スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

娯楽&存在論的観点

2020-06-01 18:57:25 | 歌・小説
 明治時代の新聞というのは,現在のように各々が黙読するものではなく,基本的にはだれかが音読をして,それを何人かで聞くものでした。音読されるのは新聞の記事だけではありません。新聞に掲載されているものはすべてそうでした。ですから,掲載されている新聞小説も,基本的にこのような仕方で人びとに伝えられていたということになります。
                                        
 この時代,インターネットやテレビが存在しなかったのはもちろん,ラジオも存在していませんでした。つまり,現在と比較すると娯楽というものがとても少ない時代だったのです。そのような時代背景もあり,新聞というのは単にニュースを伝えるという役割を有していただけでなく,娯楽としての役割も有していたのです。というか,現代でも新聞が娯楽としての役割を果たしていないというわけではないでしょうが,娯楽として市民に果たす役割の大きさは,現代とは比べ物にならないくらい大きかったのです。もちろんそれは,インターネットもテレビもラジオもなかった時代に,ニュースを人びとに伝える役割の大きさも,現代とは比較にならないくらい大きかったであろうということです。
 新聞小説は,ニュースを伝えるという役割よりも娯楽としての役割を果たします。したがって,面白い新聞小説が掲載されるということは,新聞の売り上げに直結する面がありました。これもすでにいったように,当時は新聞の宅配制度があったわけではなく,どこかで購入してもらうものであったわけですから,同じ新聞を続けて買ってもらうためには,続きを読みたくなるあるいは聞きたくなるような新聞小説が果たす役割というのが非常に大きかったのです。このために当時の新聞社はこぞって,人気作家を自社の社員として雇い,新聞に小説を掲載してもらうことに躍起となっていたのです。
 これが新聞社の事情です。大学教授を辞して朝日新聞の社員として小説を書くということは,漱石にとっても悪くない条件だったでしょう。そしてそれは,朝日新聞にとっても大きな利益を生み出し得ることだったのです。

 確実にそうであるとは僕には断定することができないまでも,公理論的集合論のうちに,スピノザが求める条件の下に空を定義することは可能であると思われますから,スピノザが公理論的集合論を公理論として否定することは,この条件すなわち非実在的である空が組み込まれているという条件によって否定することはないでしょう。もちろん公理論が公理論として成立するための条件はこれだけではないのであって,本来は公理論的集合論の公理系のすべてを検証する必要があるのですが,そうしたことは僕の能力では不可能なので,今はこのことだけに注目して,スピノザは公理論的集合論を公理論として認めるとしておきます。他面からいえば,公理論的集合論のこれ以外の部分のすべては,公理論が満たすべき条件を備えているということを前提とします。
 次に,もしこの公理論的集合論を存在論の観点からみれば,スピノザはそれを学知scientiaであるとみなす可能性はきわめて低く,少なくとも真理veritasを明らかにしているとは認めないでしょう。バディウAlain Badiouにとって最大の問題はこの点にあったのだと僕は解します。スピノザは空が存在論的な意味において実在するという主張は真理とは認めないのですから,もしも公理論的集合論が存在論的な公理論であるとするならば,スピノザはただ単にそれが公理論であるということだけを肯定するのであり,それが真理を明らかにする公理論であるということは否定することになります。僕はこの場合には,それが学知であるということも否定されると考えますので,僕の見解opinioでは学知であるということも否定されるのですが,公理論であるということ自体は是認されるので,学知として否定されると断定することは避けておきます。
 ただ,数学は存在論であるというテーゼは,バディウが固有に立てているテーゼなのであって,僕はその立場は採用しませんし,それはおそらくスピノザも同様であると思います。実際にはスピノザはカントールGeorg Ferdinand Ludwig Philipp Cantorを知らなかったわけですから,この仮定を立てることには意味がないかもしれませんが,もしスピノザが公理論的集合論を目にしたとしても,それを存在論であると解することはないでしょう。

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