桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

名月に乗って

2021-09-22 | Weblog
昨日は仲秋の名月。寝る前に見た月は白い光を放っていた。
その美しい名月に乗って義母が往った。95歳、何時も優しく微笑んでいる人だった。
あれは恵子さんと結婚することになって挨拶に行ったとき、仲田家には義父と義母、それに東京から呼ばれた義兄が待っていた。
硬い表情だった義父と義兄。義父の眼は強い光を放つように俺を見ていたが、義母は心配そうな眼をして俺を見た。
それから勘当騒ぎを経て、やがて俺を受け入れてくれた義父と義母だったが、最初の心配そうな眼は、すぐに笑った眼に変わった。
それ以来、会うたびに優しくて温かさを感じる義母だった。
体調を崩して連れ合いが実家に泊まり込んで介護をするようになり、きっと苦しいことや辛いときもあったろうが、1度も苦痛を訴えなかったそうだ。
闘いが終結したことを喜んでくれたが、それから数日して意識を失って入院。たった数日で逝ってしまった。
病院で会った顔は穏やかで綺麗だった。家に着いたらば、更に安らかな顔になって、今にも目が覚めたと言って起きて来そうだった。
美しい名月の夜、義母は旅立った。

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2 コメント

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心よりお悔やみ申し上げます。 (やじまあきこ)
2021-09-22 15:50:23
心からお悔やみ申し上げます。
淋しくなりますね。

たたかいの終結を確認して逝かれたのですね。
お義母様の、強い意志を感じます。
恵子さまの上にも慰めがありますように!
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Unknown (ちえば)
2021-09-23 15:18:48
そうですか?静かで優しく温かいお義母さまは天国に召されましたか。いつまでも生きていてほしかったですね。お会いしたことはありませんが、きっと恵子さんのような方だと思います。国賠勝利を見届けてもらって、昌司さんの体の回復を見ていただけて本当に良かったと思います。心からご冥福をお祈りします。
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