さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

「情勢」が変化した ローマン・ゴンサレス僅差で初黒星

2017-03-20 11:55:28 | 海外ボクシング



昨日は一応、結果知らずで録画したWOWOWを見ることが出来ました。

全体として、誰もが思い描いていたような内容や結果が揃わなかった、というに尽きます。
毎度のことではあるのですが、ボクシングというのは、こちらの勝手な思い通りにはならないものです。


ローマン・ゴンサレスはシーサケット・ソールンビサイに判定負けでした。

昨年9月のカルソス・クアドラス戦で、少なくともTVの映像で見た限りでは、
フライ級までのようにパンチの威力が通じない、好打しても強打たり得ず、
さすがに4階級目にして、体格差の壁にぶつかったように見えたロマゴンが、
115ポンド級二試合目で、いかなる変化、適応を見せられるのか。
誰もがその点を注目していたと思います。

リングに上がったロマゴンは、筋量の配分がバランスよくなされた体つき。
ただ、目に見えて、極端に肉体改造をしてきた、という風でもない?微妙な印象。

技術面では、これまでどおりに、やや前傾して、7~8割のパンチで入り、
同じくらいのパンチを繋ぎ目なしに連打して攻めていく、という型。
長年指導を受けたトレーナー、アルヌルフォ・オバンド氏と死別したものの、
このあたりは基本的に変わりませんでした。

初回のダウンは、クリーンヒットではなく胸のあたりを打たれ?押され?
スローで見ると頭も当たっていたようで、不運なものでした。
その後の出血も含め、これ、今日は全部悪く回ってる、まずいなあ、という展開。

ただ、初回からそうでしたが、ロマゴンの立ち位置が、時々まともに
シーサケットの手が出る角度になっていて、どうも不安でした。
うまく外している時も当然あるが、シーサケットの左から右の返しという
基本的な攻撃のコンビを出させてしまう、そして時に、まともに受ける。

そういえばロマゴンの対サウスポー戦って、過去にあったかな、見たことあったっけ...
と記憶を探るよりも先に、バッティングに出血が重なり、試合はどんどん荒れていく。
そして、動いて外し当てるより、正面から打ち合う、消耗戦の様相。
体格面で不安がある試合なのに、その不利をまともに被る展開は、見ていて重いものでした。

結論として、スーパーフライ級への適応、対応はならなかった試合でした。
連打の繋ぎはいつも通りスムースなれど、好打のあと緩急の「急」の追撃がなかった。
これまで通りの、パンチの効果がある前提での連打でしかなかった。
体格面のみならず、闘い方自体にも、ほぼ変化がなかったことは、残念に思いました。

それでも判定はロマゴン僅差勝利かな、と見たんですが、ダウンの失点は大きかったか。
バッティングのWBCルールによる減点も、二度ではなく一度だけでした。
出血はロマゴンの右目尻と、あとはそのほぼ真上の頭部からあり、
こちらの出血の量が上乗せされたような形で、相当闘いにくかったことでしょう。


対するシーサケット・ソールンビサイは、良くも悪くもいつもどおりに、
持てる「手管」を繰り出し、力を出し切って闘いました。

上体を立て、正面から左、右を返し、追撃なればアタマも添えて。
揉み合えば負けず、打たれても耐えて怯まず、必ず返す。数でも負けない。
ボディが堪えれば逃げ、また絡み合い。
攻めてパワフル、受けてタフ。どの局面でも相手に楽をさせない。

ロマゴンの「好打が強打にならず」が、また繰り返されたことが前提にあるとしても、
こうしたシーサケットの闘いぶりには、感嘆させられました。

また、序盤にダウンを奪い、アタマであれなんであれ、出血もさせ、
誰もが思い描いていたものとは違う「絵」を作ってみせたことも大きかったでしょう。
試合の序盤からの、このような展開が、後々の競った回の採点に、少なからず影響したはずです。

セミセミの試合では、ジャッジはカルロス・クアドラスの顔だけを見て、
ダビ・カルモナのヒットを真面目に見ていないのか、と思うような採点が出ましたが、
シーサケットは、こうした有名選手ならではのアドバンテージをロマゴンから奪った。
それ故に競り勝てたのだ、とも見えました。



タイ国内の試合ではなく、天下の殿堂MSGのリングにおける、
ロマゴン相手の大試合で、ほぼ完全に、普段通りか、それ以上の力を出し切った。
カルロス・クアドラス戦の経験があるとはいえ、元々日本で噛ませ仕事をやっていた選手が...
などと今更言うのは無意味かつ失礼でしかありません。

こんなタイ人ボクサー、過去にいたかなぁ、と思います。
ぱっと思いつく限りでは、ロスでパスカル・ペレスを破ったキングピッチ、
メキシコで強打アラクラン・トーレスと二度闘い、一勝一敗のチャチャイ、
オランダ領キュラソーでイスラエル・コントレラスを一蹴したカオサイ・ギャラクシー。
あとはチキータを倒したサマン・ソーチャトロンもそうかもしれません。
ほとんどが、タイの歴史上「超」がつく一流のチャンピオンです。

シーサケットが佐藤洋太と闘う前には、これらの名前を彼の比較対象として挙げることなど、
想像もつかなかったことです。
彼の闘いぶりや、その実力をあまり過大に見るのはどうか、と思う反面、
この日の勝利が、相当な「大仕事」であったことは、認めざるを得ませんね。


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で、以前から拙ブログでグチグチと書き、心中怖れていた「情勢の変化」が
ついに現実となってしまったわけですが...。

まあ、いざこうなってしまったもの、どうしようもありませんね。
何だそれは、というツッコミが聞こえてきますが、実際、どうしようもありゃしません。

井上尚弥の落胆たるや、相当なものがありそうで、WOWOWのスタジオでは、
一瞬、目が死んでいるようにも見えましたが、優勝劣敗の掟は、軽量級史上屈指の王者とて、
例外たり得ないという、それだけのことです。

かくなる上は、井上尚弥が同級最強の証を立てられるような試合の実現を期待するのみ、ですね。
ロマゴンやシーサケットのみならず、他にもそれに相応しい相手はいるわけですし。


ただ、若干嫌らしい物言いになりますが、破ったことから得られる付加価値のようなものが
これほど大きかった相手を「逃がして」しまったことは、やはり惜しまれますね。
仮に安い報酬でも、それこそ「B面」扱いであったとしても、
さっさと、そっち向きの「勝負」に踏み切っていれば...と思ったりもします。

まあ、どこまでも呑気なのか、怖がりなのか、そもそもやる気がないのか、実際のところは不明なれど、
ファンとしての傍目で言えば、シーサケットあたりに先を越されたマネジメントの鈍重さは、
目を覆いたくなるものがあります。どないもこないも、です。


コメント (11)
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