さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

負けたけれど意味はある、挑んだからこそ意味がある 亀海喜寛、「次」に繋がる二敗目

2014-06-22 21:13:45 | 海外ボクシング


最近、やたらと増えたWOWOWオンデマンド生中継、今回はしっかりと見ました(^^)
亀海喜寛は4階級制覇のロバート・ゲレロに3-0の判定負け。
健闘でした。そして、世界の中量級との差もまた、はっきりと炙り出された試合でした。

ゲレロは元4冠王とはいえ、各階級で真に頂点を極めたことがあるかというとそうではない。
難病を患った夫人のための引退から再起、という劇的なストーリーを持つ人気選手。
闘いぶりは今回の試合でもよくわかるように、スーパーチャンプのレベルにはありません。
しかし展開に応じて、多彩な攻防を展開出来る強かさが、亀海を苦しめました。

亀海は独特のスタイル、上半身を立てて狭いスタンスのまま接近し、身体をシャフトのように回転させて
振りの小さいパンチで相手の裏を取る、という闘い方でした。
初回から、左リード、右リード、重心を下ろしてボディから、と、立て続けに入り方を変えて攻めるなど、
意欲と工夫に満ちた立ち上がりでしたが、ゲレロがワンツーで突き放しにかかってくると、なかなかこれを外せない。

亀海がボディを決めて押すと、左とアタマをセットで持ってきたりするダーティーさも含め、
亀海の攻め口に合わせた対応はその都度適切で、足を使ってサイドに出たり、手数で押してきたりと、
亀海が良いペースを掴んだと見えても長くは続けさせない巧者ぶりはさすが。
亀海の右アッパーを食って左瞼が腫れ上がったハンデも乗り越えて、まずは妥当な勝利でした。


このクラスの世界的選手に挑む日本のトップ、という構図は、以前の荒川仁人にも通ずるもので、
世界タイトルこそかかっていないけれど、手に汗握って応援してしまう試合でした。
というか、下手なタイトルマッチよりも、よほど重要な試合だったし、まずは堂々と闘い抜いた亀海に拍手です。

しかし、こうして実際に米国西海岸のリングで、世界的実績のあるボクサー相手に挑んだ日本代表、亀海には
国内でやっている試合では見出すことの出来ない課題が見えた、それも事実です。

時に明白な攻勢をとれたのに、その展開を容易に、何度も変えられてしまったこと。
攻勢時に重心の上下動、或いはサイドへの移動が無いために、リターンを受け、追撃がならなかったこと。
中間距離かそれ以上の距離からのパンチの精度で劣ったこと、等々。

ことに、ロープ際に詰めた場面で、身体の軸を左右にずらして攻撃する技術があれば、
今日の試合でももっと攻勢を続けられたでしょう。
しかし国内でやっている試合では、そういう難しさに直面することがない。

初黒星となったジョアン・ペレス戦はハイライトしか見ていないから分からない部分もありますが、
あの試合も、今回の試合も、亀海というボクサーが一定以上のレベルにあることを見られた反面、
世界のトップとの差は何か、何がどう違うのか、ということも見えてくる、とても有意義な試合でした。


試合後、亀海はインタビュアーとの呼吸が合わなかったせいもあるでしょうが、
負けたから何も残らない、意味が無い、というような発言だけを切り取られていました。
しかしそれには真っ向から反論したいと思います。

何も残らない、意味が無いなんてとんでもない。
それは確かに、結果は負けだが、海外のリングで、世界の中量級の著名選手と拳を交え、
当然不足だった面もあるけれど、全力を出し切って闘い抜いたことには、他では得難い意義があったし、
今回足りなかったものを見据えて、次の機会にそれを身につけられれば、敗北にも大きな意味があるはずです。


今日の試合は、攻勢の時も、劣勢の時も、一時も見逃すには惜しい、濃密な試合でした。
敗れてなお、亀海喜寛の未来に期待したいと思います。



コメント (3)
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