さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

圧して出ながら、外して打ち倒す 井上尚弥、心楽しまずも圧勝

2017-12-31 07:56:46 | 井上尚弥



昨日は横浜文化体育館にて観戦してまいりました。

メインイベントは井上尚弥が長身のフランス人、ヨハン・ボワイヨを3回TKO。
内容も結果も、期待通りのものでした。

しかし立ち上がり、足が動かず、圧し方もやや強引、手間を省く感じ。
探りや崩しを飛ばして、最初から仕留める構えで出た。そんな印象でした。

オマール・ナルバエスを沈めて以降、WBO1位の選手数人に逃げられて来ましたが、
米国デビューを果たしてからこっち、とうとう他団体の王者にも逃げられるようになり、
強すぎるが故に大試合に出られない、本末転倒のただ中にいる井上尚弥の、
苛立ちや焦燥が、僅かに垣間見えたような、そんな気がしました。

長身、モデルばりの風貌、懐深く、遠くからボディストレートを打てるボワイヨは、
懸命に手を出し、動き、とやっていましたが、井上が少しずつほぐれ、動き出すと
右クロスを食い、反撃を外され左フックを食い、ダウン。

これは井上が体全部を回していない「合わせ」だったので、ダメージは浅かったか。
ラウンド後半はいつもの感じに近い井上でしたが、全体的に圧しが強すぎかな、とも見えました。


しかし2回、同じ調子で出ているかな、と見えたところに、ボワイヨの右アッパー。
見ていて、タイミング抜群、いいとこ狙った!と思ったパンチでしたが、
井上は前に出ながらも、鮮やかに躱して左フックを返していました。

相手との実力差ありあり、なれど仕方なく?組まれたこの試合の、白眉といえるシーンでした。
TVでどう映っていたかはわかりませんが、会場で見ていて、若干攻めに傾きすぎかと見えながら、
それでもあのパンチを当然のように外して、また打っていける井上の、センスの片鱗を、
まざまざと見せつけられたように思いました。

3回、左のレバーパンチが決まり、あとは井上のクッキングタイムとなり、試合は終わり。
好カードでもビッグマッチでもないですが、一流王者の「片付け仕事」として過不足なし。
そんな試合だったように思います。



試合後のインタビュー、やはり井上尚弥の表情に、満足感は乏しかったですね。
ランカーが逃げるならともかく、王者を名乗る相手にも逃げられて、
嫌気がさしてしまう自分との闘い、それがこの試合の実相だったのかもしれません。

統一戦を戦わずして最強の評を得たまま、来年はバンタムに転じるのでしょうが、
標的は実質二択なのでしょうね。ゾラニ・テテか、ルイス・ネリーか。

個人的には、ゾラニ・テテに挑んでほしいと思います。
サウスポーで手ごろな相手と無冠戦でお試ししてから、というのが普通の発想ですが、
そういう話になる可能性があるかというと、たぶん...でしょうね。

バンタム転向、長身、強打、しかも左と、普通のボクサーならもう何重苦なんやら、
という話ではあります。
しかし井上尚弥のようなチャンピオンには、その偉大さゆえに、より険しい試練が、
宿命的に巡ってくるものだったりもします...本来ならば。

そして、その宿命に、いかに挑み、乗り越えるか。
井上尚弥が臨むべき闘いが、バンタム級に転じることで実現するのなら、
いよいよその闘いから目を離すことはできませんね。



コメント (8)
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