さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

「闘い」は品評会とは違う 勅使河原弘晶、懸命の大森将平攻略なる

2019-08-09 17:05:32 | 関東ボクシング




ということで猛暑のさなか、お盆前に無茶をやって、平日ホール観戦を敢行しました。
結果は残念でしたが、熱いファイトを見ることが出来ました。
勅使河原弘晶vs大森将平戦、明日関東ローカルで放送あるそうですが、簡単に経過から。


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試合前、自分の顔をコピーしたマスク?に、派手な衣装、ダンス?パフォーマンスなど、
賑々しい入場の勅使河原弘晶に対し、大森将平はコーナーで佇んで待つ。
動と静のコントラスト。


初回、やや離れて見合う感じ。勅使河原はもっと急いて近づこうとするかと思ったら、よく見ている。
良く動いて、大森の射程から外れようと意識している。
勅使河原が軽いが速い右からリード。大森は少し打ち合った際、右リターンするが、一発だけ。

2回、3回、勅使河原はスピード重視、当て際が甘いが数が出る右でペースを掴む。
大森右ジャブが出るが、後続に繋がらず。左ボディ、右フック当てる。
4回、派手なパンチから一転、勅使河原の右ショートも。大森は左で釣って右フック。


序盤負えて途中採点は、40-36×2、39-37の3-0で勅使河原。
大森に与える回があったかどうか、ですが、この辺はいかにもタコにもOPBFというか。


5回、大森出て右フック、右アッパー。勅使河原、飛ばした影響が少し見えるが、手数は出す。
6回、この回も前半、大森がワンツー決め、勅使河原をロープへ追う。
しかし勅使河原が逆襲、右アッパー、右フックで大森を下がらせ、さらに追撃、打ちまくる。
大森足使って躱そうとする。ここではクリンチはせず。出来なかった?大ピンチ。

7回、大森踏ん張ってワンツー、ボディ。勅使河原少し疲れ?この試合、初めて大森の回か。
8回、大森ヒットあるが少ない。勅使河原、右ショートから左フックの返しで脅かす。

途中採点は79-73×2、78-74の3-0m、勅使河原。

9回、勅使河原、連打のあとロングの左アッパー。軽いが角度良く当たり、大森の顔を跳ね上げる。
大森左ヒット、右フック、左ボディで反撃。しかし好打のあと一拍止まる。攻めているがダメージも見える。ポイントは大森か。
勅使河原にも疲れが見える。

10回、勅使河原は右ダイレクトを再三決めるが、動きが落ちてきて、大森の左ストレート、レバーパンチを受ける。
数は勅使河原、効果は大森という内容。
11回、勅使河原は前半を動いて外すことに徹し、後半ラッシュ。ストップか、タオル投入か?と思ったが、大森しのいで左返す。

最終回、大森が棄権してもいいと思ったくらいですが、やはり出てくる。
立っているのがやっと、という感じながら、単発の左ヒット。勅使河原きつく、止まるが右リード返す。
残り30秒くらい?のところで、勅使河原が攻めたところで、レフェリーストップでした。


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試合を見終えて思ったのは、闘いは品評会とは違う、という、当たり前過ぎる現実でした。
ボクサーとしての素質だけを、別個に比較すれば、勝者たる勅使河原弘晶には誠に失礼ながら、大森将平の方がまさっていた、と思います。

長身、柔軟な下肢、長いリーチを生かして長い右リード、後続の左はストレート、フック、クロスを打ち分けられる。ボディへも手を伸ばせる。
そしてスピード、パンチ力があり、攻めておいて相手の出す手にカウンターも取れる。
好調時の大森将平の強さを、何度も見てきた者の目には、今回の試合は大森がその良さを封じられ、殺された試合だ、と映りました。

勅使河原弘晶は、序盤から良く考えて闘っているな、と見えました。
早いが軽く、打ったあと動けることを重視した右リード、ダイレクトを大森にしっかり見せ、大森が気持ちよくワンツーを打てない展開のまま、序盤を乗りきりました。

大森は右ジャブ、或いは左ストレートを単発で決めることはあっても、そのたびに速い右が来るので、どうしても追撃する流れに乗れない。
軽いといえども数をもらい、ダメージも徐々に蓄積して、反応も悪くなっていったところに、勅使河原がラッシュしたり、強打を織り込んできたりと、戦局は悪化する一方。
このあたりはもう、見ていて辛いものがありました。

中盤以降、それでも見せた数度の反撃は、勅使河原にもダメージを与えたものがありましたが、上記のとおり、自らもきつい状態に追い込まれた後で、追撃はならず。
最後のストップは、その場面だけを切り取れば「絵」として、すんなり入ってはこないものでしたが、それまでの経過を見れば、仕方ありませんでした。



ありきたりですが、序盤の攻防が試合の趨勢を決めた、ということでしょう。
勅使河原は、大森との彼我の比較をして、序盤は数を見せて、強打はせずとも外し、大森とまともにやり合わない、という方針を立てていたのでしょう。
そうして、徐々に鈍ってくるであろう大森を攻略する、という。

それに対して大森の方は、思ったより接近を図らず、当ててくる勅使河原に対し、ではこちらから踏み込んで捉えにかかる、という手に出るほど、体力面などに自信がなかったのか、或いは...とにかく、気持ちよく手を出せる流れに乗れず、というより作れず。結果、そのまま敗れました。


勅使河原が試合の前後に残したコメントの中には、大森将平の実力を、潜在能力を誰よりも高く評価していた節が見えます。
だからこそ、その攻略法をしっかりと練り、苦しい場面も乗り越えてそれを実現し、勝った。
対する大森は、相手の出方に合わせてしまい、序盤、自ら何かを仕掛け、切り込むという意志を見せなかったように思います。
それを「油断」と断じていいとも思いませんが、やはり「闘い」というものは、より切実に自らを省み、敵を畏れて闘える者が勝つのでしょう。



改めて、ボクシングが持つ苛烈さ、ボクサーが生きる時間の過酷さ、闘うということの本質、そういったものをさまざまに思い、考えさせられる、濃密な試合を見たように思います。
勅使河原弘晶、大森将平のふたりに感謝します。大森応援の身にとり、結果は残念でしたが、見応え十分の試合でした。



コメント (4)
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