桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

日野町事件の再審開始決定

2018-07-12 | Weblog
袴田巌さんに対する考えられない取り消し決定があった後だから、昨日の決定は緊張した。
大津地裁の正門前には人が溢れ、暑いから、俺は裁判所内で決定を待つことにした。
そこには数名の記者もいた。
少し待つと、長く日野町事件を支えた関西大学教授の里見さんも来た。
弁護団と一緒に裁判所内に入ってきた阪原家のみんなに会うと、口々に「来てくれたんか!怖い!」と言う。
だよな、あの大島隆明決定を考えれば常識が通用しないこともある。証拠捏造などが明らかになり、これで勝てる!と思えばこそ、負けるかも知れない長年の裁判に対する不信は、怖さになる。
「大丈夫、絶対勝つから胸を張って行って来い!」と激励したらば、「判った!じゃあバッグを持っていて」と、長女のミワちゃんは書記官室へ行った。
2時30分が決定書の交付。
1、2分後には、結果を知らせる旗を出す弁護士が来ると待つが、3分、4分、来ない!?5分、来ない!
これは負けたか、そう思っていると、少し早足の靴音がした。
裁判所職員に先導されて2人の弁護士。右手に旗。明るい顔だ。
里見さんには「弁護士が走り出せば勝ち。歩いたらば負け」と言っていたが、職員に何かを言われて外に出た弁護士は小走りになり、勝った!
フラッシュが続いて、救援会の旗が揺れた!
笑顔で弁護団長を先頭に戻って来た先生方と、固い握手!
「サクライさん!」涙のミワちゃんとハグ。コウジとは堅い抱擁。
泣いたなぁ。
それからは報告集会に弁護団記者会見、祝勝会と続いた。
勝利は、楽しいエピソードも生む。
5人への決定書交付だから、その内容を見るまで、時間が係ったらしいが、最初に決定内容を見たミワちゃんが、ヨロヨロと崩れる感じで座り込み、泣いたらしい。
それを見た弁護団長、「あかんかったんか?」と泣きそうな顔をしたとか。すぐ、隣の弁護士が指で丸サイン。皆さんが喜んだとか。
「お前の泣き方が悪い。あれは負けた泣き方や!」と姉妹で言い合う隣にいて、しみじみと勝利の喜びを味わった。
その姉妹が語る怒りは、金庫投棄現場検証写真を入れ替えた警察に対するものだった。
阪原弘さんは「犯人が投棄した金庫の場所を案内した」として有罪になった。が、ネガを見たらば、18枚の現場検証写真のうち、9枚が帰り道と判った。入れ替えた偽造だ。
事実調べに呼ばれた写真入れ替えの警察官は「良くあることだ」と嘯いたらしい。
「後ろから石を投げ付けたかった!」と怒るミワちゃん。
この警察官、正直だ。
多分、証言の通りに警察では「良くあること、良くやること 」なのだろう。日常的に証拠に細工をして事件資料を作るのが、日本の警察なのだ。
しかし、こんなことで犯人に作られ、死刑にされたり、無期懲役にされる冤罪被害者は堪ったものではない。「冤罪被害者の会を作って司法改革を求めよう」という話になった。
冤罪を作った責任を問わなければならない。そう強く思わせた日野町事件の決定だった。

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