スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

女流王位戦&断念する場合

2023-05-17 19:23:08 | 将棋
 札幌で指された昨日の第34期女流王位戦五番勝負第二局。
 里見香奈女流王位の先手で5筋位取り中飛車。伊藤沙恵女流四段が向飛車にしたのをみて,先手は左玉から飛車を2筋に戻しました。結果的に後手の向飛車銀冠に先手が5筋位取り左美濃のような対抗型に。ただ2筋の歩は後手が伸ばす形です。
                                        
 後手はここで☖3五歩と突きました。ここは☖2六歩も有力で,そちらを選ぶべきだったかもしれません。
 先手が☗4五飛と取ったとき,手の流れとしては☖4四銀だと思うのですが,やりにくかったとのことで☖4四歩と打ちました。なので先手は労せず☗3五飛と取れることに。
 次に☗2五飛とぶつけられると困るので☖3三桂ですが,これはいかにも苦しげな感じを受けます。先手は☗5四歩☖同歩と角筋を通してから☗4五歩。☖2四飛の受けに☗2六歩と突きました。
                                        
 これで飛車交換が避けられない形になり,玉の形の関係から先手が有利になりました。後手は攻め合いに出ましたが先手の攻めの方が早く,そのまま押し切りました。
 里見女流王位が勝って1勝1敗。第三局は25日に指される予定です。

 第三部定理三九によれば,ある人間に対して憎しみodiumを抱いている人間は,憎んでいる相手に害悪を与えようとします。しかし,その害悪を与えることによって,自分がより大なる害悪を被ると表象するimaginari場合は,この害悪を避けるために,憎んでいる相手に害悪を与えることを断念します。これは分かりやすくいえば,だれかを憎んでいて殺してやりたいくらいに思っていても,実際に殺してしまえば犯罪者として服役しなければならないので,その殺人を断念するというような場合です。この,自分の害悪を表象したときに感じるのは,第三部諸感情の定義一三不安metusです。ですからこのときにこの人間のうちに生じていることを感情論として説明すれば,この人間のうちに生じた不安という感情affectusが,第四部定理七の様式によって,憎しみという感情を抑制しあるいは除去しているのです。
 このとき,不安という感情は,ある表象像imagoから生じる感情なのですから,それを感じている人間の受動passioを意味します。これは表象像が混乱した観念idea inadaequataであることに注意すれば,第三部定理一から明白だといえます。よって,ある人間が憎んでいる相手に対して害悪を与えることを断念するということがあったとしても,それはその人間の能動actioであるとはいえません。この場合でいえば,害悪を与えることを断念する人間の力potentiaよりも,不安という感情あるいは不安という感情を生じさせる自分が被る害悪の表象像の力の方がより多く表現されているからです。
 もちろんこの断念が,憎しみを感じている人間の能動によって生じる場合がないわけではありません。他人に害悪を与えることそのものが自身にとって悪malumであると十全に認識した人間がそのことによって害悪を与えることを断念するならば,これはその人間が十全な原因causa adaequataとして認識した事柄の力が表現されているといえますから,その人間の能動であることになるからです。よって憎しみを感じている相手に害悪を与えることを断念するのは常に受動であるということはできません。しかしだからといって受動によってその事態が生じないというわけでもないのです。
 ただし,このことは力の表現すなわち能動と受動という観点での話です。

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