機を生むのか。アメリカだってそれくらいは分かっているはずだ。
 世界に例を見ない広大な基地提供という犠牲を日本が払い、アメリカはその基地を世界戦略の一環に組み込んでいる。その関係をいますぐやめようなんて誰も思っていない(将来的には正していくべきだろうが)。その大前提を鳩山は「Trust me」と言ったのではないのか。
 子供手当ての年収制限問題で、「子供は社会で責任を持って育てる。親の年収に関係なく、しかも手当ては親に払うのではなく子供に払うのだ」という理念は、一つの立派な哲学だと思う。そこが自民や公明がやってきたバラマキと違うところではないか。
 ただ、その上に立って(つまり理念は曲げないが)財源も勘案、過渡期の処理として一定の年収制限に妥協して実施する、など柔軟に処理すればいいのではないか。

 とにかく仕事をしてもらいたい。新しい政策を少しでも進めて欲しい。
                          


トルコ紀行29 ・・・ オリエント急行幕を閉じる

2009-12-18 10:58:48 | 

 前回書いたように、21世紀中葉にはトルコが覇権国に成長すると予測する著書のあることに驚いていたところ、昨夜のNHK『クローズアップ現代』では、126年の歴史に幕を閉じた“オリエント急行”が取り上げられた。題して「さようなら 夢の寝台特急激動史」・・・、

 オリエント急行が生まれたのは1883年。ベルギーの銀行家の発案に基づき、パリを基点にドイツのミュンヘン、オーストリアのウィーン、ハンガリーのブダペスト、ルーマニハのブカレストなどを通り、バルカン半島を経て東洋の国トルコのイスタンブールに至る列車を走らせるというもの。急行とはいえ、当時81時間を要したというから三日と9時間、寝台と食堂車を組み合わせた夢の旅を目指したものだ。
 当時フランスは第三共和制時代で、アフリカ、インドネシアなどへの植民政策に野望を抱いていたし、ドイツは鉄血宰相ビスマルクが率いるドイツ帝国、またハプスブルグ家を中心とするオーストリア・ハンガリー帝国と列強が支配していた。残念ながらわがトルコは衰え始めていたオスマントルコ帝国末期の時代であったが。
 
当然それぞれの国には鉄道が走っており、そこに一台の列車で次々乗り入れ、これら列強の国々を走って東洋のイスタンブールまで行こう、というものだ。中々の夢である。多くの旅行者がこれで旅し、また商人や事業家が出張や出稼ぎにこれを利用したことだろう。有名なのはアガサ・クリスティで、これを舞台にベストセラー『オリエント特急殺人事件』を書いた。

 このオリエント急行が、時代の高速化の中で引退を迫られ、先週の1213日のラストランをもって幕を閉じた。折りしもトルコを旅した者としていささかの感慨を抱いた。同行のK氏は、「出来ればオリエント急行の駅だけでも見たい」と言っていた。氏の旅行目的「東西両文明の結節点を見る」からすれば、この鉄道の発着駅は見ておく必要があったのだが、それを許す時間は無かった、ただ、アヤ・ソフィアからホテルに帰るバスから、その駅(シルケジ駅)を垣間見ることが出来た。残念ながらK氏親娘は地下宮殿見学のために同乗していなかったが。
 「あれがオリエント急行のシルケジ駅だ」と言うガイドの声に、私は慌ててカメラを取り出したが間に合わなかった。しかし常にカメラを構えていたM氏の写真を頂戴したので以下に掲げておく。
 それにしてもイスタンブールは、歴史の盛衰を感じさせる街であった。
                           

       


トルコ紀行28 ・・・ トルコと日本の未来

2009-12-17 20:33:15 | 

 長きにわたってトルコについて書き綴りながら、「トルコと日本は今後どんな国になるのだろう?」と思いつづけてきた。そのようなとき偶然にも、「21世紀の中葉、トルコと日本がユーラシア大陸の中核的国家となる」という大胆な予測をたてた書物に出くわした。ジョージ・フリードマンと言う人が書いた『100年予測』という本である。それによると・・・、

 「・・・中国はこれ以上の長期高度成長を続けることは出来ず、政情不安から毛沢東時代以前の状態に戻り、ロシアは資源国として生きる道を求めるが軍事力の弱さからユーラシア大陸を治めることは出来ずやがて自壊する。それに代わり興隆してくる国は三つ、一つはロシアと中国に沿岸部で接し北太平洋に力を持つ日本、二つはコーカサスから北部へ進出できる位置にあるトルコ、三つはポーランドとバルト三国同盟だ・・・」という。

 特にトルコは、混乱を続ける三大陸の中心に位置し地の利を得ている。ペルシャ湾への支配で石油を支配し、経済力軍事力ともに増強して北にも西にも出て行ける。2040年代にはこの地域の覇権国になっているだろうと予測されている。
 つまり、海に面していることはその先の国々に海を隔てて接していることになり、直接圧力を与え得るということらしい。日本は四方海に面しており、トルコも実にうまく海に面している。ガイドフラット氏がトルコを最初に紹介した言葉を思い出した。

 「トルコは五つの顔を持つ。ヨーロッパの国、アジアの国、黒海の国、エーゲ海の国、地中海の国の五つの顔だ」

 フラット氏はこう説明して胸を張ったが、まさにその五要素が、トルコを21世紀の中核的国家に導くようだ。黒海から北へ(特にロシアへ)、エーゲ海から西へ、地中海からそれに繋がるペルシャ湾(石油)やアフリカへ・・・、と地の利は万全である。
 私は『100年予測』を見て改めてフラット氏の解説の凄さに驚いた。この本は20091015日発行であるので、わが旅行時にフラット氏が読んでいたはずはない。氏の慧眼に頭が下がる。

 もちろんこの書は、21世紀はアメリカの世紀と結論付けている。大西洋と太平洋の両方に面し軍事力に優れるアメリカに勝る国は無い。勃興するトルコ、日本はやがてアメリカと戦争になりその興隆は阻止される。そのアメリカもやがてメキシコにやられる、というのが予測の結論のようである。

 それにしても、トルコと日本の勃興予測には驚いた。
                           

 
 フラットさんを囲んで(アタチュルク空港にて)


素敵だった「山びこの会」忘年会

2009-12-13 14:40:35 | 文化(音楽、絵画、映画)

       

 銀行時代の友人たちの集まりに「山びこの会」というのがある。既に13年の歴史を持つこの会は、実にユニークな生い立ちをしている。
 当初は、山の好きな数人が行き先と集合場所、集合時間だけを決めて、集まった人たちだけで山歩きをしていたようだ。全く片意地の張らない、自由意志だけに基づく会で、その日に行ける人だけが気軽に集まり、少人数で山を楽しんでいたが、そのうち人が人を呼び参加者が増えてきたと言う。
 月一回の行事を重ね年を経るに従い参加者は増え、そのメンバーは70人を超えるに至った。今年新たに五名の新規加入者を迎え、正確には73名になったと言う。
 最早以前のように、「行き先と集合時間だけで集まる」では収拾がつかず、13人で幹事を構成し、参加者を事前に定めながら山行を行なうとか、事故に備えて保険に入るなどそれなりの体裁を整えなければならなくなったが、実に大らかに、楽しい行事を重ねているようだ

           

 昨日、この素敵な会の忘年会に初めて参加した。実は息子と娘が招かれて忘年会の余興に歌うことになったのだ。幹事の中に娘が主催した「オペラの会」や「歌曲・カンツォーネの会」などに来てくれた人が居て、「是非ともお嬢さんに歌ってもらいたい」と頼まれたのだ。会場にピアノが無いこともあって伴奏役にギターを弾く息子が引っ張り出され「兄弟公演」となった次第。
 結果は参加者に大変喜んでいただけたようだ。息子と娘の演奏が会員の雰囲気にマッチしたこともあったようだが、何よりもそれを受け入れる会の人々の姿が素晴らしかった。山を趣味としながらも写真のプロやオペラ通や料理通など様々な個性をもつ人たちと聞くが、会の雰囲気は、実に自制が効いていて、高い品格と知性に満ちていた。

 そこに、13年も続きなおメンバーを増加させ続けている秘密があるのだろうと思った。何とも清清しい一夜であった。
                           
     


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