桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

清水潔氏の本

2018-10-29 | Weblog
「南京事件」を調査せよ、を読んだ。
日本テレビで素晴らしい番組を制作された清水潔さんは、その取材経過などを書かれた書籍を出している。
「真犯人はそこにいる」は、足利事件として有名な事件を調査した結果、真犯人を発見したことを書いていて衝撃的だが、その事実を無視して真犯人を逮捕しない警察の抱える深い闇をも教えてくれる。
南京事件を調査せよ、は、日本国内では幻とか騒がれる日本軍の虐殺行為を、あらゆる方面から調べたものだ。安倍晋三や取り巻き、それにネット右翼は嘘だと主張する南京虐殺は事実だ。あった。
当時の南京市には20万人しかいなかったのに30万人が殺されるはずはないとする南京事件を幻とする反論は、問題は市内だけではなく、南京市周辺や南京市に至る戦闘経過で捕虜にした中国人をも殺害した事実が書かれいる。
今も続く日本官僚の得意技である公文書抹消行為は、この南京事件でも行われていて、その大虐殺の中心的な2日間の文書が欠落する事実を見せられると、日本人であることが哀しい思いにさえなる。
どのような事実も消せない。消えはしない。人間であれ、組織であれ、犯した過ちを素直に認めなければ、何も始まらないし、生まれないのだ。
南京事件を調査せよ、は、その事実を幻と思う人は、必ず読むべき本だ。

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4 コメント

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その見方は公正でしょうか? (柳田 豊)
2018-10-30 22:02:09
 私も読みましたが、桜井さんは問題点を取り違えてますね。
 多くの人が問題視しているのは南京市の軍人ではない民間人30万人が虐殺されたかどうかですから。それについては、本書には何一つ書かれていない。
 読み方が甘かったようですね。

 捕虜の虐殺については、元兵士たちの証言からして確かでしょう。なにしろ、蒋介石が兵士たちを捨てて逃亡して、大勢の捕虜が残されたわけですから、食わせる余裕もないし、釈放したらまた敵兵となってしまうしで処置に困ったわけです。
 それについては、別に否定するつもりもなければ、正当化するつもりもありません。私もそれらについては今まで否定したことがないですし、違うという人は根拠を示してください。

 ただし、中国がことあるごとに言っているのは民間人30万人の虐殺の方です。『日本軍は無抵抗の非戦闘員を無慈悲に殺す悪魔だ』と言っていることのほうです。普通、『南京大虐殺』と言えば、こちらを想像する人が大半だと思いますが。
 本書には、こちらについての資料が見当たらない。
 
 実際、この本について、「30万市民の虐殺の根拠がない」と述べている人がずいぶんいますよ。
 その人たちに反論の余地を与えないほどの資料を示さねばならないのに。
 そもそも、30万人もの非戦闘員を殺す武器弾薬の余裕があったのかと言いたい。広い中国を転戦していくのに、そんな無駄遣いが出来るのかという疑問に誰も答えようとしません。
 銃を使わずに軍刀や銃剣だけで、と考えるかも知れませんが、本当に30万人も殺傷したら、刃こぼれしたり、血糊がついたり、目釘(刀の刀身を柄に固定させる釘)がもろくなったりで、一万振りあっても足りなくなるでしょう。
 その、補充に関する記録などを示さねばならないはずですし、兵士たちの日記にも「武器が新しく補充された」とか書かれているはずですが。
 そのため、桜井さんには意外かも知れませんが、台湾では南京大虐殺を信じない人が多いようです。説明がつかないですからね。

 『数の問題ではない』などと言わないでくださいね。
 中国の歴史学者が「いくらなんでも30万はあり得ない。それを示す根拠がない」などと言えない事態になっているのですから。
 実像を大きくゆがめるようなことなのに、歴史学者たちが自分が信じてもいないことを言わされるのですから。
 中国の歴史学者たちも大変です。

 桜井さんが中国の学者たちへの言論弾圧をどうでもいいと思っているのなら、これ以上は言いませんが。
 
 
 
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お久しぶりです! (桜井)
2018-11-05 14:56:47
柳田さんは、何時も冷静で的確な議論をする。だから俺は信頼してるが、今回の指摘には勘違いがある。
清水さんの本には、中国の主張する市民が30万人虐殺されたとは書いていないし、中国の主張が正しいとも書いていない。俺も同じだ。捕虜を含めた虐殺があったと書いているだけだ。
そして、それが事実だろうと俺は思っている。しかし、日本で南京虐殺の幻を主張する連中は、その事実を認めない。
30万人だから虐殺、3万人だから虐殺ではない、とは、まさか柳田さんならば言わないと信じてますが。
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不足を (桜井)
2018-11-05 15:17:57
そう、柳田さんは虐殺を認める。でも、中国の主張を許せないようだが、独裁国家の主張に目くじら立てても仕方ないだろう。
俺は、そう思っている,,
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補足 (柳田 豊)
2018-11-09 23:53:02
  「日本国内では幻とか騒がれる日本軍の虐殺行為を、あらゆる方面から調べたものだ。安倍晋三や取り巻き、それにネット右翼は嘘だと主張する南京虐殺は事実だ」と桜井さんは言っているわげです。 
 そうなると、普通、「南京虐殺」と言われている南京市民30万人の虐殺について述べなければならないはずです。
 捕虜の虐殺について否定している人は、ネット右翼では見たことがないですね。そもそも、細かく調べる人でないと、そこまで関心を持たないでしょうし。
 そもそも、清水氏の著書を手に取った大半の人は30万市民の虐殺の有無をどう論じるかを期待していたと思いますし、ネットで調べると、そのことに関して検証していないから期待外れだったという人も多かったようです。

「独裁国家の主張に目くじら立てても」と桜井さんは大人の対応のつもりでしょうけど、中国国内で言論弾圧に遭っている人たちのことを思うと無責任に響きます。
 そもそも、そういう国にこそ、冤罪で苦しむ人々が無数にいるはずです。目くじらを立てる、というより、冤罪をなくすなら、直言しないとダメじゃないのかと思いますが。
 
 大体、お互いが自由に研究発表出来ない状況で、正しい歴史認識もへったくれもないでしょう。
 
 しかも、引用している文献にも問題があります。
 185ページに朝日新聞の今井正剛氏の手記がありますが、この記者、かなり評判が悪く、同じ朝日新聞の同僚から「自分で見て書いていない。危険な前線には出ていない」「彼は当時南京には行っていない」などと言われている人で、信用できる人とは言えそうにないです。
 清水氏は、それを知らずに引用したことになります。専門家でなかったため、やらかしてしまったのでしょう。
 何より、彼の著作は既存の南京事件関連の報道や著作のつなぎ合わせという印象が強いです。「目新しいものが何もない」と言う声もありました。著者が自分自身で取材することが肝心なのだ、と言うのですが、素人ゆえに限界があったようです。

 虐殺があった無かったかという前に、著作者の検証がどこまで当てになるのか、です。

 真実を見極めるのは至難の業です。
 だからこそ、冤罪もなかなか消滅しないわけでしょうけど。
 それこそ、桜井さんが検察に対して抱いていることと同じですね。

 
 
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