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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

第3の選択肢「どっちもいらない」-「教育基本条例案」への一日一言(25)-

2011-12-30 10:29:32 | 受験・学校

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201112280025.html (教育基本条例案「現行法に違反」日弁連が声明:朝日新聞関西2011年12月28日付け)

ようやく記事がネット上にもアップされたようですが、日弁連がこのように「教育基本条例案」について反対の声明を出しています。この件は、昨日も紹介したとおりです。

それから、今朝、自宅で朝日新聞を読んでいたのですが、大阪府教委側の修正案が府市統合本部に出されたときに、どういうところが論点になるのか、といった趣旨の記事が出ていました。これはでも、まだネット上にはアップされていません。(あとでスキャナーで読み込んで、PDF化しようかな?)

ただ、この「教育基本条例案」について、府教委の修正案か、維新の会(橋下市長)案か、みたいな話で記事を書くのは、私にしてみれば「第3の視点」が抜け落ちていて、「これじゃだめだな」と思いますね。

では、その「第3の視点」とは何か? それは「誰が、どんな案をつくろうとも、大阪には教育基本条例そのものがいらないのだ!」という視点です。

おそらく首長が教育目標を設定する権限を条例案に書き込まず、修正案として首長と教委で協議して決めるみたいな形にしても、そもそも現行法上において、首長が教育委員を自分の意に沿うよう任命する(もちろん、議会の承認を得てですが)わけですから、結果的にはあまり大差ないでしょう。「これが民意だ!」といって、首長が教育目標を「協議」という場を通して教委に押し付けてくるのは、目に見えています。

あるいは、学力テストの自治体別の結果公開についても、同様。たとえ条例案を修正して、学校運営協議会単位で出すか出さないか決めるようにしても、その協議会に維新の会支持者が入り込んだり、あるいは、協議会にプレッシャーをかけて出すようにすれば、結果的には学力テスト結果の「自治体別公開」どころか「学校別公開」に近いものになっていくでしょう。

このような形で、たとえ現行法の趣旨に沿うようにどのように改正をしても、それはしょせん、府市統合本部・維新の会と府教委・市教委の「妥協」にしかすぎない。大阪府・大阪市に暮らす子どもにとっては、妥協の産物として生まれてきた「教育基本条例」の修正案でも、やはり、今までの学校環境の激変を伴い、不利益が生じる恐れはぬぐえないわけです。

とすれば、どのような案になろうとも、大阪には「教育基本条例案」それ自体がいらないのだ、という立場からの批判的意見。これがやはり、今は大事なのではないでしょうか。

マスメディアにはぜひ、このような立場からの意見もあることを、どうぞ積極的に伝えていただければと思います。

<追記>前にもお知らせしたとおり、学校事故・事件と子どもの人権に関する話題を書くための別のブログを現在、準備中です。下記からアクセス可能です。不定期での更新になるかと思いますが、よろしくお願いします。 http://tsuyokun.blog.ocn.ne.jp/gakkoujikojiken/

ついでにいうと、「どうせ大阪に条例つくるなら、『教育基本条例』などいらんから、学校事故・事件の発生防止と発生時の原因究明、再発防止策の確立、被害者遺族への救済などを決めた『学校安全条例』とか、包括的に自治体としての子どもの権利保障や、権利侵害に対する救済システムの整備を定めた『子どもの権利条例』をつくれ!」というのが、今の私の立場です。こういう条例をきちんとつくるほうが、よっぽど子どもたちが安心して通える学校ができて、学校も落ち着くのではないですかね。


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