今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
この桜まつりにも、「緑好きさん」がすでに何人かお越しです。緑好きさんというのは、他の色をほとんど見ないのが面白いと思っているんです。「今日の草履」も選ばれるまで、そう日数はかからないでしょう。
朝起きたときは肌寒さを感じたものの、ときの経過と共にみるみる気温が上がりました。お昼前には「暑い」と感じ、午後2時には半袖Tシャツ一枚での実演です。散策のお客様も、『暑いくらいですね』。初夏と言っていい気温と思います。
この暑さで桜の開花が一気に進んだ模様です。少し遅れていた檜木内川堤のソメイヨシノも、もう見頃に差し掛かったという情報がありました。散策のお客様も『いい具合になってきましたよ』と言ってましたから、角館の桜たちは「おおむね見頃」と言っていいでしょう。
松島からお越しのおばさまひとり旅。このゴールデンウィークで、はっきり被災地からお越しと分かるお客様は、こちらのおばさまが初めてです。昨年の夏ごろから「気分転換」を目的に、被災地からお越しの方がずいぶん増えたものでした。こんなお話をおばさまにすると、『私もそうなんです。津波で母を亡くしましたから、旅行なんてしばらくぶりですよっ』。
ご自宅周辺にあった10軒ほどの民家の中で、津波に耐えたのはおばさまの家一軒だけだそうです。手を加えればなんとか暮らせそうな状態も、『他の人たちはもう戻らないって言うから、私の家だけ直したところで…』。
かと言って移転に積極的になれないのは、お母上が暮らした家で供養したいという気持ちなんですね。分かるような気がしました。
仙台市にお住まいで、かつて石巻市民病院設立に尽力されたというお医者さんがお越しでした。やはり言葉に出てくるのは、今なお厳しい震災後の様子です。でも先生が言うのは、『そういうときだからこそ、夢を持ちたいよね』。
先生が、『角館に○○医院ってあるでしょ。そこの院長って私の教え子なんですよ。角館には何度も来てるんだけど、迷惑かけちゃ悪いから彼にはナイショにしてるの』。
その医院であれば西宮家から歩いて行けます。先生に道順をお教えし、『会わないほうがいいんなら、郵便受けに名刺を入れてくればいいでしょ』と言うと、先生はいそいそと出掛けました。
それから20分も経ったでしょうか、先生がニコニコ顔でお戻りです。『いや~、ちょうど外に彼が出ててね、会ってきましたよっ』。
「迷惑かけちゃいけない」と思うのは、それはそれで大人としてのエチケットと思います。でもやっぱり久しぶりに会えば嬉しいわけですから、私は余計なことをしたとは思いませんね。
今日も草履のご愛用者が、何人かお顔を見せてくださいました。私は憶えていなかったのですが、去年のゴールデンウィークに結構な時間話し込んで戻られたという、盛岡市のご夫婦がお越しです。『去年すっかり手を止めさせてしまったんで、今年は買わせてもらいますよっ』。
角館の桜を愛でながら再会を喜ぶ。それはもちろん実演席だけでなく、角館のいろんなところでドラマがあるのでしょう。