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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

市長の施政方針演説をどう読むか?―「教育基本条例案」への一日一言(24)―

2011-12-29 11:02:29 | ニュース

http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000151229.html

上記のホームページで、橋下市長の大阪市議会での施政方針演説(要旨)を読みました。「なんですか、これ?」という代物ですね。あまり期待はしていなかったのですが、マスメディアでもちあげるほどの内容はありません。

それこそ、この施政方針演説の最後の職員労組批判のくだり。「挨拶、しつけ」うんぬんの部分などは、今まで文科省や自分に批判的なマスメディア等々、いろんな機関や団体、人々に対して「バカ〇〇」「クソ〇〇」と言ってきた人がよくいえるなぁ、としか思えませんね。まずはご自身のこれまでの周囲に対する失礼な発言自体、陳謝してしかるべきではないか、と思ってしまいますね。「あえて議論を呼び起こすための発信」では済まされないような発言を、知事時代やそれ以前も多々してきたのではないでしょうか。

それでもなお橋下市長がいま、職員労組に対して、なんとかして謝らせることにここまで執着しているのはなぜか。それは、彼がやろうとしている「大阪都構想」にせよ、今後の大阪市政改革にせよ、その最大の「抵抗勢力」たりうる存在が職員労組であること。そのことを示しているからではないでしょうか。

まずは、今後の市政改革や「都構想」に関する議論を有利にすすめるためにも、職員労組側からの反撃を封じ込めるためにも、事務所の市庁舎からの追い出しやこの謝罪問題でいいがかりをつけ、とにかく「出端をくじく」こと。それだけを目的にしての市政方針演説ではないか。私としては、そう読みました。

逆にいうと、とても威勢のいいことをあれこれいいながら、攻撃的にいろいろふるまっていながら、彼はいま、自分に対する批判・非難の矢が向いてくることを、ものすごく恐れている。怖くて怖くてしょうがない。大阪市長の座につき、大阪維新の会の代表でもあり、府知事と連携して「都構想」を強引にでも推進しなければならない立場におかれてしまった。そのことで自らの責任が問われ、周囲から批判や非難が集中する立場にあることが、もう怖くて怖くてしょうがない。彼はいま、そういう心理状態にあるのではないでしょうか。

だとすれば、こんな施政方針演説で攻撃されたくらいで、彼への批判の手を緩めてはいけません。こちら側からの対応でもしも謝るべきものがあるとしたら、そこではさっさと謝っておく。そのうえで、なおかつ、きっちりと事実や根拠を示しながら、彼の繰り出す施策について「ダメなものはダメ」と言い続けること。また、その「ダメなものはダメ」という情報を、自分たちの身近にいる人々に、さらにその外にいる人に向けて発信し続けること。これが一番、効果的ではないのかな、と思います。

ついでにいうと、彼が施政方針演説でいうように、本気でボトムアップで市政運営をすすめたいのであれば、現場第一線職員の話を聴かなければいけない。また、その現場第一線職員をまとめあげているのは、ある意味、職員労組でもあります。だとしたら、彼が本当にボトムアップを重視するならば、職員労組の意見を上手に吸い上げて、きちんと市の施策に反映させる道を持つ方が適切だと思うのですが。

これだけ職員労組を攻撃しておいて、トップダウンはさておき、ボトムアップが正常に機能するとは、私には全く思えません。ということは、今後、大阪市政に関して起きてくるさまざまな問題は、すべて「トップダウン」と「職員労組攻撃」がもたらした弊害だとみてよいでしょう。そして、こうして自らの責任が問われる事態になることを、またまた、市長としての彼は今、ものすご~く、恐れているのではないでしょうか。だからこそ、「区長に~」「府市統合本部に~」等々、責任をあちこちに分散する「逃げ」の手を次々に打とうとしているのではないかと思います。

あと、この施政方針演説(要旨)を読んでもらったらわかりますが、ここには一切、大阪市民の教育や福祉、子育てに関する施策を具体的にどう充実させるか、といった話はでてきていないのです。あるのはただ、次のようなくだりだけです。

さらに、厳しい財政状況を踏まえて、時代に合わなくなった施策・事業を見直すとともに、重点投資する分野もシフトしていきます。例えば、少子高齢社会において高齢者を支えるため、社会保障制度の根幹となる現役世代を対象とした「子ども」や「教育」や「雇用」などの分野に重点的に投資し、現役世代が生み出す活力・効果を高齢世代にも還元していきます。選挙の票になりやすいという高齢世代に直接お金をばらまくことをするようなことはなく、現役世代に重点投資をし、現役世代の活力によって高齢世代を支えるというような社会全体の仕組み自体も変えていきたいと思っております。

あの~、ここをどう読めば、今後の大阪市の教育や福祉、子どもに関する施策が具体的に充実できるのか・・・・。なにしろつい先日、大阪市の公立幼稚園を「民営化」するとか、大阪市の市立高校を府立に移管するとか、そういう発表をしたところですよね。子どもの虐待対応とか待機児童対策も各区に「丸投げ」という方針ですしね。むしろ読みようによっては、高齢者世代に配分してきた市の諸資源をカットして、子どもや若者、子育て中世代にまわしますよ、ということを言っているだけにすぎないわけですよね。そんなことではとても、大阪市の教育や福祉、子どもに関する施策なんて、具体的に充実するわけないでしょうね。

最後にひとつ、忘れないようにひとこと。この橋下市長の施政方針演説には、大阪市として、「教育基本条例案」を再提出して、成立に向けて努力するとは、ひとことも書いていません!! ここをみなさん、忘れないようにしましょう。


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