ということで今日はDAZNの生中継を見ておりました。
気持ちはすでに木曜日に飛んでしまっていますが、とりあえず簡単に経過と感想。
王者セルゲイ・コバレフは、やはりここ数試合と同じく、強打よりも軽打、大きく振らず、こつこつと左から、という闘い方でスタート。
上からの映像だと、やはり身体が一回り小さく見えるカネロ・アルバレスは、その左はガードで防ぎ、時折来る右を外しては、右ショートと左フックのカウンターをボディに返す。
コバレフは身長、リーチでまさるはずが、しっかり突き放す、というほど距離を作れない。
しかし手数は出て、ジャブのヒット数自体はまずまずか。
カネロは手数では劣るが、左フック、右クロスの単発は印象的なものがある。
競った回、採点上どちらにでもつけられそうな回が続く。
初回はカネロが見て、コバレフが左から手数。
2回はカネロが右ストレートを上下に当てる。
3回、コバレフの右をミスさせたカネロが左リターン。右ボディ。コバレフ後半ジャブ増やす。右アッパーと左フック交錯。迷うが、ややカネロか。
4回、コバレフのスリーパンチ、トリプルジャブに対し、カネロが外してボディへカウンター。左をとってコバレフ。
5回、コバレフこつこつ左、ボディへのジャブ。カネロ変わらず外してカウンター、単発。コバレフ。
6回、コバレフ右を控えた方が、と思うが、ワンツーをミスしてカネロに右、左と打たれる。カネロ圧してヒットとる。カネロ。
試合展開、構図があまり変わらないまま、7回はカネロ。
8回はカネロがドローイングか、自分から下がる。コバレフ。
9回、コバレフのクリンチに、カネロが急に苛立った様子を見せる。左フックヒットも、コバレフすぐジャブで相殺。
カネロ、右アッパーの合わせを見せる。カネロ。
10回、さすがに両者少し疲れ見える。カネロ、コーナーにコバレフを追うが、追撃ならず息をつく。攻勢のぶんカネロ。
コバレフ、しっかり突き放すとはいかないが、ジャブは出ているし、スリーパンチも時折当たる。右のミスを狙われているのも変わらない。
カネロはラストふたつ次第ながら、僅差勝利を勝ち取る、という「算段」通り、と言えば言えるか。
そんな風に思っていた終盤、11回にカネロがガード上げて出る。コバレフ圧されつつ応じ、左相打ち。
カネロが右ボディを打ち、コバレフがジャブを返す、変わらぬ攻防のあと、カネロの右フックがクリーンヒット。
止まったコバレフにカネロが左フック。これはボディへのフェイントが入っていた?ようにも見えた。まともにヒット。
さらに続いたのが、しっかり狙い澄まし、肘から肩まで回った右ストレート。コバレフ倒れ、即座にKO宣告、でした。
二階級上で強打を謳われる王者、コバレフを終盤に捉えてのKO勝ち、まずはカネロの実力を認めるべきかと思います。
コバレフの左はうるさかったですが、突き放されることなく迫り、右のパンチは大半を外して、リターン、カウンターの端緒に変えていた。
苦しい闘いでもあったでしょうが、やっぱり巧いもんやなあ、と感心するばかりでした。
そして終盤、競った回をいかに抑えるか、と見ていたこちらの想像を超える好機を作り、巧みで、かつ強烈な追撃をもって倒しきってしまうあたりも、流石としか。
この辺はやはり、スターボクサーならではの「役者」なところですね。
とはいえ...と、あまり言い募るのも良い趣味ではないですが、試合間隔の短さ、当日計量の縛り?に加え、歴戦の疲弊も垣間見えたコバレフ相手だったからこその、ライトヘビー級「制覇」だったなぁ、という印象も残りました。
そもそも「制覇」ではなく「タイトル獲得」という言葉以上の意味はない、それが昨今の、大半の王座獲得劇の内実であり、それはこの試合に限った話ではないのですが。
コバレフに、持ち前の強打や体格を思うさまに生かせない闘い方を強いたものは、カネロの技量力量あればこそ、でしたが、同時にそれ「のみ」ではない。
それはコバレフの、ここ最近の衰えによるものであり、ボディの耐久力という弱点と共に、実際の試合ぶりによって「解答」として示されていたものです。
この試合は、カネロが当然それを見た上での挑戦であり、ヒスパニック系を中心に絶大な人気を誇るスターボクサーとして、全ての主導権を握っている者の闘い、でした。
この際ですから、さらに嫌なことを言ってしまえば、コバレフの手によって、そういう「算段」が打ち崩されるところを見たいなぁ、と、心中密かに思ってもいたんですが...。
なんだかんだ言って、その「算段」通りに試合を運ぶのみならず、それ以上の結果を形に出来るカネロは、改めて流石だなぁ、と言わざるを得ません。
しかし、それを認めはしても、心から称える、という気持ちには、やはりならないわけですが。
試合前から、三階級同時制覇と散々言ってましたけど...へー、そうですか、そう言われたらそうでんな、という以上のことを思っている人が、世界中にどれだけいるものなんですかね。
だいたい当の本人が、腹ん中で一番よく分かってることでしょうに。
まあ、そもそもそんなことよりも、より大事なものは他にあり、それはしっかり押さえている以上、どうでもいいんでしょうけどね。
===================
しかし、何と言っても今日のトピックは、セミとメインの間の、約一時間半に渡る、恐怖の休憩地獄(笑)だったのではないでしょうか。
いやほんとに、最初は何がどうなっているのか、さっぱりわからなかったのです。
カネロはグローブ付けてシャドーして、いつでもリングに向かって控え室を出ようという様子なのに、いつまで経ってもお声がかからない。
場内の様子を遠景で映していて、何事か音声や歓声が聞こえるのみ。
煽り映像やプレビュー番組、または過去の試合でも流しているのかな...と。
ここで、ふと気づいて、WOWOWを見てみたら、同時刻にNYで行われていたUFCの生中継でした。
まさかこれが終わるまで、こちらのメインは始まらないのか、と思ったら、驚いたことにその通りになりました。
あちらでのUFCの人気は相当なものだと、ちらほら見聞きはしますが、こんなに気を遣うくらいなら、最初から日程を調整したらええものを...と思うところです。
そもそも、DAZNはUFCではなく、ベラトールという別の総合格闘技を配信しているので、何も気遣い無用だろう、と思うのですが、そういう単純な考えでは収まらないほど、UFCの人気は高く、その視聴者層に対して、無碍な対応も出来ない、ということなのでしょうか。
しかし...と改めて思います。会場で一時間半待ちぼうけ、なかなかに厳しい試練やないかなー、と。
フジ放送の有明興行やなんかで、セミセミからセミ、セミとメインの間、という分割された形で、これくらいの時間を空けられた経験はありますが、一括でとなると...さすがに記憶にありません。
まあ、こちらは昼飯食って、コーヒー淹れて、飲み終えてもまだなんで、これまた折良く生中継されていたマレーシアGPを見たりしていたので、特に困りはしませんでしたが。
会場には当然、カネロ応援のメキシコ系の皆さんが大挙して駆けつけていたでしょうに、怒って暴れたりする人は全然おらんかったんですかね。
まあ、高いチケット買って、ベガスに見に行ける層は、そんなに気が荒くもないんでしょうけど。
===================
そんなことで、一曲。
Elliott Yamin “Wait For You” です。
佐野元春「君を待っている」を貼ろうと思ったんですが、YouTubeになかったんで、これで妥協しました(笑)。
ジャブや右、あまり多彩ではなく、初回から左リターン狙ってたあたり、破局はありそうと見てましたが、カネロがなかなか手を出せないあたり、それでもコバレフのパワー、体格差は実感としてあるんだろうと。ただコバレフはもっとクリンチで圧して良かったと思います。当たらんでもジャブ出して密着してクリンチ。柔道でいう掛け逃げみたいな。思ったより接戦、判定かなと見てましたが最後びっくりしました。
ただびっくりしたのはカネロの技量よりもコバレフの脆さについて。
なんだかパッキャオ様の様な冒険を味わって来た世代として、このカネロのは何も響きません。
上から映した映像や、いくつかの写真に写る、カネロの肉体は上下のバランスが歪に見えます。過去にあまり見たことのない姿形ですね。それが何を意味するか、断じては言えませんが、色々と疑わしい想起をしてしまいます。セミのライアン・ガルシアにしてから、普通ならお見事、ですが、過去に見た試合とあまりにも違い過ぎていて、何だこれは...と。
それはおいといて、試合自体は、起伏に乏しいものでしたね。コバレフの闘い方は最近の通り、カネロの狙いもはっきり見えて、そのまま膠着と。終盤、ヤマが作れるとしたらカネロの方かな、というくらいでした。しかしそれも難しいかな、と思っていたら、そこだけが違いました。
コバレフは結局「暴れる」ことが出来る心身の状態じゃなかった、ということですね。ことに体力面でまったく自信が無かったんでしょう。どっちが階級上なんやらわからん、という有様でしたね。仰るとおり、非常に脆くもあり...それ以前に、あんな「マトモ」な打たれ方しちゃいかん、という問題もありますが。