さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

一分の隙も緩みもない「自己ベスト」に期待 田中恒成、強打アコスタと初防衛戦

2017-03-29 16:22:32 | 中部ボクシング



ということで、4月から5月にかけて、年末世界戦ラッシュの余波からくる
世界戦の日程集中傾向が顕著になっている、日本ボクシング界ですが、
4月の大阪ダブルに続き、5月にもとんでもない事態が起こるらしい...と
話題になっている中、中部の星、田中恒成の防衛戦が決まりました


相手はプエルトリコ期待の新星、16戦16勝16KOのアンヘル・アコスタ。
当時世界1位のウトニを最終回TKOに下した試合のハイライトは、
以前動画を貼りましたが、それに加え、フルラウンドの試合やら、
相手の名前が記載されていない短い動画やら、ちょこちょこ見ておりまして、
正式に試合が決まれば、紹介しようと思っておりました。
そんなことで以下、簡単に見た感想を。


2015年3月14日、プエルトリコのカグアスで、アルマンド・ベラスケスバスケスと8回戦。
紺のトランクスがアコスタ。赤のベルトラインに緑地がバスケス。
フルラウンドの動画です。ありがたや。





初回、左突くアコスタ。しかし小柄なバスケス、右から左の返しを決めぐらつかせる。
アコスタ乱れ、露骨にワイドオープンになる場面もあるが、早々に回復。
右アッパーから左フックのパターンで挽回。3回、右決めて攻勢。

4回くらいから、距離を取って突き放す。この展開で攻め、または迎え打ち。
バスケスも粘るが、7回、左ダブルから右アッパー、右ショートで攻め、
最後は右アッパーから左フックで倒す。タフそうな相手をきっちり詰め、仕留めた。



続いて、以前も貼った動画ですが、今年2月11日、サンファンでの試合。
当時WBO1位のジャフェ・ウトニを10回TKOした試合のハイライト。





これだけでは、試合展開がどうとは言えませんが、見た範囲では、
果敢に打ってくる、自分より長身の相手をボディ攻撃で崩し、
打ち合いに持ち込んで、最後に仕留めた、という風です。


これ以外の動画もちょこちょことあります。
まずはハイライト。練習風景や、試合の様子。
4回戦の映像のようですが、最初のはひょっとするとデビュー戦?





バット使ってバッグ打ってますね。昔はこんな練習も散見したものですが。
この辺は野球王国プエルトリコならでは?


続いて対戦相手不明の動画。
動画アップの日時から推測すると、2016年4月23日のエリクソン・マーテル戦でしょうか。




サウスポーの相手が右振って来たところに、見事なタイミングで左カウンター。
怖いのはもう一発、追撃して効かせ、倒しているところですね。
相手の体勢が崩れたところを、間を置かず即座に打てる選手って、そうそういるものではないです。



対戦相手記載無しの動画、もひとつ。
これは2016年11月12日のルイス・セハ戦でしょうか?




最後は左アッパー気味(に見える)のパンチ一発です。
カメラの角度のせいでわかりにくいですが。
「現世に甦ったウィルフレド・ゴメス」との惹句は、この場面を見ると、
ちょっと説得力があるような気もしてきました。


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ということで、まず攻撃面から、ですが。
まず、全てのパンチが、身体の回転を効かせた強打になっている。
この前提がある上に、センスの良さが光っていて、攻撃面ではどこを見ても脅威だらけ。

左ジャブは普通に数が出る。
左フックはダブルが速く強い。好機にはさらに出る。
そして、無理な姿勢で突っ込んできた相手には、非常に敏捷に、
正確に、カウンターを決められる。

右は外からフックを叩き、インサイドには鋭いショートストレートを決める。
どちらも威力、角度とも抜群。
アッパーカットは攻め込み、迎え打ち、両方を兼備している。

これだけ揃った上に、好機の連打、詰めが鋭く、強い。
立ち位置を左右に変えながら、相手のガードの上を叩き、外から巻き、内を鋭く射貫く。
これが自然に出来ている。なるほど「ゴメス」風です。
これは巧さ以上に「天性」だと見えます。


続いて防御ですが、こちらは勘の良さが見えるかと思えば、穴もあり、という印象。

ガードは左右の設定が多少違う。
左は高低ともに、ヒジの角度を決めずに、ゆったりとした構え。
右は高低ともに、ヒジの角度を決めている。打つぞ、という威嚇の意図が見える。

しかし、このガードは展開によっては両方とも下がる場面もある。
優勢の時はいいが、劣勢のとき、膠着のときはどうなのか。
この辺はベラスケス戦以外に、資料となる映像が無いので、判断に困る。

あと、試合展開によって、防御への集中力が目に見えて違う。
良いときは目の良さが冴えるが、悪い展開のときは、打ち返そうと焦るせいか、
露骨にワイドオープンになって、見ている方が驚くくらい。

上体が立ったまま相手の距離にいて、相手のパンチをガードで防がなければならない場面で、
ケアレスミスとでもいうか、ガードが雑なせいで好打されている(バスケス戦、初回)。
また、接近戦で止まると、ガードを絞ってそのまま。少々稚拙、とさえ。



ということで総合的に見ると、若さと勢い、天性の攻撃力と勘を持つ強敵です。
防御面では欠点も見えましたが、それが映像で確認出来たのは2年前の試合であり、
この若さであれば、大幅に改善されているかもしれません。
その後の試合ぶりは、ハイライト映像ばかりなので、悪いところはほとんど出ていませんから、
実際どうかは何とも言えませんが...。

田中恒成からすれば、まずはあの強打を、とりわけボディ攻撃を外すことが肝心でしょう。
上のパンチは、しっかり動いて、いきなり食うようなことはない(もしあれば大変です)としても、
やはりウトニ戦などは、ボディで止め、力を削ぎ、打ち込んで倒す、という流れが見えました。
この流れに巻き込まれたら、そこからは力勝負です。良い展開とは到底言えません。

昨年末のフェンテス戦でも、ほぼ完勝のなか、2回の前半のみですが、
相手に攻め込まれる時間帯がありました。
あのような展開を許したら、攻め口の鋭さではフェンテス以上のアコスタが好打し、
それをきっかけに攻め込んでくるだろう、と思います。


田中恒成には、そうした隙、緩み一切なく、ミスが許されない一戦であることを前提に、
心身共にベストのコンディションを作って欲しいですね。
ことに防御面において、過去の試合の全てを越えた「自己ベスト」のものを期待したいと思います。
心配なのは、転級してなお囁かれている減量苦ですが...。

また、相手との相性やスタイルからすると、KOは狙わずに闘った方が良いのかも、と。
そういう方針で闘って、結果がそうなる場合もあれば幸い、というくらいで良い、とも。


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それにしても、改めて、初防衛戦から、なかなか燃える相手との対戦になったものです。

もちろん、王座決定戦で勝ったのだから、その次が最上位との対戦になるのは当然なれど、
その当然すら実現しない事例が散見される現状、すんなりその通りに話が進み、
しかも相手がこんな選手です。
田中恒成に対するファンの期待、仮託したい思いが燃え上がる、そんな試合になるでしょう。

また、本人が語る、統一戦や将来の展望はなかなか強気で、なおかつボクシングファンの思いにも
真っ正面から応えるものでもあります。
現実に、国内の統一戦が実現するとも思えない現状において、考え得る中で最強の相手と闘う
この一戦の内容と結果を受けて、その先にどんな未来が、情景が見えるのでしょうか。

田中恒成の未来は、井上尚弥とそれと並び、日本ボクシング界の未来そのものでもあります。
その先に、彼自身が持つ、才能への自信と誇りに相応しいものが見出せるように、
この強敵に対する、田中恒成の勝利を、ファンとして切に願います。


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しかし、冒頭にも書いたとおり、またしても壮絶なる日程バッティングが起こるのやも?という話ですね。
またしても関西では(関東も?)放送がないらしく、中部ローカルというかオンリーというか、
本当に、アタマを掻きむしりたくなるような事態になっておる上に、
「ほなら、久々に名古屋乗り込んだろか!」と思ったら、他の大試合と丸被り?という。

もはや「度し難い」という他ないレベルの「てんでばらばら」「好き勝手」ですが...
本当に、ボクシング業界の皆様、ことにプロモーターライセンスをお持ちで、
大試合を興行することの多い方々には、ファンの都合に影響する事案について、
もうちょっと横のつながりといいますか、何か話し合う機会を持っていただけないものですかね。

こんだけ携帯やスマホやなにやらで、SNSやLINEやとコミュニケーションツールも山ほどある中、
未だに黒電話使うてはるんですか、と訊きたいくらい、肝心な話がバラバラに進み過ぎです。

まあ、そういう「ファン」よりも、他に重きを置く対象がおありで、
結局はそっちの方だけを向いてはるんやろうなぁ、とは容易に想像がつきますが...。



コメント (3)
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