スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

ドゥーニャ&文通の期間

2020-08-17 19:07:27 | 歌・小説
 『『罪と罰』を読まない』ではスヴィドリガイロフのソーニャになり得た存在として指摘されているのが,ラスコーリニコフの妹のドゥーニャです。ドゥーニャは愛称で,ドゥーネチカが本名です。
                                        
 『罪と罰』に登場するのは第二部ですが,実質的に描かれているのは第三部の冒頭からです。ドゥーニャは母親と一緒に一家の故郷に住んでいて,ペテルブルグに出てきたラスコーリニコフを訪ねます。母親は3年も別れていたと言っていますから,おそらくこのときが3年ぶりの再会であったのでしょう。
 このとき,ドゥーニャはルージンという男と結婚することが決まっていました。しかしラスコーリニコフはその結婚を望んでいません。ドゥーニャが一家の経済的事情によって嫁がざるを得ない状況にあるから結婚するのであって,そのような結婚は卑劣であると思えたからです。この結婚に関する話が,第三部の冒頭の親子3人の話の中心です。このとき,そこにはラスコーリニコフの唯一の親友といえるラズミーヒンが同席していました。ラズミーヒンはドゥーニャに恋心を抱きます。ラスコーリニコフもラズミーヒンのことを応援します。ただこれは微妙なところもあって,ラスコーリニコフがドゥーニャにルージンとの結婚を諦めさせるためにラズミーヒンを利用した,というような読み方も可能かと思います。
 第三部の最後に登場するスヴィドリガイロフは,かつてドゥーニャを家庭教師として雇っていました。その頃は妻があったのですが,その妻は死に,というかおそらくは殺し,ドゥーニャを追ってペテルブルグへ来たのです。要は妻があった頃から,スヴィドリガイロフはドゥーニャが好きだったということになります。
 ルージン,ラズミーヒン,スヴィドリガイロフの3人に惚れられるという役回りを与えられていますから,分かりやすくいえば,ドゥーニャは『罪と罰』では「もてキャラ」ということになります。

 ライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizがパリに滞在していた頃,ホイヘンスChristiaan Huygensもパリにいました。そしてふたりは知り合っています。ホイヘンスはフッデJohann Huddeやスピノザの研究の成果を知るために,オランダに残っていた弟に手紙を送っています。『ある哲学者の人生Spinoza, A Life』では,スピノザと本当に仲がよかったのは,ホイヘンスより弟だったとされています。ですからライプニッツがそうしようと思えば,パリにいた時期も,極秘裏にスピノザと書簡のやり取りをすることは可能であったと思われます。しかし書簡七十二でスピノザがいっていることの意味に,ライプニッツがパリにいることを知らなかったということが含まれているとすれば,ライプニッツがパリに移って以降は,スピノザとライプニッツの間で文通がなされていなかったことになります。この場合,ライプニッツが初めてスピノザに送った書簡四十五が1671年10月付で,先述したように翌1672年にはライプニッツはマインツの選帝侯の指示によってパリに行っているので,スピノザとライプニッツとの間で文通が行われていたのはきわめて短い期間であったということになります。ただし書簡七十二では,スピノザはライプニッツのことを,手紙を通して私の知っている人物,と表現しているので,書簡四十五と書簡四十六以外にも,ライプニッツとスピノザの間で手紙のやり取りがされていたことは確実です。
 チルンハウスEhrenfried Walther von Tschirnhausはオランダを離れてからは,基本的にシュラーGeorg Hermann Schullerを介してスピノザと書簡のやり取りをしていました。ただし書簡七十の内容から,チルンハウスがパリに到着したのは1675年になってからです。ですからライプニッツがシュラーを利用してスピノザと書簡のやり取りをしていた可能性はきわめて低いといわなければなりません。ですがチルンハウスがパリに到着してライプニッツと出会ってからは,シュラーという存在のことをライプニッツは知っていたと考えられます。一方,シュラーは書簡でチルンハウスからライプニッツのことをきいていますから、ライプニッツとシュラーは,オランダでの初対面の以前の段階で相識であったと確定していいでしょう。ただし,マイエルLodewijk MeyerとイエレスJarig Jellesについては分かりません。

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