桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

読売新聞で2つ

2014-11-07 | Weblog
「出生率を1、8に引き上げ」と1面トップの大見出し。「政府目標地方創生の骨子案」と、並んで小見出しがあった。
こんな記事、何の意味があるのだろうか。政府が出生率を決めたからと言って子供が増えるものではあるまい。
日本の人口減問題は、確かに国の存亡に繋がる重要事項だが、産科医院の減少など、女性が子供を産み育てる環境が悪化している。自民党が地方創生法を作ったからと言って、今までと同じに空念仏では、何も産み出せるものではない。
全く中身の無い記事をトップに掲げるところが安倍応援団新聞たる所以だよなぁ。
慰安婦特集もあった。
これには誤導がある。
「いつから外交問題化」とした解説で、『92年1月11日の朝日新聞が韓国世論に火を付けた。
と指摘するが、そうだろうか。
『陸軍省通達文書が発見されて「慰安婦を募集している民間業者が問を起こす例が少なくないので、軍が統制、監督するように」という内容はあったが、強制連行を裏付けるものではなかった』
と解説しているのだが、この解説者は文章の読解力が足りないのではないか。
「慰安婦募集で民間業者が問題を起こす例が少なくない」とは、では、どのような問題だと言うのだ。書くまでもあるまい。暴力や拉致的なことだろう。判るだろうが「少なくない」とは、官僚言葉で「多い」と言うことでもある。暴力的に拉致的に慰安婦にするような例が、沢山あったと言うことだ。
確かに、日本軍が直接に指揮、命令はしなかったとしても、現に「募集の統制、監督」をし、日本軍規の中で「慰安所」を運営したのではないか。これに日本政府の責任はないと主張することは、俺には、全く理解出来ない。
また、「朝日の記事を始めとして、挺身隊を慰安婦と混同する誤解もあって混乱を助長した」
と書くが、その誤解は読売新聞にもあったはずだ。朝日だけの社名しか書かないのは誤導になろう。
そもそも「朝日が火を付けた」というが、発端は、書かれるように「91年に韓国人元慰安婦が日本政府に賠償を求めて提訴した」ことにある。ここが始まりなのだ。
そこに「吉田虚言」が加わり、「確かに火を付けた」1面はあるだろうが、日本軍に従事する慰安婦を、日本軍に変わって募集していた民間業者なのだ。それを慰安婦にされた人たちや、その支援者が「日本軍が行った」と思うことは、ある意味、自然な考えだろう。「日本軍とは無関係」と否定することは、とても無理な話だろう。いかに朝日攻撃でシェアを広げたい思いはあろうとも、このような記事は、いつかは読売自身に問題として降りかかる記事になりはしないだろうか。
我が布川事件や冤罪事件に頼りとなる記事を書いてくれる読売新聞なのに哀しい話だよなぁ。
この問題に詳しい柳田さんの見解を聞きたい気持ちだ。

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1 コメント

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私見 (柳田 豊)
2014-11-08 00:10:13
 最初に断っておきますが、我が家では読売新聞を購読していないので、その読売の記事が適正かどうかについての見解は言及しないことにしますので、ご了承ください。

 陸軍省通達ですが、「慰安所に娼婦を連れてくる業者の中には、本人の同意なく無理やり女性を連れてくる者がいるから、同意しない女性を連れてくる業者は拒否せよ」ということです。
 要するに「女性を強制連行するような業者を認めるな」という内容のものです。
 それを朝日新聞は「軍の関与」と言う一点にこだわるあまり、「軍による強制連行を示す文書」として報道してしまったので、現在集中砲火を浴びているわけです。
 なにしろ、「強制連行するな」という通達をもって、「強制連行の証拠」として報道してしまったわけですから、朝日新聞の黒歴史として残るのは仕方ないでしょう。
 新聞は事実を客観的に報道するのが使命であり、勝手な憶測はもってのほかなのですから。
 袴田事件の検察並みの曲解です。

 軍の指令に関しては、賛否両論でしょう。
 慰安所など褒められたものではありませんが、慰安所がなかったら性欲を持て余した男たちが近隣の女性たちに襲いかかる事件が増加します。
 占領期の米軍とか、満州国に攻め込んだロシア兵とか、ベトナム戦争時の韓国軍とか、現地の女性を強姦した事件が多発した例は枚挙に暇がありません。
 死と隣り合わせの戦地では男たちを野獣にする他ないので、「紳士の軍隊」は、職業軍人ならまだしも、徴兵された者たちで作るのは至難の業でしょう。
 かくして現在に至るまで、軍司令官の頭を痛めている問題となっているわけです。
 戦争や軍隊がある限り、解決しようのない問題かもしれません。
 そう考えると、当時の人たちにとっては切実な問題で、彼らなりの妥協なのでしょう。
 だからこそ、米軍資料に「高給取りの娼婦たち」というものもあるわけでしょう。数少ない女性を乱暴に扱うわけには行かなかったでしょうし。
 無論、待遇は場所によって差があったとは思いますが、軍が運営していたのではなく、業者が運営していたのですから、彼らの匙加減しだいだったのでしょう。
 軍がどうこう言う人は多いのに、業者について言及している人が少ないのも公正さを欠いていると言えます。70年前の業者を探し出すことなど不可能ですし、訴訟を起こしても一文にもならないわけですから、軍隊のせいにして、日本政府から慰謝料を請求する流れになりがちなことも考慮すべきでしょう。
 
 
 このように、慰安婦の存在について論じてきたのに以前、私に対して「慰安婦などいなかったと言う奴がいる」などと文句をつけたアホがいました。
 まあ、名前を名乗っていたらその名で呼びますけど、無記名で男か女かもわからないし、見当はずれなコメントだったからアホと呼ぶ他ない。
 私を戦時中の日本の悪行から目をそらすやつだと決め付けて「自分はその悪から目をそらさない立派な人間だ、柳田とは違うんだ」という自己陶酔にほかなりません。
 そして、その思い込みの強さゆえに、自分の思い込みを私に対して投影したということです。朝日新聞の慰安婦報道のように。そうでなければ、吉田証言を記事にするわけがない。
 さらに言えば朝日新聞の報道をもとに、捏造された吉田証言を検証せずに根拠として慰安婦たちを焚付ける市民運動家たちも同様です。思い込みが強くなければ吉田証言を真実と思うわけがないし、ましてや訴訟を起こしたりもしないでしょう。
 ついでに言えば、「こいつは犯人に違いない」と冤罪を作る検察も同様です。

 彼らに共通するのは、思い込みが強く、証拠があっても、自分の思い込みを投影して解釈するため曲解しやすく、反対意見には耳を傾けない、うぬぼれが強いご都合主義者たちです。

 朝日以外の新聞も、は確かにそうなのですが、30年も引っ張ったのは朝日新聞くらいでしょう。産経新聞は90年代の前半で疑問を呈して反証の記事を掲載し始めましたから。
 産経は朝日とは違った意味で報道方針に問題を感じることもありますが、朝日と反対の方向性であることを売りにしているので、慰安婦問題に関しては産経がスクープを連発することになったという、皮肉な展開になってしまいました。
 
  
 この問題はあまりにも暴走する人たちが多く、収拾がつかなくなっています。ソウル大学の歴史学教授が「彼ら市民団体は歴史の真実を知るためではなくて、日本と喧嘩することが目的になっているので、三年で手を切った」と言い切っているほどです。
 
 キリストは「罪のないものから石を投げよ」と言いました。韓国はキリスト教徒が国民の半数近くを占めているほどですが、彼らは遠慮なく石を投げ続けてきます。
 吉田証言という冤罪を広めていながら石を投げ続けるような人たちと、どうやったらまともな話し合いができるのか、想像もつきません。
 おそらく、私などが何を言っても「最もらしい言い訳」としか取らないでしょう。

 もし、朝日新聞が本気で反省して再起する気なら、彼ら石を投げ続ける韓国人たちを説得し、「20万人が強制連行された」と書かれた碑が埋め込まれた慰安婦像を撤去させるくらいはするべきでしょう。
 莫大な費用がかかると思いますが、本社ビルを売り払ってでも費用を捻出して、行動すべきでしょう。それくらいやれば、「朝日が本気になった」と認められるのではないでしょうか。
 冤罪を30年以上放置し続けてきた以上、代償が小さいわけがないのですから。
 
 
 それは、桜井さんが誰よりもよくご存知でしょう?


 
 
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