旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

わが国最古の酒蔵「須藤本家」を訪ねる(つづき)

2018-01-29 17:29:54 | 


 55代蔵元須藤源右衛門氏のお話をタップリと聴き、美しい蔵屋敷を後にして、これまた蔵元ご推薦のそば屋『そば処なが井』に向かう。私は各地を旅する際、多くの場合、その地の酒蔵の蔵元推薦の食事処で飲んできた。それらのお店は、ほぼ100%満足の行く店であった。蔵元が自分の酒を置く店は、それ相応に蔵元の味覚に適う店であるということだろう。
 もちろん、この『そば処なが井』も立派な店であった。みんな「けんちん蕎麦」などを注文していたが、私は「かもなん蕎麦」を大変美味しく食べた。メニューを見ると、酒は当然ながら『郷乃誉』、〝純米大吟醸300ml、1600円”とある。運転する人に悪いのでもちろん注文はしなかったが、このような大衆的そば屋にどんな酒を置いてあるのだろうかと興味を抱き、「飲まないで持ち帰るのだが一本くれ」と注文した。店主は、「蔵を訪問したものが、何故蔵で買わなかったのか」というので、「購入するのを忘れたのだ」と告げると、「店では倍の値段をつけている。ここで飲まないのにそれを頂くのは悪いっから1200円におまけする」と割引してくれた。気持ち良い、良心的な振る舞いであった。
 「笠間市地酒を笠間焼で乾杯する条例」というリーフレットによると、この店以外に、菜食酒房『吉』、割烹・鮮魚『かめや』、『やま膳』など、よだれが出そうな店が『郷乃誉』とともに並んでいた。これは一度、泊りがけで笠間市を訪問し、そのいずれかの店で、ゆっくり飲む計画を立てねばなるまい。
 たっぷりと腹ごしらえをして、最後の行程「笠間稲荷神社」へ向かった。何とも歴史を感じさせる神社で、おみくじを引くと「吉」と出た。メデタシ、メデタシ…

 
   日本最古の蔵よ、さようなら…

   
       そば処『なが井』さんの美味しい蕎麦で腹ごしらえ
  
  笠間稲荷神社。参道のお店で「藁まき納豆」も買いました


わが国最古の酒蔵「須藤本家」を訪ねる

2018-01-25 21:05:17 | 


 何十年ぶりかの大雪に襲われ、雪に弱い東京都民としてはややたじろいでいたが、予てから計画していた須藤本家(茨城県笠間市)の酒蔵見学を実行した。大雪の翌々日、24日は雲一つない快晴であったが、路面凍結のため高速道路の乗り入れが禁じられ、ようやく乗れた美郷インターまで一般道を走るトラブルはあったが、約1時間遅れの行程で、無事に蔵見学を行うことができた。
 須藤本家は、開業が永治年間、1140年年代というので平安末期、900年近い歴史を誇る日本最古の酒蔵である。残念ながら、その蔵と歴史を共にする樹齢9百年の欅は、先の北日本大震災で倒壊したというが、樹齢を誇る樹木で覆われた屋敷は何とも歴史を感じさせる。
 予てからお願いをしておいたが、55代蔵元須藤源右衛門氏のお出迎えを受け、我々5人のために蔵元直々のご案内を頂いた。この蔵は生酒主体の製造のため、雑菌を恐れ蔵の内部の見学はできないが、ガラス越しに「米の蒸し器」の作業が見える部屋で、スライドなども使用しながら、蔵の歴史、酒造りの工程、酒米や酒の種類など、蔵元の直々の説明を受けた。
 歴史や酒造りの一般論はさておき、その中で語られた蔵元の「酒哲学」が心に残った。その主要点だけを記しておく。
・酒は米、米は土、土は水が育てる。つまりその地そのものが、その地の酒を育てる
・酒は、その地に特有のものであって、その地の米がその地の酒を育む
・当社は、蔵の半径5キロ以内で作られる米で生産する。主な種類は亀の翁系のコシヒカリ
・酒というと山田錦となるが、これは兵庫の米、この地に持ってきてもうまくは育たない。この地の水に合うはずがない。雄町は岡山県、五百万石は富山の米だ。酒造好適米など、近時に作った言葉で、そのような言葉は信じない。飯米であろうが何であろうが、その地の米で造るのが一番いいのだ。マンゴーがおいしいからと言って日本で作っても育たない。
・酒は、その地の神にささげるために造る。だから神酒(みき)という。「みき」の「き」は「気」に通じる。その地の気候、気風、空気……、つまり、酒はその地の「気を醸す」のだ。もっと言えば、「その地の風を醸す」のだ

 これらの話を、スパークリングに始まり、純米大吟醸の生酒と火入れ酒の3種類の利き酒をさせてもらいながら語ってくれtた。その後、樹齢何百年という樹々が囲むお庭を案内してくたが、実に夢のような2時間であった。
 酒の美味しさは、これまで味わったものと種を異にし、まさに筆舌に尽くしがたく、それこそ、この地を生かした酒造りという源右衛門氏の酒哲学が生み出したものだと思い知った。

 

         

  
  「酒は、その地の風を醸すのだ」と語る須藤蔵元


 
 酒の命は水…、900年続く三つの井戸の一つ。あと二つは内井戸
           
     屋敷内にある松尾神社(酒の神様)
   
  ポールの向こうの落葉した木は、ハナミズキの巨木

  
    55代須藤源右衛門蔵元を中心に記念撮影


 
 


はばたけミャゴラトーリ!

2018-01-18 14:35:51 | 文化(音楽、絵画、映画)



 年が明けて、娘のオペラ普及団体ミャゴラトーリも動き始めている。
 5日には、主力メンバーが我が家の音楽室に集まり、新年会を開いて気勢を上げた。高橋(ソプラノ)、岩淵(メゾソプラノ)、寺田(テノール)、須藤(バリトン)、大沼(バリトン)、大澤(バスバリトン)、それに、舞台監督の荒牧の各氏だ。いずれも声量は日本一だが、酒量もそれに負けない。名前は伏すが、内2名は翌朝5時まで飲んでいた。私たちも加えてもらったので提供した、獺祭スパークリング、泡盛久米仙、バローロのグラッパは喜ばれた。中でもバローロのグラッパは友人のイタリア土産であったが、飲み残しを提供すると、さすがにオペラ歌手としてイタリア生活を経験する人たちだけあって、大変な珍重ぶりであった。
 14日は府中の森芸術劇場に出かけ、オーケストラ「☆の王子様」の第45回定期演奏会を聴いた。演奏したのが「カヴァレリア・ルスティカーナ」…、見るとその歌手たちは青柳素晴、須藤慎吾、岩淵真理というミャゴラトーリの常連歌手たちが主演していた。3年前のミャゴ公演を再現するありさまだった。
 2月3日には恒例の「支援者の会」を広尾で開く。昨夜は我が家で歌合せをやったようだ。私は、これまた恒例の酒担当であるので、どんな酒を選ぶか頭を巡らせている。5月には、岩田達宗演出の第5弾として「ドン・パスクアーレ」を公演うる。これは、従来の「小劇場演劇的オペラ」を一歩進めて、より小劇場のライブハウスで4日公演、つまり「ライブハウスオペラ」ともいえる新しいジャンルに挑戦するようで、その準備も大変らしい。場所は吉祥寺のスターパインズカフェ。
 楽しみなことである。

                
                 
     2018年1月5日のミャゴ (テラッチさんのフェイスブックより)
      



今年はどんな年になるのだろうか … 経済

2018-01-12 17:33:01 | 政治経済

 



 昨年末から年初にかけて、株式相場は上昇しっぱなしである。バブル期の3万円越えに近づきつつある。それに応じて、201212月から拡大局面に入った日本経済は、ついに「いざなぎ景気」(196511月から19707月まで)を超え、戦後2番目となったとの発表もある。
 しかし、果たして実体経済は、言われるように好調に推移しているのだろうか? 少なくとも一般国民の生活実感には、そのような好調さの気配さえない。それは以下の数字が示しているとおりである。
 ・設備投資の伸び:いざなぎ景気では24.9%に対し今回景気3.2
 ・個人消費の伸び:いざなぎ景気では9.6%に対し今回景気0.6
 その結果、実質賃金は12年~16年の4年連続前年比マイナス、16年にわずか0.4%プラスとなったがその後はマイナス気味。家計消費支出も16年まで3年連続前年比マイナス。(以上は、15日付しんぶん赤旗の東京工大工藤昌宏名誉教授の発言による)
 株価の高騰は、日銀の異次元緩和によるジャブジャブ資金と、年金資金のつぎ込みなどによるもので、経済の実態を反映したものではなく、一部金持ちと大企業を潤わせるだけとなっている。実質賃金はマイナス、消費支出は伸びない一般国民の生活に比して、金持ちや大企業はもうかる…、その結果は膨大な格差を現出する。
 ・大企業の内部留保:初の400兆円台(財務省法人企業統計)
 ・ワーキングプア :史上最多1139万人(国税庁給与実態統計)

 大企業は国家予算に近い内部留保をため込んできたが、その反面にはワーキングプア(年収200万円以下の労働者)1140万人近くを生み出しているのである。働かないのならまだしも、一生懸命働いても年収200万円以下というワーキングプアが、実に全労働者の24%、4人に一人の割合に達しているのである。
 この格差と貧困問題をどうするか? これは今年だけでなく、前回の政治課題とともに、「21世紀の市民革命の課題」(浜矩子同志社大学大学院教授)と言えるのであろう。


今年はどんな年になるのだろうか … 政治

2018-01-06 14:45:04 | 時局雑感



 前回の大晦日の投稿で、「いつものように暮れていく…」と書いたが、その延長線上で、いつものように今年も明けた。「貫く棒の如きもの」(虚子)かどうかは知らないが、一夜明けて世界が激変すはずもあるまい。
 ただ、今月の予定表を見ると、新年会が五つ、催しへの参加が二つ(オペラと落語)、それに酒蔵訪問(茨城県笠間市の須藤本家)まであるので結構忙しく、例年になくあわただしい年初となりそうだ。4月で83歳になる爺さんにとっては、ちょっと過密スケジュールかもしれない。
 それにつけても、今年はどうなるのだろうか? あまりいい予感はしない。
 先ずは北朝鮮とトランプだ。北朝鮮は民意に頼ることができないから、ひたすら金正恩が自爆することのないように祈るのみだ。まあ、あの力では、世界を相手にして勝てるはずはない、ということぐらいには気が付くのではないか?
 問題はアメリカだ。こちらは、トランプはどうしようもないが、国民に目覚めてもらいたい。20世紀以降、世界をリードしてきた大国アメリカの国民は、今こそ大国の果たすべき責任に目覚めて、平和と民主主義の旗手としてトランプの暴走を抑えてくれないか? これだけが願いである。
 もちろん、願ってばかりではいられない。日本も安倍晋三首相の暴走を抑えなければならない。アメリカ・ファーストとトランプに盲目的に追従する安倍首相は、年頭早々「今年こそ憲法改正を発議する」と息巻いている。何としても自衛隊を軍隊に仕立て上げ、戦争法を肉付けして戦争のできる国にしたいようだ。これには、絶対反対の声を上げ、阻止の行動を起こす必要があろう。
 齢をとったなど言ってられないあわただしい年になりそうだ。
 明日は早くも松がとれる。


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